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守りたくて壊したい矛盾【8】
ああだこうだと散々時間をかける事になったが、一旦亀頭さえ入ってしまえば、スムーズとはいかないながら残りはそれほどの苦労もなく進んでいけた。
さっきまで指で拓いていた辺りよりも少しだけ奥まで進み...そこで止まる。
「うぅ...んっ...全部...入った...?」
「ああ、まあ...一応?」
俺の『一応』の言葉が引っ掛かったのか、勇輝はまだ少し荒い呼吸を繰り返しながら薄く目を開け、俺達が繋がっている場所へと指を伸ばしてきた。
その指先がそっと俺の根元に触れ...薄くしか開いていなかったはずの目が驚いたように丸くなる。
「え...嘘っ...まだこんなに余ってる...の?」
そう。
残念ながらと言うか当然と言うべきなのか。
俺と勇輝の間には、まだ指2本分ほどの余白がある。
いわゆる『ハメシロ』ってやつ。
人様よりいくらか大きい一物をぶら下げている俺は、挿入の時に根元まできっちりチンポをハメるって事はそう多くない。
というか、できないのだ。
あまりに奥まで届きすぎ、子宮口を強く押し潰す事になるせいか辛そうな顔をされることも少なくはなく、撮影の時には女優さん側から『あまり深くまで挿入しないで欲しい』と要望されることまである。
というわけで、必然的に俺のセックスはいつもこういう感じ...ハメシロを残したまま、ゆったりと相手のリズムに合わせる物になった。
ハード系の作品に出る機会が減ってからは、根元までガッチリ嵌めるような挿入なんてほとんどしていない。
「勇輝...苦しくない?」
「んっ、大丈夫...だから...もっと奥まできて...いいよ......」
「あ、いや...でも...」
勇輝が優しく俺の頬に指を滑らせてくるから、繋がった場所をあまり動かさないように注意しながらそっと体を倒していく。
そのまま一度軽く唇を合わせ、勇輝の体をギュッと抱き締めた。
勇輝も俺の背中に腕を回し、しっかりと抱き締め返してくれる。
「あの...俺のってそこそこデカイっつうか、長いじゃん?」
「ま、そこそこってレベルじゃないけどね」
「うん、だろ? だからさ、普段あんまり激しいセックスって喜ばれないのな。痛いとか苦しいとか言われちゃって......」
「んふっ、難しいねぇ。小さいとか細いって文句言ったりもするのに。じゃあ、今まであんまり本気でセックス楽しめなかった?」
「うん、まあ...いや、それはそれなりにちゃんと楽しむんだけど...たださ......」
キュウと勇輝の頭を抱き込んだまま、ハァァ...とため息をつく。
勇輝はまるで俺を慈しむように優しく髪を撫でてくれた。
「いいんだよ、したいようにすれば...」
俺の気持ちを察したような言葉。
少し驚いて顔を上げようとするが、勇輝の手がそれを拒んだ。
「俺さ...勇輝と本気のセックスしたい......」
「わかってる。てか、最初からそう言ってたでしょ?」
「...うん...でもどっかで『やっぱり無理はさせられない』って気持ちもあって...入れるまではさ、ギリギリのとこでなんとか抑えられるかなぁとか思ってたんだよ。でも......」
「入れてみたら...抑えられそうにない?」
「うん、ごめん...ちょっとなんか...ほんと気持ち良くて、もっと気持ち良くなりたくて...ガツガツしそうな自分がいます。あ、勿論さっきから結構ガツガツしてるのはわかってんだけど......」
「俺ねぇ...たぶんちょっとMだと思ってるんだ、自分のこと」
唐突な勇輝の切り出しに、意味が読めなくてポカンとしてしまった。
顔が見えなくてもそんな雰囲気は伝わるのか、俺の胸にきつく抱かれたままの勇輝からフワリと微笑んだような気配と吐息を感じる。
「ただ痛いだけってのは嫌いだけど、激しすぎて苦しいなんてのはたぶん堪らなく好きだよ。そんなセックスした経験なんてした事無いけどさ...それだけ俺を求めてくれてるんだって思うだけで最高に感じてるもん。それに、大事な事忘れてる。俺が一番気持ちよくなれる場所はど~こだ?」
「どこって...奥の方?」
「せいか~い。生まれて初めてできた大好きな人が『はじめまして』な大きさのペニスの持ち主だなんて、俺にとってこんなラッキーな事ってないよ? 今まで感じた事が無い初めての場所を、その大切な人に開発してもらえるんでしょ?」
「いや、それが気持ちいいかどうかもわかんないし...痛くて苦しい思いさせるかもしれないし...でも、どうしようもなく勇輝が欲しいのも本当の事で...」
内臓を無理矢理押し上げるようなあの不快感を知ってるからこそ、思うまま、自分の欲のままに勇輝を抱いていいのかまだ躊躇いがある。
「充彦って面白い...すっごい大人な顔でリードしたり、ちょっと強気で自信家っぽい発言してみたり、イケイケで強引に押しまくったり、かと思えばこうやっていつまでもウジウジビクビクしてみたり...」
「初めてなんだよ! ......ほんと初めてなんだ...こんなに誰かを好きで欲しくて堪らなくなったのも、自分の感情が全然抑えられなくなったのも...だからなんか...どうしたらいいのかわかんなくて......」
「.......俺も初めてだよ。こんなに自分から誰かに抱かれたいと思ったのも、俺の全部を見て欲しいって思ったのも。だからね...」
突然、俺のチンポを包み込んでいた粘膜の強い締め付けがなくなり、代わりに不規則な蠢動に奥へと誘われているかのような感覚を覚えた。
思わず体を固くする。
「ほら、充彦もわかったでしょ? 俺の中がゆっくり充彦の形に変わってきた。ね? だから、充彦の全部を俺に頂戴? 誰にも見せない、激しくて荒々しくて乱暴な顔も俺には見せて? どんな充彦も、俺ちゃんと受け止めるから」
「...勇輝......」
俺を奥へ導くような怪しげな動きはさらに強くなる。
その誘惑に負け、俺は素直にチンポをさらに押し進めた。
「あっ...あぁ...す...ごい...すごい...入れてるだけ...なのに...俺の中が...グチャグチャにされてる...みたい......」
嫌がっている素振りも、辛そうな雰囲気も無い。
心臓と、今は一先ず最奥に留まったチンポがドクリドクリと脈を打つ。
頭の中のどこかが、なんだか焼き切れてしまいそうなほどに興奮している。
「ヤバい...マジでヤバい......」
抱き締めていた腕を解き、ゆらりと体を起こした。
俺の腰にしっかりと回された勇輝の脚を外させ、その膝を左右に大きく開く。
繋がった場所を見下ろせば、俺のモノをしっかりと根元まで飲み込み、アナルはとうに限界を超えているだろうというほどに広がっていた。
それだけで感激にも似た熱い思いが胸に広がる。
さっきまではあれほど萎れて下生えの陰に隠れてしまいそうになっていた勇輝のチンポは、いつの間にか大きさと硬さを取り戻していた。
俺が奥を貫いて尚、勇輝はそれを快感としている。
励ますような言葉ではなく改めてそれを目で確認して、寸前で押し留まっていた何かがとうとうプツンと切れるのを感じた。
最奥に先端を押し付けたまま、緩やかに二度三度と腰を揺らす。
「はぅっ...ん...そ、そこ...そこ好きぃ...気持ちいっ......」
「勇輝、ありがと。俺の全部...見せてやるから、受け止めて?」
軽く腰を揺らしながら、勇輝の脚を俺の肩に乗せる。
そのまま勇輝の体を半分に折り畳むようにして体重を前に掛けていった。
勇輝はわりと体が柔らかいのか、まんぐりみたいな格好もそれほど苦にはならないらしい。
それどころか嬉々とした目で俺を見て、チンポの先からタラリと先走りを溢しながら、自分で足首を持って俺の動きを助けてくれる。
「たぶん一回で終われないから...覚悟してろよ」
「一回だなんて、俺が許さないから大丈夫」
勇輝の軽口に唇の端を少しだけ吊り上げ笑った形を作ると、ソロリソロリと俺のチンポを引き抜く。
まるで駄々を捏ねるみたいに内襞が絡みついてきてそれを阻もうとする。
入り口ギリギリの所で雁首が見事に引っ掛かって、完全にそれが抜け落ちてしまうことはない。
もう一度ゆっくりと中へ押し戻していく。
今度は悦ぶように、中は抵抗なく俺を奥へと誘い込んだ。
同じ動きを何度か繰り返し、入り口にカリを引っ掛けたまま勇輝のチンポを軽く扱いてやる。
その言葉にすら感じたのか、扱いている俺の指先を透明な雫が一筋伝った。
その指についた雫をペロリと舐め取り、勇輝の顔の両側へと腕を着く。
「指なんかより...ずっと良くしてやる」
勇輝が息を飲むよりも先に、上から叩きつけるような勢いでチンポを一番深い所まで一気に捩じ込んだ。
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