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クイーン・ビー・エクスプレス第4回【1】

「はい、どうも皆さんこんにちは。またまたやってきました、不定期配信の『クイーン・ビー・エクスプレス』、今回も私みっちゃんと...」 「勇輝と...」 「航生でお送りします...」 「ん? 航生、あんまり元気ないじゃん。どした、体調悪いのか?」 「体調じゃなくて、機嫌が悪いんです!」 「なになに、何があった?」 「はぁ!? よくもまあ、そんなしれ~っとした顔でそんな事言えますね。ちょっと皆さん、聞いてくださいよっ!」 「おいおい、配信動画を個人の私怨に使うなって......」 「うるさいっ! あのね、昨日いきなり勇輝さんからLINEきて、『京都のお土産渡したいから、どうしても今日中に家に取りに来い』とか言われたんですよ」 「あ、ちょっと時系列的にややこしいかな...そこから説明しときますね。この動画の配信日がいつなのか俺らハッキリわからないんですけど...ん? あ、来週の金曜日? まあ、これ皆さんに見ていただいてる一週間前に収録してまして、俺と勇輝は昨日まで京都で写真集とDVDの撮影してました。はい、続けて」 「あ、は~い...じゃなくて! 俺ね、ちゃんと断ったんですよ、『今日は疲れてるだろうし、明日収録で会えるんだからその時でいいですよ』って。でもね、『今日食べないと味が落ちちゃう物とかあるから、どうしても!』って言われて、タクシー飛ばしてわざわざ二人のマンションまで行ったんです!」 「あれ、お前タクシーだったの? 車とか...」 「持ってないの知ってますよね?」 「...あ、そうでした」 「俺はね、写真集の撮影の話とか、京都はどうだったとか、お菓子とかそんなんじゃなくて土産話が聞けるのがすっごい楽しみだったんですよ。酒でも飲みながらゆっくり話ができるのかと思ってね、わざわざ家からツマミまで持って行ってたんですよ。それが、あれ何!? 俺がマンション着いたら、ドアの隙間から紙袋ヌンて差し出して『それ持って、さっさと帰って』とか言うんですもん! 部屋にも入れてくれなかったんですよ!ちょっとこれ、ひどくないですか?」 「んもう、ほんとあれは悪かったってぇ。どうしてものっぴきならない事情ができたんだよぉ」 「のっぴきならない事情ってのが...これ?」 「わっ、服捲るな、やめろ、バカ、スケベ」 「...うわぁ、なんだこれ。引くわぁ......」 「お前ねぇ、勝手に人の服捲っといて引くってなんだ、引くって!」 「いや、どうせのっぴきならない『下半身』事情だろうとは思ってましたけど、キスマークだらけってか...これ、歯形じゃないですか」 「仕方ないだろ。昨日だって、俺はマジで航生と飲みながら話でもしようと思ってたの! でもさ、充彦が『航生さっさと追い返せ』とか言うし...」 「おいおい、俺に飛び火かよ。これはね、航生が悪いんだ、うん。んなもん、プチ禁欲状態から解放された俺らに対しての配慮が足りないからそういう事になる!」 「うそっ、なんか俺が悪い事になってるし。てか、『プチ』禁欲って事は、やることやってんじゃないですか!」 「アホか、勇輝がそばにいて何にもしないまま眠れるわけないだろ」 「そんなもん、自慢げに言う事じゃないし」 「悔しかったらお前も寂しい一人寝生活脱出してみろ、バ~カ」 「バカ!? バカとはなんですか、バカとは! 自分なんて頭の中まで下半身の癖に! この全身生殖器!」 「なんだぁ? んじゃお前、勇輝が素っ裸で隣に寝てても何にもしないって言い切れるんだな?」 「へっ? それは...えっと...言い切れ...ないかも......」 「ほ~ら、みてみろ。お前も似たようなもんじゃないか...って、てめぇ、勇輝に手ぇ出すつもりか!」 「い、いやっ、あれはみっちゃんの例え話に乗っかっちゃっただけで...」 「勇輝と二人の仕事増えてるからって、お前ふざけんなよ」 「ああ、止めて二人とも...僕の為に争わないで...僕ったら罪な男だわ...」 「アホか、いい加減止めろよ。慌てんのが面白くてからかってたけど、このままだといい加減航生泣くぞ」 「...からかって?」 「当たり前だろ、気付けよバカ。勇輝が裸で寝てりゃ、誰でもムラムラする事くらいわかってるっての。俺なんて服着ててもムラムラするから俺の勝ち~」 「何の勝ち負けなのか、意味わかんない...つか、みっちゃんが弾けてる時のテンションについていけない...」 「まあまあ、ほんと昨日は悪かったと思ってるから、今日はこれ終わったら家で飲もうぜ。伏見の酒とかも買ってきたし、鱧の蒲焼きもあるから」 「んで、また俺が酔って寝たら、隣の部屋からアンアン聞こえてくるに決まってる......」 「うん、まあそれは決まってるよな」 「鱧は食べたいけど、アンアン嫌だーっ!」 「ったく、冒頭からなんつう話してんだよ...。というわけで、いつも以上に騒がしく『クイーン・ビー・エクスプレス』、スタートです」

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