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クイーン・ビー・エクスプレス第4回【2】

「えっと、んじゃ今日は...とりあえずまず近況とお仕事の報告しようか。航生は? ゲイビ撮ったんだよな?」 「あ、はい。二人が写真集撮影してた間ですね」 「ようやく女性との絡みの仕事にちょこっと慣れてきたとこだってのに、またアッチのビデオ出るとかなって、かなり大変だったんじゃないの?」 「お前、ほんと男とヤるの苦手だしな」 「んもう、そういう言い方しないでくださいよぉ。すごい緊張はしたんですけど、前みたいな苦労は無かったんだから」 「おっ、そうなの? 何、どんな感じだったの?」 「えっと...まず、きちんとした台本があって、本読みもあって、全部で1週間かけて撮影するっていうのがビックリでした」 「うそっ、1週間もかけてもらったの!?」 「なんかさあ、それってAVの撮影って感じじゃないよなぁ。普通の映画でも早かったらそんくらいで撮るって言うじゃん」 「まさしく映画でしたよ! 内容とか言ってもいいのかな...あ、設定だけならオッケー? まだ予告動画ができてないんで今は設定だけしか話せないみたいです。少しファンタジーな感じのお話になってまして...そう、だからね、台本があるくらいなんでかなりしっかりとお芝居があるんですよ! 高校生の俺と同級生の男の子が、恋かどうかもわからないまま好奇心でエッチしちゃうんです。で、その同級生の男の子は突然消えちゃうんですが、5年後、彼女との結婚を控えた俺の前にその同級生にそっくりな青年が現れて...さあ、どうなるんだ!ってお話です」 「......勇輝、わかった?」 「いや、イマイチよくわかんない。え、何? ......あ、そう。なんかねぇ、今予告をダッシュで編集してるそうで、今回の配信と同じ日にはホームページに特設コーナー作るそうです」 「しっかし、ほんと航生は説明が下手くそだなぁ」 「だってぇ、ドラマ重視なんでネタバレとかするわけにいかないじゃないですか。今の段階でどこまで話していいものやら...」 「とりあえず、突然消えた初体験の男にそっくりな男が、結婚間近だった航生の前にいきなり現れて気持ちが揺れ動く話って事?」 「......そういう事です...あ、でもそんな簡単な話でも無いんですけど」 「で、当然エロ有りだよな?」 「あ、そこは勿論。いくらドラマ重視とはいえそこはやっぱりゲイビデオなんで、ちゃんとあります」 「どうだった? つかさ...お前はどっちだったの? ネコ? タチ?」 「今回はどっちもやりました」 「あのさぁ...もしかして、合意の上でのセックスなんて内容のビデオ、初めてなんじゃないの?」 「いや、最初に出た時のやつだけは合意っぽい内容だったんで、一応初めてでは...ないです」 「一応ねぇ。それで? 相手役の人はどんな感じだった?」 「あ、これはもう言っていいのかな...いい? 大丈夫みたいなんで言いますけど、元々関西のイケメンばっかり集めてるすごい大手の会社の専属だった人なんです。俺も勿論名前は前から知ってましたよ。今回俺らと殆ど同じタイミングで『ビー・ハイヴ』に専属として移籍する事になったんだそうです」 「あ、関西の人なんだ? ん? ......あ、専属になったって事で、次回配信のエクスプレスにゲストで来てもらう予定? そうなの? うわっ、俺ら人見知りなのにどうしましょ~」 「みっちゃんが人見知りだって言うなら、日本全国の人見知りの人に土下座してもらいたいですよ。ほんと、そのうち呪われますよ?」 「ふーん...その人とはずいぶん相性良かったっぽいね。航生、今すごいイイ顔してる」 「そうですか? すごく明るくて優しくてセクシーで、でもちょっとフワフワした感じの...本当に素敵な人だったんです」 「絡みも上手くいったんだ?」 「相手の方が結構先輩だったんでずいぶんリードしてもらいながらでしたけど、なんとか。あ、そうそう。言葉は関西弁だし、勿論パーツだって違うんですけど...なんだか少しだけ雰囲気が勇輝さんに似てる気がしました」 「......俺と雰囲気似てて、関西弁でフワフワした感じ?」 「あ...勇輝の一人称が『俺』に戻ってる。何、心当たりあるの?」 「ああ、まあ。さすがにそんな世の中狭くはないだろうし、まさかなぁとは思うんだけどね...一応心当たりあるにはある。今度会えるの楽しみにしとくわ」 「あんまり楽しみにしてると、俺ヤキモチ妬いちゃうかもよ?」 「んもう...もし俺の知り合いだったら嬉しいなってだけで、ヤキモチ妬くような事はないってば......って...あ......いや、やっぱ会わなくていいや」 「あれ? 勇輝さん、顔色変わった」 「ほう? どうやら俺がヤキモチを妬くべき相手らしいな」 「いや、全然そんな相手ではないからっ! ただ...なんもしたことが無いかっつうと...ごめん、それはある。で、でも、それが航生の相手役の人とは限らないだろ」 「ふ~ん...ま、どっちにしても次回の収録次第だよな。もし知り合いだったとしたら、勇輝は俺だけのモンだって見せつけてやるだけだし」 「あ、あのぉ...俺のビデオの話のはずが、なんか二人の痴話ゲンカみたいになってません? そういう事は家に帰ってやっていただけると......」 「あ? まあそれもそうか。じゃあ家に帰ってじっくり聞かせてもらう事に...」 「こ、航生! お前のせいだぞ! お前がいらん事言うから...」 「いやいやいやいや、俺別になんにもいらない事なんて言ってませんってば! 強いて言うなら自業自得です!」 「うるさい! 責任取って今日絶対にうち来いよ!」 「航生、わかってるよな? 酒は置いといてやるし、鱧もちゃんと真空パックして冷凍しといてやる」 「えっとぉ...俺、勇輝さんの事大好きなんですけどみっちゃんの方が怖いので、今日は...行きません!」 「ちょっ、航生!」 「は~い、皆さんは勇輝が今日どんな風に俺と話をするのか、ワクワクドキドキモンモンしといてくださいね~。また気が向いたら皆さんにもご報告しま~す」 「......しなくていいから...つか、すんな。昨日に続いて今日もとか、俺絶対体がバカになる...」 「そんな嫌そうな顔はしてますけど、勇輝さん、ちょっと首筋赤いですよ。ほんとみっちゃんに対しては底無しのエロさ発揮しますよね」 「うるさい!」 「あ、二人の話のせいで俺のビデオの話が中途半端になっちゃったじゃないですかぁ。えっと、『Still...』っていうタイトルで、来月早々には発売になります。ガッツリエッチの入った通常版と、少しエッチシーンをソフトにしたR15版の2種類です。あと、あっ、すごいんですよ!」 「何が?」 「1週間だけなんですけど、R15版のほうはミニシアターでレイトショーにかかることになりました」 「...え? マジで?」 「映画みたいじゃなくて...それってば映画じゃん」 「はい、マジです。一生懸命頑張りましたので、色んな方に見ていただけると嬉しいです」 「へぇ、すごいなぁ。ビー・ハイヴさん、映画まで作っちゃうのか。航生、大抜擢だったんじゃん。そりゃあ社長も付きっきりになるよな」 「俺らも負けてらんないねぇ。じゃ、今度は俺らの近況報告しときますか?」

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