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姫様方、ご乱心【4】

唾液を混ぜ含み、それをお互いに送り合うような口づけ。 俺の頭を抱き込むようにしている勇輝の腕の力が増し、おそらく無意識なのだろうが自分の腰を俺に擦り付けるようにユルユルと動かし始める。 俺は勇輝の後ろ髪を一束指に巻き付けてツンと引くと、ゆっくりと唇を離した。 「はい、終わり。いらない事したら...チンポ輪切りにされんだろ?」 首を掴んで引き寄せ、目の前の耳に吐息と声を吹き込む。 「だってぇ...んっ...ふっ...」 ねっとりと耳を舐め、焦らすように愛撫しながら、俺は声のトーンをぐんと落として囁きかけた。 「お前、航生の事、大事?」 「え? あぁん...何...何ぃ? 急に......」 「言葉いらない。とにかく黙って喘いでろ。答えがイエスなら自分の唇、ノーなら俺の唇触れ...わかった?」 震える指が自分の唇に触れる。 引き寄せる為に首筋を押さえ付けていた手でそっと背中をなぞりながら、耳朶を唇全部でムニムニと挟んだ。 唇がやけに寂しそうに見えたから、その口に俺の指を含ませてやる。 「お前、航生の事大切だよな?」 俺の指をチュクチュクとしゃぶりながら、勇輝はそっと自分の唇をなぞる。 「慎吾くんの事も、ほんとに大切なんだろ?」 耳ばかりを嬲る俺を少し恨みがましい目で見つめる勇輝の指は、それでも自分の唇の上を変わらず撫でていた。 「だったら、ちょっと今から慎吾くんに『好きな人はいないのか』って訊いてみて」 その言葉に『意味がわからない』という顔をする勇輝の指はどちらにも動かない。 やれやれと思いながら、俺は口に含ませた指で口内をゆっくりと愛撫していく。 上顎を指の腹で撫で、舌を強く挟み、嘔吐くギリギリの所まで突っ込んでやった。 肩を震わせ目を潤ませながら、勇輝は懸命にその指に舌を絡ませてくる。 ......しまったな...酔ってるからいつもよりスイッチ入るのが早いわ...... それはまさに俺自身をしゃぶっている時の仕草そのもので、ちょっと『輪切りにされるのも覚悟するか?」なんてムラムラした気持ちに負けそうになってきた。 ジュルジュルと粘る水音をさせながら大きくスライドする頭の動きを一先ず止めさせる。 「今はここまで。とにかく慎吾くんに『今好きな人はいないのか』って話、ちゃんと聞けよ? 理由はそのうちわかるから...わかった? 上手くできたら、みんな酔いつぶれた後で...風呂場ででもご褒美やるよ。最高のご褒美...な?」 恐らく最後まで素面で起きてるのは俺だろう。 あとは勇輝がどこまでまともな頭でいられるかだけど...ま、この餌ならベロベロに酔いながらも必死に起きてるに違いない。 ほんとなら今すぐにでも俺のズボン脱がして跨がりたいくらい体が疼いてるだろうし。 というか、俺も正直ここまで火がついたら、寝てる勇輝を引きずってでも風呂場に連れ込むかもしれない。 できればそんな、ちょっと鬼畜じみた真似は避けたいけれど。 「ほら、わかったか? 慎吾くんに好きな人の事、上手く聞き出せよ?」 唇の端から滴る唾液を親指で拭ってやると、それを押さえるフリをしながら勇輝は自分の唇をゆっくりと撫でた。 ついでに真っ赤な舌がその表面をさらに濡らしていくのは...今の俺には少しサービスが過ぎる。 ドクドクと脈を打つ下半身を必死で遣り過ごし、もう一度だけ軽く唇を合わせると、戻るように目で合図を送った。 今の勇輝は、さっきの『鏡ごっこ』の悪のりで俺を怒らせて、無駄に焦らされている...くらいに思っているのかもしれない。 不貞腐れたように俺を見る勇輝の頭をヨシヨシと撫でて、偽りの無い目一杯の笑顔を浮かべてやる。 「なんも怒ってないよ、心配しなくていい。み~んな幸せになって欲しいなぁと思うなら...今は黙って協力して?」 俺のその言葉にようやく頷きながら改めて自分の唇に触れると、勇輝は元の場所に戻る。 あとは...チラリと隣を見れば、ようやく慎吾くんも航生からの熱いキスに満足したのか、嬉しそうな顔でユラリと立ち上がった。

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