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クイーン・ビー・エクスプレス 特別編【2】

「ちょいちょい、誰がエロ刺客やねん。エロの象徴みたいな勇輝くんに言われたないわ」 「あははっ、また象徴って言われてる」 「ま、勇輝は『歩く生殖器』だしな」 「うっさいな! その呼び方やめろってば!」 「『ウォーキング・シンボル』ってこと? ええやん、それ。ナイスキャッチフレーズ!」 「いいから! お前、とっとと自己紹介しろよ!」 「はいは~い。どうも~、西より降臨しました、ちょっとエッチなプリティエンジェルこと慎吾で~す。皆さん、はじめまして~」 「お前、よく自分の事恥ずかしげもなくエンジェルとか言えるな。てか...え? 慎吾?」 「航生くんと出たビデオん中で、そんなセリフあんねん。『お前は俺にとって天使なの? 悪魔なの?』って。普通に聞いたらくっさいセリフやろ? でもぉ、これを航生くんが言うたら、そりゃあもう切なくてめっちゃキュンてくんねんなぁ......」 「いや、そのくっさいセリフはどうでもいいって。じゃなくて...慎吾なの?」 「そう、慎吾で~す」 「『シンくん』じゃないの?」 「シンでいく予定やってんけどね...航生くんがどうしても慎吾って呼んでくれへんから、嫌でも名前で呼べるようにしたろと思って、本名に戻したった」 「戻したったって...はっ...はははっ...昔はあんなに本名名乗るの嫌がってたのに...航生の為なんだ...航生の為なら克服できたんだな......あ、ヤバい、なんか俺ちょっと感動してるかも......」 「ほら勇輝、泣くな泣くな。慎吾くん、ちょっと今のうちに動画観てる人にちゃんと挨拶しといて。あ、さっきのプリティエンジェルいらないから。その間にコイツ泣き止ませるし」 「はいは~い。では...改めましてこんにちは。このたび『クイーン・ビー』の兄弟レーベル『クイーンズ・ガーデン』に移籍しました、慎吾と言います。以前は別の会社で、別の名前で活動してました。だから、ご存知の方もひょっとしたらいてる...かな? ウォーキング・シンボルの勇輝くんとは昔からのムフフな知り合いで、自称勇輝くんの弟分です。えっとですね、女の子は特別嫌いではないですが、恋愛対象は男性だけという、一応リアルゲイです。身長は174センチで、体重は...あれ? 今何キロくらいやったかな......」 「62くらいじゃないですか?」 「ん? 航生くんがそう言うんなら、たぶんそのくらいなんかな。趣味はセックスと雑貨屋さん巡りとアニメ鑑賞で~す」 「お前なぁ、『セックス』と『雑貨屋巡り』を同列に並べんなよ......」 「あ、勇輝くん復活?」 「まあな。えっと...もうね、この動画観てくれてる人は薄々気づいてると思うんですけど、ちょっとここで航生から大切なお話を......」 「あ、はい。あの...実はですね、このたびこちらの慎吾さんと、正式にお付き合いさせていただくことになりました」 「もうね...ほんと、俺らどうなってんだよ。女優さん相手のAV男優が男とばっかり付き合うって......」 「いやいや、そんなん言わんとってよ。俺は男性しか好きになられへんねんから」 「そりゃ、そうなんだけどさぁ......」 「あ、あの! 俺、まだまだ未熟で、全然皆さんに楽しんでいただけるような仕事はできてません。なのに何を一人前に、何を偉そうにと思われるかもしれません。でも、こうして人を大切にする気持ちを知ったことは、きっとこれからの仕事でも活かされると思ってます。慎吾さんの事、本当に大切にしますので...どうかこれからも応援してください!」 「慎吾、お前もちゃんと挨拶しとけよ。一応ファンメールの数はコイツが一番多いから」 「『ちょっと残念な感じが母性本能擽られます』なんて書かれてるけどな」 「ああ、そうか...はい、じゃあ俺からもちゃんとね。真面目で、いつも一生懸命な航生くんを、淫乱ゲイがたぶらかしたと思われるかもしれません。実際俺、あんまり褒められるような生活は送ってませんでした。それなのにこんなに誰かを好きになって他の事が考えられへんようになるとか、そんな生まれて初めての感情に正直自分でも戸惑ってます。心から大切だと思える人に会えました...ずっと一緒にいたいって真剣に思える人に会えました。航生くんのファンの方をガッカリさせるような事は絶対しません。ですからどうか、俺らの事を温かく見守ってやってください」 「......という事なんですよ。まあね、恋愛する事は、仕事の面では悪くはないよね?」 「俺みたいに、パートナー以外にはピクリとも反応しない...とかなんなきゃな。まあ、特に航生はちょっとウブ過ぎるくらい恋愛には奥手だったわけだし、これからどんどん男らしい色気が出てくるんじゃない?」 「俺の仕事の評価上がったのも仕事増えたのも、みっちゃんと付き合うようになってからだもんね」 「いや、お前の場合は、この仕事入った頃から尋常じゃなく評価は高かったから。まあ百戦錬磨の慎吾くんというパートナーを得た事で、航生が何倍も成長するのは間違いないだろうな」 「皆さん、これからも航生の残念な姿はちゃんとお届けしますので、どうかこの二人を見守っててくださいね~」 「では次のコーナーでは慎吾くんも交えて、航生や勇輝についての内緒の話を聞き出してみたいと思います。あ、大阪でのトークショーについて大切なお話もありますので、最後までちゃんと見ててくださいね~」

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