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大阪の夜と怪しげな企み【勇輝視点】
「はい皆さんお待ちかね、セクシーダイナマイト勇輝くんのお風呂上がりでございま~す」
決して広くはない浴室から出てきた俺を待っていたのは...カメラのレンズでした。
そういえば、部屋の中でも撮影しろとかなんとか言われてた気がする。
仕方ないので力無くヘラッと笑い、カメラの前でクルクルと回って見せた。
「ウフッ、楽しんでいただけたかしら~?」
「踊り子さん、サービスサービス。ちゃんと中まで見せてよぉ」
「んもう、お触りは厳禁だからね」
着ていたガウンの裾をチラリと捲り、パンツのギリギリまで脚を見せる。
「あれ? お前、せっかくちょっと生えてきてたのに、また脛毛剃ったの?」
ああ...痛い所を突かれてしまった。
そう、俺は明日のサプライズの為にまたしても薄い脛毛を剃り、今カメラの前に晒している脚は見事なくらいにツルッツルなのだ。
自分で言うのもなんだけど、白くて締まっていて、なかなかイイ脚だと思う...いや、相当情けない。
「明日、何企んでんの?」
「ん? ナ・イ・ショ♪」
「内緒かよぉ。トークイベント用だろ? あ、明日カメラ入りますので、来られないファンの人、楽しみにしといてくださいね~。あれだ、慎吾くんと日本橋で買ってきてた大量の袋が関係してんだろ?」
「そうで~す...いやね、慎吾に押し切られたんだよぉ...俺はヤダっつったんだけど。でもまあ、やる以上は本気だから」
「なんかのコスプレ? まあ、ああいうのは恥ずかしがってたら見てる方はしらけちゃうもんだし、ガツンと気合い入れて頑張っちゃって。という事は、明日は振りきって弾けた勇輝がお見せできるって事ですね」
「......はい。っつうか、お前ばっかり撮影してんなよ。ファンに悪いだろ」
いつまでもツルツルの脚を映されてるのが恥ずかしくて、充彦の手からカメラを取り上げる。
ベッドの端に腰かけ、余裕ぶっこいてる姿をゆっくりと脚から舐めるようにじっくり撮影してやった。
「は~い、無駄にデカイ体が、ガウンからこんなにはみ出してますよ~」
「アホか。脚が長いから隠しきれないだけだっての。ほれほれ」
ピコピコと動かす脚をカメラで捉えながら、ゆっくりと正面に回る。
「おっ、サービスカット! パンツがチラリでしたねぇ。ファンの皆さん、見えましたぁ?」
「あぁ? パンツくらいならなんぼでもお見せしますけどぉ?」
ニヤニヤと笑いながら、充彦が少し丈の足りないガウンをガバッと脱いだ。
無駄な物がまったく付いていない、俺よりも少し浅黒い体が露になる。
......ああ...綺麗な体......
思わず涎を垂らしそうになり、少し慌てながらなんとなく照れて見とれた自分を必死でごまかしにかかる。
「男前のお兄さ~ん、今日はどんなパンツ穿いてるのぉ?」
乳首から腹の辺りにズームアップし、そこからパンツのベルトゴムへとカメラをパーンダウンしていく。
「おっ、今日はミシェル・クラン?」
「明日はポール・スミスの予定ですよ、はい。つか、勇輝もついでに脱げよ」
いつの間にか立ち上がった充彦にカメラを取り上げられる。
一度後ろを向き、パンツの中に異変が起きていない事を確認して、俺も同じようにガウンを床に落とした。
「おっ、いつもの通り、美しい筋肉をしておりますっ!」
真剣な顔をしてるのもおかしいので、一先ず腹と胸にグッと力を入れ、ちょっとだけ筋肉をパンプアップさせてやる。
「よっ、綺麗な無駄筋!」
「無駄筋言うなよぉ。充彦が馬鹿力なだけだろ。俺はいたって普通です!」
「パンツ、今日もすっげえ綺麗な色だなぁ。ブルローネ?」
「そう。あそことモデル契約させてもらってからは、プライベートでも仕事でも殆どブルローネ穿いてる」
「勇輝は色が白いから、あそこの明るい色使いがすっげえ似合うんだよね。てかさ、このままじゃ色々ヤバいから...先にガウン着ようぜ」
「まあね...俺もちょっとだけ変調をきたしてるかも」
二人して苦笑いしながら、急いでガウンを羽織る。
それぞれ自分のベッドに腰かけると、改めて向かい合った。
「さあ、大阪の旅、初日が終わったわけですが...感想とかある?」
「感想って言っても、特別観光したわけでも何か名物食いに行ったわけでもないからねぇ...でもさ、なんかわりと狭いエリアにゴチャーッと色んな物が混ざりあってて面白いね」
「あ、俺も思った。買い出しの時に慎吾くんの友達に車出してもらって回ったんだけどさ、観光客がガンガン歩いてる道の反対側にはちょっと古臭い感じの長屋?みたいな家が並んでるエリアあったりね」
「明日イベントやる堀江ってとこも、10年くらい前まではそんな感じだったらしいもんなぁ。んで『ミナミ』って呼ばれるエリアって、ちょっと気合い入れたら全部歩いて回れるくらいの距離だよね」
「まあ、実際歩いたら疲れるけどな。でも、歩いて全部色々見て回りたくなった。すっげえ雑然とした感じが面白い」
「今度は仕事じゃなくて、ゆっくり遊びに来たいなぁ......」
「確かにプライベートで来たいね。んで、次に来る時は絶対にちゃんとした『ダブル』の部屋予約する!」
充彦は、まだずいぶんとツインに泊まらざるを得なくなったことに不満があるらしい。
俺はといえば...いやまあ、明日は朝早い時間から仕込みでアズール行かないといけないし...ファンの人と元気に楽しまないといけないし......
......やっぱ俺もダブルが良かった...
「明日の夜さぁ...イベント終わったら、その辺のラブホ泊まりに行っちゃう?」
「おっ、まさか勇輝からそんな言葉が出るなんて! せっかくすぐ近くにホテルあんだから、行っちゃう? あ、でも...男同士だと入れてくれないとこって多いだろ?」
そうだよな...男同士だと拒否られるホテル、多いんだよな......
俺が昔ボーイの頃に使った事のあるホテルは、逆に男同士でないと入れない穴場だったんだけど。
慎吾ならどこがいいとか知ってるだろうけど、まさかそんな事を聞くわけにいかないし...
...って、明日なら俺、大丈夫なんじゃね!?
うわぁ、いらない事思い出しちゃった。
なんか...思わずニヤけるわ。
「おいおい勇輝、なんだよその顔?」
「ん? んふふふっ...マジでラブホ行く?」
「まあ、できたら行きたいな」
「俺に秘策はあるけど...乗る?」
「秘策はともかく、俺はお前に乗りたい」
よし、旅の恥はかき捨てだ。
つか、俺もすっげえしたくなってきたし、何よりも充彦の反応が見てみたい。
「よしっ、明日は気持ち良くイベント終わって軽く打ち上げに参加したら、さっさと抜けてラブホ行こうぜ! ということで、ファンの皆さん! 明日は俺達エッチします! なのでカメラは回せません!」
ひどくノリノリになりだした俺の態度に充彦は軽く首を捻っているが、もうそんな事はまーったく気にならない。
明日のイベントと、その後の別のイベントが楽しみになりすぎて、俺は充彦との『おやすみのチュー』も忘れてとっととベッドに潜り込んだ。
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