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圧巻の全員集合【3】

ラフでありながら爽やかで大人っぽい白シャツにシンプルなベージュのチノパン姿の充彦(ただし、裾にちょっぴりトマトソース付き) 黒のストレッチコットンで上半身のラインを強調したジップアップシャツにかなりダメージの強めのローライズデニムで遊び人風の俺(当然ウエスト部分は見せパンの派手なベルトゴム) エスニック風の布があちこちにパッチワークされた独特な雰囲気の七分丈パンツと、ルーズなタンクトップの上にガーゼみたいな生地のパーカーを羽織っただけという、ちょっと露出多めの慎吾(首には羽根型のチョーカー有り) 綺麗なラインのストレートデニムに、鮮やかなターコイズブルーのボックスチェック柄のポロシャツで優等生チックにきめた航生(こちらもシルバーの羽根型チョーカー有り。お揃いで着けるんだ!って慎吾に押し付けられた物だろう) それぞれ雰囲気のまったく違う4人が一列に並ぶ姿に、入り待ちの女の子だけでなく誘導の為に入り口に待機している出版社のスタッフさんも少しうっとりとした顔でため息をついた。 顔はお仕事用に余裕かましているものの、これまでは観客が男性ばかりのAVイベントにしか出演経験の無い俺と充彦、イベントなんてまったくの初心者である航生は、若い女性の発する独特な熱気に内心ビクビクだ。 唯一こういったイベントに出演経験も参加経験もある慎吾に全員縋る気持ちだったりする。 「アスカくーん!」 目の前の集団の中に、慎吾をかつての名前で呼ぶ一群があった。 少し派手めな、一見すると夜の蝶っぽいお姉様達。 よほど馴染みなのか、慎吾はニコッと笑うとそちらへと近づいていった。 「わざわざ来てくれたん? もう俺JUNKSちゃうのに」 「そんなん、来るに決まってるやん! 我らが武蔵様を振ってまでアスカくんが選んだ男の子、生で見とかなと思って」 彼女達の言葉を聞いて、航生はビクンと肩を震わせた。 明らかに不自然なくらいガチガチの顔で、明らかに不自然に笑ったような格好で口の端を吊り上げる。 「でもこれ、俺のイベントちゃうで。俺はあくまでもオマケで司会やし」 「わかってるわかってる。それがね、うちらアスカくん目的でこないだのエクスプレス観て、ほんで勇輝くんに激ハマリしてもうてん! もっと早うから知ってたら、夜のイベントも申し込んでたのにーっ!」 「うわ、俺のファンやったんちゃうん? ショックぅぅぅ...まあね、勇輝くんエロいからしゃあないわ」 彼女達が気軽に声を掛けてきた事で安心したのか、他の女の子達も少しずつ俺達との距離を詰め始める。 「みんな暑いんだし、開場までちゃんとどっかで涼んでてね」 俺がニコッと笑い掛けると、それだけで『キャーッ』なんて悲鳴みたいな歓声が上がった。 ちょ、ちょっと怖い...野郎どもの『ウォーッ!』って野太い声の方が気持ちは楽かもしれない。 「慎吾さん、ボチボチ中に入りませんか?」 バカ正直というか、どうにも空気を読み切らない航生がそっと慎吾のそばに寄ると、少しずり落ちて完全に肌が露になってしまっているパーカーを戻しながらそっと肩に手を置いた。 その途端...... 「イヤーッ、マジ触り!?」 「リアルカップル、キターッ」 さっきまでよりも、うんと騒ぎが大きくなってしまった......って、何やってんだよ、バカ航生。 騒ぎに少し辟易しながらも、それでも『航生と慎吾』の二人を応援してくれてる人がこれだけ多いという事にちょっと胸が熱くなった。 「そしたら俺ら、中に入るわな? みんなほんまに暑いんやから、熱中症とかならんように気ぃつけてや?」 「あ、そうそう。アスカくん、さっきJUNKSのみんなも来てたで」 「......はぁっ!?」 間の抜けた声と同時に、慎吾の顔が少しだけしかめられる。 俺は『関西で活動していた時の慎吾の仲間』くらいにしか聞いていないが、航生と充彦は昨日武蔵くんから何か言われたのか、どうにも複雑な顔をしながらお互いに目を合わせた。 「慎吾さん、大丈夫ですよ」 「だってぇ...まさかアイツら、邪魔しにきたんちゃうやろうな......」 「武蔵さんと話した限り、そんな感じはないですって。大事な友達をそんな風に疑っちゃダメです」 「......うん、そうやな...ほんまやわ。ただ会いに来てくれただけかもわからんのに、悪いように考えたらアカンな。でも、なんかごめん...俺のせいでいらん事で気ぃ遣わせてもうてるかもしれん......」 甘えるように慎吾がコテッと航生の肩に頭を乗せる...... ...... ......ってバカ! ここがどこだか考えろよ! まったく無防備に甘える慎吾の仕草と、それを優しく見つめる航生の微笑みに、『キャーッ』の歓声が『ギャーッ』って熱狂に変わった。 「この、バカップルが! いちゃつくなら中でやれ、中で!」 あまりの声に、中からスタッフも大勢飛び出してくる。 俺はスタッフに『なんでもない』と頭を下げ中に戻ってもらい、更にファンの子達に『シーッ』て人差し指を立てると、パチンとウインクした。 「みんな、また後で遊ぼうね」 途端、『ギャーッ』の声がますます大きくなってしまう。 その不用意な行動に充彦がゴツンと頭を一つ叩くと、俺の腕を引きずるようにしながら慌てて建物の中へと逃げ込んだ。

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