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癒されたい、赦されたい【5】

チュッ、チュッと音をさせながら何度も繰り返されるのは、唇の表面だけがフワリと重なるだけのキス。 ただ啄み、時々湿り気を分けてくれようとするみたいに舌の先で優しくなぞられる。 いつものように、もっと奥まで激しく貪るように求められたい、食らい尽くされ頭の中が真っ白になるほどに...そんな風に思うのに、唇をひたすらなぞる充彦の舌がそれ以上侵入してくることはなかった。 もどかしい。 そして何よりも...寂しい。 これこそが俺に対しての謎の意地悪だと言うのなら、間違いなくその効果は絶大だった。 もう遊びにも飽きたとでも言うかのようにゆっくりと離れていく唇を、俺はただじっと見つめる。 すっかり猛ってしまったぺニスが下腹でプルプルと震えていた。 「物欲しそうにして...んで、どっちが寂しいの? 唇? チンポ?」 それは、どちらを可愛がって欲しいかと意味だろうか? いや、本当に寂しいのは...そのどちらでも無いのだけれど。 「どっちも...」 「欲張りだなぁ......」 トントンと肩を叩かれ、マットを指差して元の体勢に戻るように促された。 満たされる事を諦めてノロノロとマットに戻り体を俯せると、充彦の腕が腰を抱えるように回され、尻をさっきよりも高く上げさせられる。 「ほんと、すげえ可愛いよ、俺のイヤらしいワンコちゃん」 改めてオイルを馴染ませたらしいヌメる手が、背後からタマを柔らかく揉み解す。 赤く充血して雫を溢しているぺニスには、もう触れてもくれない。 きっと、僅かな刺激でもすぐに限界を迎えてしまうのがわかってるんだろう。 何があっても今日は簡単にはイカせてくれるつもりはないらしい。 優しくて甘いけど...やっぱり意地悪だ... 「勇輝、自分でケツ開いて見せて」 無理と首を振ってみたが、その事に充彦からは何の反応も無い。 やらなければこれ以上は望めないということなのか。 仕方なく懸命に腕を伸ばすと、突き出した尻を左右に開いて見せた。 「躾の行き届いた賢い子だねぇ。一体誰が、こんなに素直でイヤらしい体にしたのかな~?」 揶揄しているようにも聞こえる言葉を吐きながら、充彦の指が俺自らの手によって晒された所にそっと触れた。 周囲をクルクルと擽り、時折中心をキュッとそれほど強くない力で押してくる。 なんとかその指を咥え込もうと、無意識にそこがヒクヒクと収縮を繰り返しているのが自分でもわかった。 いつもは固く閉ざしているはずのそこが力を弛めた瞬間を狙い、充彦の長く節くれた指がググッと中に入ってくる。 様子を見ながら、丁寧にゆっくりと...ではない。 躊躇いなくその指先は奥を目指してくる。 ひどく性急な行為ではあるけれど、俺の体がよほどそれを欲していたせいか、その指はオイルのヌメりも手伝って驚くほど容易に潜り込んできた。 「っはっ...あぁ...いいっ...」 「あらら、こんな簡単に入っちゃった。すげえギュウギュウ締め付けてくるね。俺の指、食いちぎられそう」 「だって...気持ちイイ...充彦だから...充彦にされてる事だから...充彦に...こんなに感じる体に...してもらったから......」 「わかってんじゃん...」 「え......?」 静かな怒りが一気に燃え上がったかのように、急に充彦の声のトーンが落ちた。 その事の疑問を口にしようとしたところで、いきなり突き立てられた指先が中の痼に触れる。 指の付け根の辺りは周囲を広げていくようにぐるりと大きく円を描き、中を犯す指先はトントンと軽く痼を刺激する。 「あぁっ...それ...ヤだ...」 「何が嫌?」 まるでパッキンの悪くなった蛇口みたいに、俺のぺニスからはトロトロと蜜が途切れる事なく溢れる。 充彦は俺の様子に構う事もなく、もう一本指を中に入れてきた。 まだ中も体も頭も、その急に訪れた感覚に追いつけない。 それでも入り口は、充彦の指を悦んで容易に受け入れた。 「ほら、こんな簡単に二本も俺の指咥え込んでさ...んで、奥はもっともっと欲しいってすげえうねってんだよ。ほんとエロい体。勇輝...いいか、もう一回聞く。勇輝のこのイヤらしくて綺麗な体は誰の物? 誰にこんな風に可愛くケツ振っておねだりするように躾られたの?」 「充彦...充彦といるから...俺...こんなに...なった...よ? 充彦の為に...」 「だったらさ...」 中をグジグジと弄る手はそのままに、フワフワと優しく髪を撫でてくれる。 それが堪らなく気持ちよくて、でも本当はもっと奥まで気持ち良くして欲しくて...だけどこうして髪に触れられてるとひどく気持ちが安らいで... 腰を揺らしながら、うっとりと瞳を閉じる。 「俺が今のお前のこの体、全部作ったんでしょ? 俺が作り替えたんでしょ? それがわかってんだったらさぁ......」 優しく髪を梳いていたはずの指がクルクルと一束髪を巻き付ける。 途端、巻き付けた髪を思ってもいなかったほどの強い力でグイと引かれた。 無理矢理顔を上に向かされ、クンと喉が鳴る。 「いつまで俺に対して、わけのわかんない罪悪感、感じてんの?」 抑揚の無いその声は充彦の怒りそのもので、俺の体は快感を忘れ小さく震えだす。 「充彦...何言って...。なんで...?」 「今日のインタビューでさ、なんか格上の俺を、売りやってた頃のテクニックで誑かしたって言われたんだって? それでお前逆上したらしいじゃん」 「ぎ...逆上って...そんな...」 「人ってさ、的を射てる事言われたり図星指されたりしたらムカつくもんだよね。お前にとって、きっとそれは図星だったんだよ。心のどっかでずっと負い目に感じてる事指摘されて、そんでぶちギレたの。違う?」 違うと言いたい...言いたかった。 けれどあの時確かに、俺は充彦が言っている通りの事を考えたのだ。 やっぱり俺が...一番の人気者だった充彦の生活を、そして仕事を狂わせたのかもしれないと。 ただそれは、俺がこっそり心の中で咎として背負っていればよい物で、何も知らない他人にどうこう言われたくはなかった。 客に恵まれていたお陰で、決して苦痛ではなかったボーイ時代の事も含めてすべてを貶されているようで、あの得意気なライターの女が憎くて仕方なかった。 だから...キレた。 相手が女じゃなかったら、たぶん直接顔面に拳をぶち込んでただろう。 「お前は俺の何を気にしてるの? 本番ができなくなった事? 俺が元々ノンケだって事? それとも、体売ってたって過去を持つ自分を抱かせてる事?」 いきなり髪束から手が離れた。 支えを失い、俺の顔がポフッとタオルに沈む。 それと同時に、中を犯している指が動きを再開した。 「あ...あぁ...あぁ...」 時折深く強く抉られ、そのたびに堪えられない声が漏れる。 けれど充彦の言葉が...何より纏う空気が怖くて、その感覚に溺れきることができない。 「俺はさ、俺だけが本番止めて勇輝は続けてるって事を責めたことがあるか? 昔体売ってたって聞いて、嫌がったり戸惑ったりしたことあるか?」 指先が意思を持って前立腺ばかりを刺激し始めた。 強く押し、柔く挟むようにしながらそこを擦り揺らす。 「やめ...て...イっ...ちゃう...イっちゃうから......」 「イけよ...俺と寝るまで、チンポ触らないでイったことなかったんだろ?」 気持ちはどこか冷めているのに、ただ欲を吐き出したいという本能だけがせり上がってくる。 こんなのは嫌だ、俺だけが無理矢理エクスタシーを迎えさせられるなんて...そう思うのに、充彦の指は、俺よりも俺の体を知っていた。 そう...抗うなんて、到底無理だった。 「イけよ...ケツだけで...俺の指だけで...俺がそんな風にした体だろ......イけっ!」 怒号とも取れる声と、一層激しくなった内部への刺激。 その命令にも近い言葉に従うように、抵抗を諦めた体は、すぐに俺の胸元まで盛大に白濁を飛び散らせる。 気持ちが良いのか苦しいのか悲しいのか...力が抜け倒れ込んだ俺の頬には何故か涙が伝っていた。
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