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「目隠ししてヤろ」*

「じゃ、始めるよー」 「よろしくお願いします」  今日の撮影はナンパ物。ナンパ風景として、外での数分間も撮影した後にホテルでベッドシーンの撮影開始。  佐伯さんが現場に居ない撮影は初めて。気を抜くと不安が襲ってくるけど、とにかく今はイケメンなナンパ男の家にホイホイ付いていき、酒に酔ってホイホイ足を開く尻軽の役に徹する。 「かんぱーい!」  アヤが言うには、ナンパ物はラクらしい。一人暮らし風の狭い部屋に男優さんとカメラさんと俺だけの、何とも軽い空間。男優さんのノリも軽くて気負う必要が無い。酒の缶の中身ももちろんただの水。 「じゃんじゃん飲んでいいからね」 「うん、ありがとっ」  アヤのアドバイス通りに流されるままにして撮影は進んでいく。酒を飲んだりありきたりな会話をしたり、しばらくまったりとした時間を過ごしてから雰囲気は本題のベッドシーンに傾いていく。 「んっ……んあ……」  何度か軽いキスをしてから離れていく唇。それを見ながら次の行動を待っていると、男優さんがベッドの下から何かを取り出した。 「ネクタイ……?」 「うん。目隠ししてヤろ」 「えっ?」  男優さんはその太めのネクタイを俺の目元に当て、頭の後ろでキュッと結ぶ。戸惑う俺をよそに、あっという間に目隠しが完成した。 「目隠しすると気持ちよさが増すんだよ。視覚が無くなる分、他の感覚が敏感になるからさ」 「っ、そ、そうなんだ」  なるほど。納得。実際に今いきなり話しかけられて肩を大きく揺らしてしまった。塞がれた視界の中で重なる唇にも、交わる舌にも、一々反応してしまう。 「んんっ、んっ……んあっ」  うわ、本当だ。どうしよう。さっきと同じキスなのに、さっきより凄い気持ちいい。それにこれだと、カメラを意識しなくても済む。目隠しのおかげで俺の緊張もだんだん溶けていく。 「っ、あっん……ああぁッ!」  次はフェラ。勝手に大きな声が出て顔が熱くなる。男優さんのフェラが上手いのもあるけど、その生々しい音がいつもより大きく聞こえて耳からも犯されてる気分になる。 「あっ、ああん、んっ」 「ハア……んん、じゅぽじゅぽ、ハアッ」 「やあっ、音、やああっ!」 「ハアッ、ハアッ……」  生々しい音の合間に聞こえてくる荒い息づかい。俺の足に指が食い込むくらい強く割り開き、顔を押し付けて、激しく音をたててむしゃぶりつく男優さん。なに、なんだろう。余裕なく襲われてるみたいな、軽いノリな男優さんに似合わないこのプレイ。  なんだろう、この感覚。  凄く、興奮する 「んぅぅっ、やっ、あぁああンっ!」  ジュルル、と大きく音を立てて吸い上げられ、それに搾り取られていくように男優さんの口の中にぶちまけた。 「はあんっ……はあっ、はあっ……」 「ハア、ハアハアッ」 「わっ、ちょ……待っ……」  息を整える暇もなく覆い被さってきた男優さんは、荒い息づかいのまま俺の顔を舐めまわしてきて。  そこでやっと気付いた。 「ハアッんんんっ、チュパ、ハアッ」 「え、ちょっと……えっ?」  覆い被さってぎゅうぎゅうと密着した身体はブニブニしただらしない肉の塊で、毛深くて気持ち悪い。俺の顔を舐めまわすその顔をガシッと掴んでみると、脂っこく汗ばんだ感触と、ざらざらと放置された無精ひげに、掴んでもすり抜けていく薄い髪。 「や、なに……」  さっきの男優さんじゃない。じゃあ誰? なんで? いつから? 「あ、気付いちゃった? じゃあここでネタばらし」  少し離れた場所から聞こえた、聞き覚えのある軽い声。男優さんの声だ。目隠しのネクタイを外され、最初に視界に入ったのはナンパ男役の男優さんではなく、俺に覆い被さって乳首にしゃぶりつくカメラマンの中年男だった。 「っ! え、なん、え? いつから……?」 「目隠ししてからずっとだよ」  そう呑気に笑いながらカメラを向けてくるナンパ男。なんとなく、わかった。ネタばらしをされた後、この先の俺の仕事は、嫌がりながら無理やり中年男に犯されること。 「じゃあ、おじさんと続きしよっか」 「……うん、」 「へ?」 「えっ、だ、誰と続きしたいの?」  すんなり頷いた俺に現場の空気が固まるのがわかった。ナンパ男がカメラから顔を上げて慌ててフォローに回るけど、ごめんなさい。だって、無理なんだって、俺。 「おじさんと、続き、したいの」  この短い指でそこら中いじられたくてたまんない。脂ぎった汚い顔でそこら中舐めまわされたくてたまんない。毛深くて贅肉だらけの身体とそこら中絡み合いたくてたまんない。  短くて形の悪いそれで、死ぬほど犯されたい。 「ねぇ抱いてっ、お願い、っ……」 「っ……」 「ねぇっ、はやくっ、中に、これいれて…っ!」  ああ、俺、やばいかも、

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