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「いい子だね、くわえて?」*
「ちょ、待って待って。俺そういうのいらないから!」
「千尋も色々覚えて身につけなきゃ。新人期間の成長は今後の男優人生に関わるんだから」
「だからって何も実践じゃなくても! ほ、ほら見て。俺素晴らしい教科書持ってるから大丈夫」
「何これ美味しいね」
「ひいいっ。佐伯さんが俺のBL小説食べたあ」
今まで何本か撮ってきた千尋の作品はどれも上からの評判が良く、それに当たって出された指示は、千尋を“使える奴”に育てる事。当たりが少ないこの業界。そこに顔ヨシ声ヨシ身体ヨシの大当たりが入って来たんだ。手放したくないのは俺だけじゃなかったらしい。
俺が無理やり引っ張り込んでしまったこの世界で、千尋がゲイビ男優として認められた事にまず一安心した。
「ううぅ……佐伯さんの歯型があ……」
気まぐれにしばらく咀嚼していた文庫本の角は見るも無残な姿になり、それを抱えながらえぐえぐと嘆く千尋。イケメンが絡み合う、肌色の多いその表紙には、『魅惑のオトコ教師~真夏の課外授業~』の文字。お前は何故そっちに転んだんだ。
「はぁ……」
ノンケで無知であんなに初々しい子だったのに。いつの間にかアヤの手で腐った知識を植え付けられていた。まあでも千尋も流されやすそうだし……
「あ、そっか」
「……?」
上からの命令とか、セックスを教える為にわざわざ了承貰うとか、こんな畏まった回りくどい事をする必要なんてない。
「よし、千尋。お勉強しようか。まずはキスからね」
「ちょっ! 佐伯さっ……んんっ、んっ」
「ふふ、可愛い」
「んん、ん……あ、はあっ、ああっ、」
ほらね、千尋はあっという間に流されちゃう。
――――――
「ん、ここまでいい?」
「んんぅ、んっ、んああっ」
「フェラは簡単だよ。自分が気持ちいい事をそのままやればいいんだから」
唇と舌で散々いじめ抜いたソレは先走りをだらだらと零す。それでも千尋は必死に俺の説明に耳を傾けているようで、股の間から見上げれば泣きそうにうるんだ瞳と視線が絡む。指先で先端をグリグリと刺激してやると身をよじって快感に耐える。
「あっ、んん、んんうっ……!」
「あ、あとは……ここ。大抵の男は喜ぶよ」
「ひあ、やっ、ああぁア……ッ!」
「ほら、ね?」
硬くした舌先で裏筋を撫でるとビクビクと震えて腰を浮かす。どうやら限界だったらしく、勢いよく放たれた白濁を手に収め、そのままぐちゅぐちゅと音をたてて扱いてやる。
経験はそれなりにあるし最近まで彼女もいたみたいだけど、快感重視のフェラには慣れてないんだろうな。面白いくらい敏感に感じてくれる。
余韻に震える高い喘ぎに聞き入っていると、ふとその声が小さくなって。
「んんっ……んんっんう、」
「こら。だから声我慢しちゃ駄目だって」
口元を押さえる手を取りながらそう言っても、必死で口を閉ざして首をぶんぶん振るだけ。何だよ。あのおっさんとヤってる時は死ぬほど喘いでたのに。俺にも聞かせろよ。
「んー……あ、ほら。この子だって盛大に喘いでるでしょ? それでこのイケメンがそれに反応して……って書いてあるじゃん」
「そ、うだけど……」
「それと一緒だよ。AVに出るからには喘ぎ声だって立派な商品なんだから。提供しなきゃ」
「うぅ……でも、恥ずい……っ」
ふと目に入ったあのピンクな文庫本。それを武器に適当に押し切ろうとしたらあっさり話が進んでくれた。どうやらこれは本当に千尋の教科書として役に立ちそうだ。アヤに感謝なんか絶対にしないけど。
「大丈夫。千尋の喘ぎ声可愛いから」
「な、何言って……」
「はい、次は千尋の番。フェラして?」
反論される前にベッドに座り、先を促す。不安げに向けられる視線に気づかないフリをして笑顔を向けると、しばらくしてゆっくりと動き出してくれた。
カチャカチャ、不慣れな手つきでベルトが外され、スーツと下着に手をかけゆっくりと下ろされる。目の前に晒されたモノに、千尋が息をのむのが解った。
「ほら、次は?」
「……っ、」
震える手を伸ばし、耳元まで真っ赤に染まった綺麗な顔が近づき、恐る恐るカリをちろり、と舐められた。こちらを伺うような視線が可愛い。
「いい子だね。くわえて?」
そう促してやれば、意を決したように、ぱくり。
「……ん、んむ……」
最初はただゆっくりもごもごと出し入れしてただけだったが、しばらく経てば抵抗が無くなったのか、だんだんと舌も動かすようになり。ぎこちないながらも、先程教えた事をひとつずつ、着実にこなしていく。
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