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「おじさんのコレ、舐めてくれる?」*

「この中から次の相手選んで」 「……あのー、佐伯さん……?」 「ん? どうしたの?」 「えっと……なんというか……、ハードルが……」 「うん、変態な千尋は、変態な男優をご所望かなと思いまして」 「結構です」  数日前に佐伯さんに手渡された、顔写真と簡単なプロフィールが書かれた男優リスト。所属事務所も年齢もキャリアもバラバラだが、そのハードルの高い容姿は全員に共通していた。 「おっさんしかいないって……このリスト、悪意の塊だろ……」 「千尋さんは結局どの男優さんにしたんですか?」 「一番若いこの人」 「なるほど。相性の合う方だといいですねっ」  今日の撮影現場であるシングルルーム。同じ階で撮影があるらしく、時間潰しに遊びに来てくれた朝日と、ベッドに座りながらリストを眺める。  するとしばらくして佐伯さんが入ってきた。後ろには噂の男優さん。 「あはは、遅くなっちゃった。お、朝日久しぶりだね」 「お久しぶりです佐伯さんっ」 「佐伯さん遅いよ。三十分も遅刻じゃん」 「うわ、千尋生意気だな。顔面ピンぼけでブサイクに撮ってやる」 「ひどい!」  談笑しながらも、意識と目線は男優さんへ。うん、大丈夫。おっさんじゃないし、髪もちゃんとある。ちょっと腹が目立つけど気にはならない。 「千尋です。今日はよろしくお願いします!」 「あっ、よ、よろしくっ、お、お願いしま、すっ!」  何よりも、オドオドと不安げにこちらを伺う姿は、変態とはかけ離れている。  よし、今回の撮影はきっと問題なく終わる! ―――――― 「援交は初めて?」 「えっと、何回か……」 「そんなにお金欲しいんだ。学生さんなの?」  男優さんとのトークは台本通りに進んでいき、それを佐伯さんが様々な角度から写す。  さっきまであんなにオドオドしていた男優さんの姿はもうどこにも無く、撮影が始まった途端に性格まで切り替わっちゃうのが流石プロ。  逆に俺はカメラが回ってもしばらくは今みたいに余計な事ばっかり考えちゃう。なんなら撮影終わるまで集中出来なかったりする。だからすぐスイッチの切り替え出来る人は素直に凄いと思う。 「お金の為なら何でもするんだ?」 「は、はい……」 「じゃあさ、おじさんのコレ、舐めてくれる?」  おじさん、なんて。まだ三十代なのに。でも確かに三十代にしては少し……ああ、ほら。またどうでもいい事考えてる。  集中。集中。 「ン……」  顔の前に出された短いソレをぱくりとくわえる。  まだ慣れていないフェラ。ただでさえテンプレ通りの事しか出来ないのに、腹の肉と、へそ辺りまで広がる剛毛が邪魔でうまく出来ない。  やばい、フェラで勃たせなきゃいけないのに。無理かもしれない。ただぎこちなくモゴモゴとくわえてるだけじゃ気持ちよくなんてない筈。 「んむっ、んっ……んんっ、」  それなのに口の中で硬度を増していくソレと、上から聞こえてくる荒い息づかいに目を開く。  男優さん、ありがとう。下手くそでごめんなさい。  そんな気持ちを込めて、上手く出来ないけれど、せめて丁寧にと。隅から隅まで綺麗に舐める。  しばらく懸命にフェラに徹していると、太もも辺りに置いていた手をふと引かれて。 「……? あ、ンっ……」  ペロリと舐められた指先が、そのまま男優さんの唇に包まれた。熱い口内で、唾液まみれの分厚い舌が指を這う。ぞくぞくと、全身が粟立つ。 「あ、ん……んむっ、んっ、んんんっ」 「はあっ、ペロペロ、んんんっ、はあはあっ、んむっ、」  むずむずと熱く疼く下半身に流されないように必死でフェラを続けるが、その動きに合わせるように出し入れされる指に、もうどうしようも無くなって。 「んああっ、指っ……やめ、」 「はあっ、んんんっ、ジュポッ、ほら、止まってるよ? ジュポジュポっ、はやくっ、おじさんのおちんぽ舐めてっ!」 「んむ、んんぅっ、あっ、や……、はあっ、やっ……!」  急変した男優さんの態度に頭がついていかない。  まだ駄目。まだ駄目。やめて。やめて。こんなの台本に無い。この後男優さんにフェラでイかせてもらうんだから。だから、今はまだ、イっちゃ駄目なのに。 「っ、あっ、やアぁっ! ……っ、はあっ、あ、あっ……は、ああっ……」  小さな抵抗も虚しく、下半身に感じる熱。ギュッと強く抑えていたジーンズに広がるシミ。それを呆然と見つめる俺の泣き顔。全部。佐伯さんは全部しっかり撮っていて。 「なっ、なに、やっ……んっ、んんぅっ!」 「んむっ、はあっ、はあっ! んんっ!」  俺をベッドに押し倒し、水音をたてながら顔中を舐め回す男優さん。もちろんこんな流れも台本には無くて。 「んんっ……んっ! ンっ、んむ、」  それでも撮影は止まらないんだから、もう俺も台本なんて気にしない事にした。 「ちゅ、ぷはっ! ん、あアっ……ん、はや、くっ……あっ! っ、おじさっ……、はやく、中いれてぇ……っ!」  今はもう、ただただ、気持ち良くなりたかった。

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