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「……んん、ン……」
「……」
キスの途中、こてん、とシーツに落ちて気を失った千尋の顔のズームを最後に、男優に撮影の終了を告げる。
「お疲れ様。ありがとうね」
「はあっ、は、い……お、お疲れ様でした……」
ずるり。抜かれた男優のモノに気を失いながらも小さく肩を揺らす千尋。可愛い。ズームした状態のままの液晶を覗き込んでクスリと笑みがこぼれる。
繋いだままの手はなんとなく離したくなくて、両手が塞がりスイッチも切れないカメラ。
「えっと、シャワーって……」
「ん、隣の部屋使って」
「りょ、了解です。えっと、じゃあ失礼し、ますっ」
「うん、お疲れ様。またよろしくね」
本当に、この男優は撮影以外は人が変わるな。さっきまでの変態っぷりはどこへやら。オドオドしたまま部屋を出て行った男優を横目に、ようやくカメラを机の上へ置く。
左手は、繋いだまま。
「ん……っ……」
未だに余韻が続くのか、何度かビクビクと身体を揺らす千尋。涙と涎でぐちゃぐちゃな顔に、引き込まれるようにキスを落とす。
『やあア、っ、やああっ……! きもちっ、あああっ!』
相性の良い相手だったんだろうな。今までで一番乱れてた。うん。変態系はやっぱり大正解だった。千尋の魅力が一番引き立つ。やっぱ千尋は恥じらうよりも、淫乱じゃなきゃ。
そう仕向けたのは自分で、結果的にこういう最高の画が撮れたのも大満足で。
「……んんっ……」
「お疲れ様、千尋……、」
なのに、なんだか苛立って。自分にはこんな千尋、引き出せないって事が、悔しいとか思っちゃって。
だから、嬉しかった。
『やあアっ! 佐伯さっん、たすけっ、ンああっ! こわれっ、る……!』
行為中、すがるように伸ばされた手は、俺を必要としてくれているような。そんな錯覚。
くだらない。必要とされた所でどうなる。ましてやそれを喜ぶなんて。馬鹿げてる。
そんな冷静な客観視が、もう出来なくなってる俺がいる。
「はははっ、千尋、どうしよう、」
お前が好きだ、なんて。そんな格好悪い事、本気で考えてる俺がいる。
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