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「お前は誰が好きなの?」

※レイプ、暴力表現あり 『ひううっ、痛、やああっ! やだあああっ!』 「うー……ちいちゃん可哀想だよー……」 「……え、まじで? 千尋切れ痔デビューじゃん」 「佐伯さんマジメに見てよ!」 「見てる見てる。結城翼凄いね。初っ端からエグすぎない? あの挿れ方じゃ絶対切れたって……あ、ほらほらほら! 血ぃ出てんじゃん! エロ。うわ、エロ。うわー、俺これ五枚買うわ」 「~~っ! もーっ! 佐伯さん嫌いっ! 変態!」  ぼすんと投げつけられたクッションを回避しながら、DVDのケースを手に取る。『結城翼-制服レイプ-』例のアレのデータ。早速アヤと共に拝見させていただいている訳だが、どうにも気にくわない。何が気にくわないって、全てが。  ベッドに千尋を投げ出して舌なめずりする結城のアップから始まったそれ。  でもその時一瞬映った千尋の目元は既に真っ赤に腫れていて。どう見たって撮影前に何かあったとしか思えない。 「これ演技じゃないもんね。超痛そう……」 「……」  暴力に怯えて本気の抵抗。泣き叫んで助けを求めて。  作品としては最高の出来だろうし、千尋の知名度と評価も確実に上がった。マネージャーの立場としては喜ぶべき事なんだろうけど。でも、気にくわない。この理不尽な暴力とレイプはもちろんだけど、何よりこの撮影後数時間の内に二人が付き合い始める事が気にくわない。こんな酷い仕打ち受けてんのに。 「この後死ぬ程優しくほだされたんだろうな。千尋は純粋だから、きっとそれだけで簡単に騙されて落ちる」  別にいいけどさ、でもそれじゃ真正面から本気で落とそうとしてた俺が馬鹿みたいじゃん。 「でもさでもさ、もしそうだったらちいちゃん結城に騙されてるって事じゃん」 「いや、解んないよ? 本当は優しい奴かもしんないし」 「それは無いっ!」  まあ俺もそれは無いと思うけど。鬼畜外道なワガママっぷりで有名なあの結城サマだし。 「でも付き合い始めて結構経つし、とっくに本性だって出てるだろうし。それでもまだ順調に続いてるって事は、結城は本当に優しくて、千尋も本当に幸せなんじゃない?」 「う~……佐伯さんはそれでもいいの?」 「……とりあえずさ、千尋とも話してみよっか」 「……佐伯さんってさあ、ちいちゃんの事好き過ぎだよね」  うんそうかもしれない。なんて、何を今更。 ―――――― 「朝日カズちいちゃーんっ。佐伯さんがご飯連れてってくれるって!」 「ありがとうございますっ」 「行きたい行きたーい」 「あざーす」  よし、まずはステップ1。アヤと目を合わせて、二人で軽く頷いた。  千尋奪還作戦。まずはとにかく話を聞いて、崩せる隙を探さないと。手っ取り早くその機会を作る為に千尋を食事に誘う事にした。怪しまれないように、カズと朝日も一緒に。 「皆で集まるのって久しぶりですね」 「ね。最近予定合わなかったもんね」  駐車場へ向かいながら、朝日と千尋の会話に笑みが零れる。が、ふと千尋が携帯を見て、 「あ、ごめん……俺やっぱ行けないや。今から翼が来てくれるって」  ツバサ、  一気に熱が下がった頭の中で、どうにか引き止める言葉を探していると、カズが口を開く。 「でもたまにはこっち優先してもいいんじゃね? 久々なんだし」  カズいい子! よく言った! 強い口調で責める訳でもなく、ただ話のついでに付け加えられたような軽い言葉に、カズの頭をわしゃわしゃ撫でたい気持ちを何とか我慢する。 「俺も皆と居たいけど……翼忙しくて普段あんまり会えないから……少しでも一緒に居たいし」 「あー……それならそっちが優先だな」  ごめん、と頭を下げて足早にホテルに戻っていく千尋。  悔しいけど、千尋は本当に結城翼が好きなんだと思い知らされたみたいで。俺の醜いわがままでそれを壊すなんて、しちゃいけない。 「ちいちゃん……幸せそうだね……」 「……そうだね、」  同じことを考えたのだろう。ポツリと呟くアヤにぼんやりとそう返した。

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