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※レイプ、暴力表現有り
「わ、もう着いてたんだ、ごめん!」
「……」
部屋の前。廊下の壁に寄りかかりながら携帯をいじる翼に慌てて駆け寄る。
ヤバい。怒ってる……?
ずっと無言のまま、いや、その前に俺の方を見ようともしないまま、鍵を開けた部屋に入って行く翼。どうしよう。長い間待たせちゃったのかな。連絡に気付くの遅かったから。
サングラスに隠された目からなんとか表情を読み取ろうとしていたら、ベッドに腰掛けた翼が手招きしてきて。
「おいで、」
その口元が笑っていたから、ホッとして近くに駆け寄ったら、
「ッ……!?」
そのまま、頬を殴られた。
「お前さ、ナメてんの?」
「っ……、」
「俺がわざわざ来てやってんのに待たせやがって。何様だよ」
冷たい目。前と同じ。出会った時の、あの撮影の時と同じ。
そう気付いた途端に身体が勝手に震え出し、逃げ出そうとした俺を乱暴にベッドに投げ出す。
「その上、逃げようとするんだ?」
「……つ……ばさ……ッ、ごめっなさ……」
「こんな馬鹿には、しっかり教育してやんねぇとな、」
恐怖で力の抜けた身体はいとも簡単にねじ伏せられ、タオルで後ろ手にきつく縛られる。
ごめんなさい、もう一度伝えようと開いた口に翼のモノを突っ込まれた。
「しゃぶれよ。歯立てたら殺すからな」
「っ、んッ……むぐ、」
ころす、コロス、間違いなく翼の唇が紡いだその言葉が頭の中で何度も繰り返されて心に突き刺さる。理解なんか全く出来ていないのに、涙は勝手にボロボロと溢れてくる。
「もっと舌使えよ、下手くそが」
「んぐっ、んン……、んッ、んっ、」
「はは、お前の泣き顔マジでいいな。口に出してやるから飲めよ」
「ッ……んむっ、ぐッ、ゲホっ、ゲホッ!」
熱く脈打つソレから喉奥に向けて勢いよく出された白濁。苦しくてむせてしまった俺の頭を翼の長い指が強く引く。
髪を引かれる痛みに身体が反応する前に、押し付けられたシーツに溢れた白濁の独特な匂いが鼻につき、思わずそこから目を逸らした。
「全部舐めろよ」
「っ、え、」
「は? 大好きな彼氏の精液飲めねえの?」
大好きな彼氏、
翼の苛立った声に涙が滲む。俺が悪い。翼を待たせた俺が悪い。連絡に早く気付かなかった俺が悪い。
「……っ、ン、」
「はははっ! 犬みてえ!」
シーツを汚す白濁に舌を這わせる。強く握られた髪が痛い。後ろでキツく縛られた腕も痛い。
でも、だって、俺は、翼のことが、大好きで、
「そのまま犬みてぇに尻尾振ってろよ。ご主人様は俺だ。分からせてやるよ」
ぐちゅり、
まだ汚れているシーツに顔を押し付けられ、腰を高く上げられたまま後孔に熱を当てられる。もう秘部を慣らさないセックスなんて毎回のことで、痛みを覚え込んだ身体が強ばる。
大丈夫、大好きな翼、怖くない、大丈夫、
「ッ、ぐッ、ああァ……!」
最奥まで貫かれ、頭の先まで走った鋭い痛みにもう一度涙が溢れた。
――――――
叫び声すら上げなくなった俺に翼が満足して教育を止めてくれた時には窓の外はもうすっかり暗くなっていた。
きつく縛られていたタオルがするりと外され、手首は擦り切れて赤くなっていた。ぼんやりそれを眺めていると、散々泣き叫んでぐちゃぐちゃに濡れた俺の顔に翼がキスを落とす。
「お前は、誰が好きなの?」
先程までの行為中の吐き捨てるような冷たい声とは違う、甘く優しい問いかけに顔を上げる。
ぼんやりして働かないままの頭。唇が勝手に言葉を紡ぐ。
「翼が……好き……」
「じゃあ俺の言うこと聞けるよな?」
「うん……ちゃんと、聞く……、」
「はははっ! お前マジで最高。愛してるぜ千尋」
ギュッと勢いよく抱きしめられて身体が大袈裟に跳ねる。
抱きしめてくれた。俺の事見てくれた。さっきまでの翼は怖くて、今の翼は、優しくて。怒らせた俺が悪い。もう失敗しないようにしよう。怒らせないように、間違えないように。だってそしたらこんなにも幸せで。
「……」
恐る恐る翼の背中に手を回す。温かさにゆっくりと目を閉じた。
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