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「新人さんってどんな人? 何歳?」 「ふふ、やっぱ気になってんじゃん」 「うん、ご近所さんなら仲良くなりたい」  アヤの部屋を出て、佐伯さんと乗り込んだエレベーターの中。どうやらその新人さんも8階、つまり俺と同じフロアの部屋に住み始めたらしく。  ご近所さんが増えたのは嬉しいが、カンジの悪い人だったらどうしよう、なんて。仲良くなりたいし。 「うーん、歳は確か18。んで顔は可愛い系かな」 「俺の一個下だ。初めての後輩!」 「あ、でも割と“慣れてる”子だよ。発展場の常連だし」 「ハッテン場って何?」 「ふふ、今度連れて行ってあげるね」  そこで丁度8階に到着しエレベーターの扉が開く。首を傾げたままの俺の頭を「可愛い」と撫でて、エレベーターを降りる佐伯さん。  カーペットが敷き詰められた廊下。俺の部屋とは反対側に歩いて行くその姿をなんとなく見送っていると、 「あっ! 佐伯さんっ。おはようございまあすっ!」  奥の方で開いた扉から出てきたのは、小柄な男の子。あれが新人さん、かな……。 「おはよう。あれ、どっか行く所だった?」 「いいえっ。佐伯さんをお迎えに行こぉかなぁって……そしたら丁度来てくれたから嬉しいっ!」 「はは、可愛い。今日はよろしくね」 「はぁいっ」  パタン。部屋の中に消えていった2人と、静かに閉まった扉。 シンと静まり返った廊下にぽつんと残された俺は、何故かそこから一歩も動くことが出来ず。  佐伯さんの楽しそうな声が頭の中をぐるぐると埋める。  うん、本当に可愛かったもん。アヤの“女の子みたいに可愛い”ってタイプではなくて、“可愛い男の子”。きっと見た目だけじゃなくて、中身だって可愛いんだろうな。俺なんかとは違って。  可愛い。ほんの少し前に俺が貰った言葉を、今度はあの新人さんが受け取って。俺の頭を撫でてくれた手は、新人さんに触れて、撫でて、喜ばせる。  あの優しい瞳も、澄んだ声も、細い指先も、綺麗な身体も、全部、全部、あの子が、あの子を、今から、全部、佐伯さんの全部が、  あの子が、佐伯さんに、抱かれる、 「……っ……あ……?」  ぽたり、何かが落ちた感覚に、いつの間にか頬を伝っていた涙に気付く。 「っ……ふ、う……!」  気付いてしまったが最後。一気に溢れてきた涙を止めることなんて不可能で。  嗚咽に耐えながら、今にも崩れ落ちそうに震える足をなんとか自室に伸ばそうとした所で、かすかに聞こえたのは、上階でエレベーターが動き出す音。 (アヤ……!)  急いで引き返して下へ向かうボタンを押すと、ギリギリのタイミングだったのか、直後に開いたエレベーターの扉。中で目を丸くするのは、やっぱりアヤで。 「にゃ? さっきぶりだねちいちゃ……」 「アヤ……っ。俺……っ!」 「えっ、泣いてるの? どうし……」 「俺っ……! 佐伯さんのことが好きみたい……っ!」  今頃あの子は佐伯さんに抱かれてるんだ、  それを考えたら、嫉妬で頭がおかしくなりそう、  目を丸くしたアヤにすがりつきながら、馬鹿みたいに泣きじゃくった――……

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