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「で、佐伯さん。あれからどうなったの?」
「んー? 何がー?」
「何がって……ちいちゃんに告ったんでしょ?」
「あ?」
とっておきの秘策から一夜明けた今日。
昨日撮影帰りにこっそり鍵をあけに行った時に、ドアの向こうからかすかに聞こえたちいちゃんのニャンニャン声。
あの甘ったるさは恋人同士のソレを感じさせた。さらに朝から異様に気の抜けた佐伯さんと、ちいちゃんも地に足ついてなかった。
だから、ああ~やっとくっついたのか~って子供を見守る保護者な気持ちで安堵してたんだけど……
「え……? まさか、進展ナシ……?」
「いや! 進展はあった!」
「なんだ、やっぱくっついたんじゃん。びっくりさせないでよーっ」
「千尋と久しぶりにセックスした!」
それは確かにおめでたいけど……え?
「は? まさかそれだけ? だって密室に2人っきりだよ?」
「え? うん、密室に2人っきりだったね」
「なんで告んないの? 絶好のチャンスじゃん」
あれは2人っきりになりたいちいちゃんへの秘策であり、いつまで経っても告白出来ない佐伯さんへの秘策でもあったのに。
そう詰め寄れば、しばらくポカンと呆けてから……
「告、白……はっ!? 確かに!」
「なんで今頃気付くの馬鹿! せっかくアヤがチャンス作ってあげたのにいぃーっ!」
「いやなんかもう久々の2人っきりが嬉しすぎて肝心な事……ちょ、アヤ! チャンス! もう一回チャンス下さい!」
「もー最低最悪! もう頼まれたって手助けもキューピッドもやってあげないもんねーだっ!」
「マジでお願いアヤ様あぁぁあ!」
人の好意を無駄にしやがってこのヘタレ馬鹿が。もう永遠に片想い貫いてろ。
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