49 / 118

2

 月ごとの売り上げ上位3人までに与えられる、給料とは別の賞与。いわゆるボーナス。  それを受け取りに本社へ向かったアヤ達をロビーで見送って、自室に戻ってきた途端に一気に力が抜けた身体。そのままドアに寄りかかるようにずるずると座り込む。 「弥生くんが……3位、」  Rの創立当初から5年間No.1に居座り続けているアヤは、もう絶対倒せないチート級のラスボスみたいなもんだっていつか佐伯さんがそう言ってた。  だからこそそんなアヤを抜くために皆競い合って。順位こそは毎回コロコロ変わるものの、上位の男優さん達はかなりハイレベルな人ばかりらしい。  そこに入社たった1ヶ月で食い込んだ弥生くん。  悔しいとか、驚きとか、あとただ単純に凄いって感心してたりとか。色んな感情が浮かんでごちゃごちゃな頭。  ただハッキリ解っているのは焦燥感。簡単に抜かれた事に対する焦りと、俺なんかその内捨てられちゃうんじゃないかって焦り。 「どうしよう……」  経験値ゼロからこの世界に入ったノンケの俺と、発展場からスカウトされた技術も経験も豊富な弥生くん。俺なんかが競っていい相手じゃないのは解ってる。でもこのままじゃ駄目だ。自分を変えなきゃ。でもどうやって…… 「……」  まるで現実逃避のように無意識にファンレターへ目を通す。そこではいつも俺は必要とされていて、嫌な事も不安も全部忘れられるから。でも今回ばかりは無理か……  一向に収まる気配の無いこの焦燥感に、とうとう涙腺まで緩みそうになった時、ふと手にしていた手紙の隅の何かに気付く。 「あ……、」  良かったら連絡ください。  その言葉と共に便箋に走り書きされた数字。携帯の番号。  トラブル回避のため、ファンへの連絡は禁止。それは入った頃から佐伯さんにずっと言われてきた事で、絶対に破ってはいけないルール。そんなの今まで当たり前に従ってきた事なのに。  もう一度弥生くんの成功を頭に浮かべた俺の手は、自然とポケットの携帯に伸びていた。

ともだちにシェアしよう!