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ホテルの駐車場。いつも通りホテルの住人の車が数台と、竹内さんの車と……あの見慣れないもう一台は恐らく今日絡む男優さんの物か。時間まだ早いけど皆もう来てるんだ……
「すみませんわざわざ送ってもらっちゃって……」
「ん? 今日のお勉強、まだ終わってないよ?」
シートベルトを外し、誰かに見つからないかと辺りを見回していたら運転席から手が伸ばされてびくりと体を揺らしてしまう。勉強はありがたいが、場所が場所だけにあまり気乗りしない。もし誰かに見られたら……
「大丈夫だって。俺は手を出さないから」
「……? じゃあ何を……」
「ローターの事意識するだけでいいよ」
「え? ロー……あ、忘れてた……」
そう呟いた俺に大地さんがやっぱりそうか、って小さく笑う。
中に入ったまま、しかもリモコンを下着に引っ掛けて放置なんて、あのマンションを出る時は不快でしょうがなかったのに。
所詮スイッチの入っていないローター。ずっと同じ態勢で座っていたからっていうのもあると思うけど、小さな異物感に慣れるのは案外早かったみたい。
「思い出したから、今度はしっかり意識して?」
「意識って……?」
「ほら、目を閉じて、ゆっくり……」
耳元で囁かれる。大地さんの勉強スイッチが入ってしまったらしい。内心今すぐ帰りたくてたまらないが、ここまで来たら仕方ない。頼んだのは俺だし。
もう一度辺りを念入りに見回してから、顔を隠すように俯いて目を閉じる。
「お尻の中に入ってるローターを意識して……ほら……」
意識しろなんて言われても、忘れ去っていたくらいの存在感だ。意識した所で何が……ああ、駄目だ駄目だ。集中しなきゃ。
「お尻キュッて締めて?」
「ん……」
「そうそう。中のローター締めつけて……形もしっかり思い出して。今ローターどこにあるの?」
どこにって……意図がいまいちわからないまま黙ってしまっていると、ふとソレが丁度イイ位置にある事に気付いた。
あ……前立腺、
今スイッチ入れたら最高に気持ち良いのに。
「んッ……」
いつまで経っても慣れる事のないあの快感を思い出し、小さく声を漏らす。
と、大地さんがすかさずソレに食いついて。
「今ローターに何されたの?気持ち良かった?おかしいなぁ~、スイッチ入ってないのにねぇ」
「っ、んん、ンぅ……、」
「ほらほら、もっと意識して。思い出すんだ。ブブブって音たてて震えてさ……今までいっぱい気持ち良くしてもらっただろ?」
「あ、あっあ、んんぅ……」
何これ、何これ。ローター動いてないのに。スイッチ入ってないのに。あの刺激を想像して、勝手に気持ち良くなってく。
「っやあぁン……やだ、これやだっ、」
「なんで? 気持ちいいでしょ? ほら思い出して……スイッチ最大にして、千尋の気持ちいい所ぐりぐりぐり~って……」
「ひっあぁっ……やだあぁっ!」
喉をさらけ出して喘ぎ、自分の身体を抱きしめながらビクビクと震える。大地さんは止めることなく耳元で囁きながら、少し身を乗り出して俺のジーンズに手をかける。
「腰上げて? 下着も脱いで……」
「んッ、んんぅ……!あぁン……、」
「うん。いい感じだね。そのままキープね……」
こんなに気持ちいいのに、驚くことにさらけ出された自身はまだ勃ってなくて。それでも小さく反応し始めているのを確認して、大地さんがまた耳元で囁く。
腰を揺らしながら甘い快感に酔っていると、ふいにローターのコードを軽く引いて止められ、
「はいストップ」
「んぁ……、っああぁ、」
そのままするりとローターを抜かれ、下着とジーンズもあっさり元に戻される。触られもしなかった入り口が、物寂しさにひくつくのがわかった。
「はい、このまま撮影行って」
「っぁン……さつえー……?」
「そう。勃起状態でもなく情事後でもなく。MAXの興奮状態で撮影に挑む。それが今日のお勉強。わかった?」
「っ……ふ、んん……、」
「オナったりしちゃ駄目だよ? ほら行ってらっしゃい」
早く、早く。中に欲しい、抱いて、抱いて。
震える身体をなんとか動かして、ゆっくりと車から降りた。
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