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「で、どうでした?」 「ゲイビで勉強したってさ」 「へー。勉強熱心スねぇ……」 「んな訳無いじゃん。嘘ついてる」 「ああ、やっぱり……」  千尋と入れ替わりにシャワールームから出てきた竹くんに、ペットボトルを投げ渡す。  それを受け取りながら首を傾げて。 「でも成長すんのは良い事なんじゃないっスか? 上からの評判も良いし、この前の男優の事務所からは再オファーも来てるし」 「……竹くんに?」 「はい。マネージャーじゃ話になんないからって、この前カメラ回してた俺に直接交渉してきましたよ~。まあ佐伯さんが断ったならって俺も断っといたけど」 「そう……ありがとう」  何度もしつこく掛かってきていた電話が急にピタリと止まったのはそういう事か。  確かかなり良い金額を提示していた気がする。守銭奴でおめでたい頭の上司達に連絡がいかなければいいけど。 「でもなんで断ったんスか?」 「……しばらくは千尋には仕事回さないつもりでいる」 「なっ……!?それはいくらなんでも……!」 「うるせぇな。関係ねぇだろ黙ってろ」 「……っ、」  息を呑んで押し黙ってしまった大事な大事な後輩から顔を逸らしながら立ち上がる。  シャワーの音と共に、室内にも千尋の香りがふわりと届き、ズキズキと痛むこめかみを強く押さえる。  ああ、やばいな。もう駄目そうだ。  制御できない“何か”に飲み込まれるのが怖くてたまらない。無言のまま部屋を出て行こうとすると、ドアが閉まるギリギリに届いた竹くんの声。 「……一人で抱え込むのも良いけど、たまには頼ってくださいね、」  黙れ、うるさいんだよ、お前に何が解る、黙ってろ。  違う、ごめんなさい、八つ当たりした。ごめん、  助けて、千尋に嘘つかれたのが悲しくてたまらない、千尋が俺から離れていくのが怖くてたまらない、  格好悪いって笑ってくれていいよ。嫌っていいよ。俺も、こんな脆い自分がダイキライ。

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