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「ワー、見ちゃっタ。シュン君ってば修羅場? ねぇ修羅場?」 「……伊織、」  千尋の姿が見えなくなったと同時に、タイミングを見計らったかのように掛けられた声。振り向いた先に笑顔で手を振る青年、元同僚の“友人”に、小さく舌打ちをした。 「なんでここにいんだよ」 「6階でウチの子がさつえーちゅー」 「……結城翼?」 「残念ながら翼は休業中。ダレかさんが痛めつけてくれたおかげで精神病んじゃったノ」 「……それはそれはお大事に、」  スーツの胸ポケットを探りながら適当にそう返せば、目の前の金髪は満足そうにニコリと微笑んだ。  あー、薬が無い。昨日アヤに貰ってきた精神安定剤。気休め程度に頼っていたはずが、どうやらたった数錠飲んだ程度で依存の対象になってしまったらしい。  先ほどの千尋の姿が頭をよぎり、ズキンと痛むこめかみを強く押さえる。確実に原因のひとつになっているであろう“友人”に背を向け、アヤの元へ向かうためにエレベーターのボタンに手を伸ばす。  が、次の言葉にピタリと止まる。 「昨日頼まれた番号調べたケドねー、あれねー、大地クンってゆうんだってぇー」 「……大地……どんな奴?」 「ううんわかんなーいっ。それよりねー、オレってば面白いブログ見つけちゃっタ」 「ハァ……。ブログがどうしたって?」  こいつに頼んだ俺が馬鹿だったか、  肝心な事を流され、ため息をつく。そんな俺に伊織はクスクスと肩を揺らし。 「うんっ。見たらきっと気に入ると思うヨ……?」  そうにっこりと微笑んだ。

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