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「この携帯でハメ撮りしない?」
「ちいちゃん待ってよー。アヤまだマニキュア塗り終わってなあい」
「えー? スーパー行くだけだから爪なんか……てかもう塗ってあるじゃん」
「違うの。今日のラッキーカラーはホワイトなの! ピンクじゃ駄目なのーっ!」
「あーはいはいはい。ほら置いてくよ」
「むむ……むむむーっ! アヤにアンラッキーな事起きたらちいちゃんのせいだからねーっ!」
「はいはい。わかったわかった」
「……でさあ、ちいちゃん。アヤに何か言う事あるよね?」
「う、……ご、ごめんなさい……」
「2人ともマジ可愛いね~」
「お兄さん達と遊んでよ」
「ギャハハ! 楽しもっかー!」
おとめ座注意報
7月29日。天候は晴れ。おひつじ座の俺は11位で、おとめ座のアヤは最下位でした。
いや、それがこの最悪な状態に繋がった理由にはならないけど。
「あーあー最悪ー。ちいちゃんのせいでレイプされるー。ちいちゃんが占い信じなかったからー」
「た、たかが星座占いじゃん! 爪白くした所で状況変わんないし!」
「変わるもん。アヤがあの時マニキュア塗り直すでしょ? そしたらホテル出る時間が5分遅くなるでしょ? そしたらほらね、あいつらと会うことも無かった」
「うぅ……」
ただの屁理屈なのに何も言い返せずに口ごもる。アヤの言う通りにしていたら、本当にそうなってたかもしれないし。
そんなしょんぼりした俺に気付いて、アヤが笑いながら俺の肩をバシバシと叩く。
「もー冗談だってばあ。それに拉致レイプなんて日常茶飯事だしぃー」
「に、日常茶飯事っ!?」
買い物に行く途中に声をかけられ、振り向くと同時に隣に止まっていたワゴンに引っ張り込まれ、二人仲良く見知らぬ男達に拉致られた。そしてどこかの倉庫に連れ込まれ、これからレイプされようとしている。
この有り得ない非日常をあっさりと受け止めるアヤに、軽くめまいを起こした。
「あそこらへんってハッテン場多いから、Rのホテルも有名なんだよ~」
「そ、うなの……?」
「うんっ。それにアヤこんな事しょっちゅうだから、レイプ目的とそうじゃない奴の見分けくらいつくよ。あいつらはただのヤリ目」
レイプ目的とヤリ目。
違いがわからずポカンとしていると、アヤがにっこり笑って男達を指さす。
「あいつらは多分ハッテン場でヤれなくて帰る途中だったんだよ。めっちゃ溜まってる所にホテルから出てきたアヤ達を見て、性欲の矛先向けただけ。だからただのヤリ目ってこと」
「な、なんでそんなことわかるの?」
「慣れっこだから。現に今拘束も目隠しもなく、荷物も取られてないし……アヤ達完全に自由でしょ?」
そう言ってバッグから取り出した携帯をひらひらと見せるアヤ。
そこで俺も初めてポケットに入れたままの携帯の存在を思い出す。
普通に助け呼べるじゃん……!
「うわ、俺今自分が怖くなったわ。人間ってパニックになると全然頭まわんないんだね」
「そうだよ~。こういう時こそ冷静でいなきゃ。お兄さーん! この携帯でハメ撮りしなーい?」
「おいコラ待てクソビッチ」
少し離れた場所で一服している3人の男達にひらひらと携帯をかざすアヤの肩を掴む。
「え? ちいちゃんどしたの?」
「どうしたのってこっちが聞きたいわ! 逃げるんじゃないの!?」
「えっ? ちいちゃんあの黒いTシャツの人の顔見てないの? めっちゃちんこデカイよ? アヤ超ラッキー」
「……」
やっぱり俺、星座占いなんて信じない。
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