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「あっ! アヤっ……!」
「っ……」
ああ、今、一番会いたくなかった……
同じ階で撮影していたのか、丁度部屋から出て来たちいちゃんと鉢合わせになる。
久しぶりに顔見た。いつもと同じ、可愛くて純粋で。今のアヤにはキラキラ眩しいや。
しばらくぼんやりと眺めていたけど、駆け寄ってくるちいちゃんに気付いて慌ててスイッチを入れる。“いつものアヤ”になれるスイッチ。
「にゃーっ! ちいちゃん久しぶりーっ!」
「アヤ! 会いたかった! 部屋行ってもいつも居ないし、連絡もくれないから心配で……」
「うぅ~ごめんね。最近忙しくって」
嘘。
確かに忙しいけど、居留守使って連絡無視して……ちいちゃんに会うのをずっと避けてただけ。
「なんか、アヤやつれたね……身体大丈夫なの……?」
「……ッ!」
アヤに触らないで。汚れちゃう。
汚いアヤに触ったら、綺麗な綺麗なちいちゃんが、汚れちゃう。
心配そうに伸ばされた手を思わずはじき返してしまい、驚いて目を丸くするちいちゃん。
我に返って慌てて言い訳しようとするが、さっき大量に飲んだ薬のせいで鈍くなった頭じゃそんなもの考えられる訳なくて。
「ご、ごめんねアヤ!」
「ううん……ちいちゃんは、悪くないの、」
「アヤ……」
「あっ、ほらほら。エレベーター来たよ。乗って乗って。アヤは今ちょっと具合悪いから非常階段使うんだーっ」
ちいちゃんは悪くないのに、謝らないで。そんな泣きそうな顔しないで。
またね、と手を振ってちいちゃんに背を向ける。
本当は階段もしんどいんだけど、我慢我慢。だってこのままちいちゃんと一緒に居たら、
「アヤ、」
「………」
ゆっくりと振り返ると、ちいちゃんは今にも泣きそうな、でもとても強い目をしていた。
「ねぇ、なんで……そんなにボロボロになってまで、頑張ろうとするの……?」
「……アヤはね、ここに居なきゃ価値が無いの。どんなにボロボロになっても、可愛くなくなっても……No.1であり続けなきゃ価値が無いの」
だから、ここで頑張るしかないの、
「価値って……、」
「だってアヤにはここしか居場所が無いもん。No.1であることがアヤの人生の全て。だって、No.1じゃないアヤなんて誰も興味ないでしょ?」
「そ、そんなことっ……!」
「なあ、お願い。マジで黙ってくんねぇ? 俺ね、お前の……ちいちゃんの前では、可愛いアヤで居たいの、」
「……っ、」
言葉を失って黙り込むちいちゃんの肩を押して、扉が開いたエレベーターに無理やり押し込む。
廊下から腕を伸ばして8階のボタンを押し、にこりと手を振って立ち去ろうとするが、ぽつりと呟かれた言葉に足を止める。
「アヤは……アヤは、今まで俺が出会ってきた誰よりも、可愛くて綺麗で優しい……大事な俺の親友だよ」
「……っ」
目の前で閉まったエレベーターの扉を見つめて立ち尽くす。今なんて言った? 親友?
「馬鹿みてぇ。俺の事何も知らないくせに。本性も、過去も。腹ん中何も知らないくせに」
馬鹿みたい、本当に、馬鹿だ。
「っ……ふ、うぅ……ちいちゃん……っ」
アヤは可愛くもない。綺麗でもない。だってこんなに汚れてる。
でも親友、の一言が嬉しくてたまらないの。
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