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「はい差し入れー」 「んー」  先ほど塗ったマニキュアにキラキラ光るラメの仕上げをしていると、佐伯さんがビニール袋片手にやってきた。  いつものようにそれをちらりと一瞥した後作業に戻ろうとしたが、ビニール袋と一緒に両手に持たれた紙袋が目に入る。 「……?」 「あれ? お前昨日の食ってねぇじゃん」 「だってお腹減ってないもん。てか携帯返してよ。やること無くて暇すぎ」 「まだ休養三日目なんだけど。携帯返したらお前絶対遊び行くじゃん。今はちゃんと休んでちゃんと食え」  コンビニのビニール袋からサンドイッチやらおにぎりやらを取り出して並べる佐伯さん。  唇を尖らせながら、その足元に置かれた二つの紙袋を指さす。 「ソレなあに?」 「ん? ああ、お前宛てのファンレターの一部。最近やっぱ特に多くて、本部にまだ大量にあるんだけどとりあえず少しだけ持ってきた」 「ファンレター……」 「ファンからのプレゼントも含めたらダンボール二箱くらいあったかな? どうせいつも通り全部ゴミ箱行きだろうけど、一応本人に確認すんのが義務だからさ」 「……」  ガリガリにやせ細った腕を伸ばして、紙袋からはみ出している一枚を手に取る。アヤ好みの、可愛いウサギのイラストが描かれたピンクの封筒。  ゆっくり開いて便箋を取り出し、丁寧な字でぎっちり書かれた文章に目を通す。  便箋いっぱいに詰め込まれた、アヤへの愛。これが、あとダンボール二つ分。  知らない内に溢れていた涙が、頬を伝って便箋にぽたりと落ちる。 「……俺もう行くね。ちゃんと食えよ?」 「っ、佐伯さん、待って!」  部屋を出て行こうとする後ろ姿を引き留める。

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