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「んっ、ふぁ、んンっ……」 「ン……」  ベッドに押し倒され、何度も何度もキスをする。  身体が熱い。  そういえばキスなんて久しぶり。最近は男優とキスするような甘々な撮影なんてなかったし、休養に入ってからは佐伯さんに夜遊び用携帯没収されちゃったからセフレ達とも会ってなかったし。  ああ、そういえば明日から仕事再開だ。嫌だな、うまく出来るかな。  そんな事をぼんやりと考えていたら竹内くんの指先がアヤの服に伸びて。そこである事に気付く。 「ッ……! だめッ!」  とっさにその手を弾いてしまったアヤに、竹内くんが首を傾げる。 「どうしたんスか?」 「あ……あのね、アヤ、まだ体重とか全然戻ってなくて……ガリガリで……」  さっきシャワーを浴びた時に鏡に映った自分を思い出す。女の子みたいな華奢な細さじゃなくて、病的にやつれた自分の身体。  過労と睡眠不足と栄養不足でボロボロになった身体は、この休養期間でも大して回復出来なかった。 「キモイくらいガリガリだし、なんか青白くてやつれてるし……竹内くん絶対勃たないと思う」 「……」 「ほら、前と全然違うじゃん? メイクだってノらなくて、髪も短くて……アヤ……可愛く、ないし……」  消え入るような声は、自分でも情けなくなるくらいで。でもこの数ヶ月で何もかも変わってしまった。  あんなに自信たっぷりでキラキラと輝いていた自分は、もうどこかに消えてしまった。  アヤは汚い。可愛くない。抱いて貰う資格なんか、ない。 「だからさ、ほら……やっぱり家帰って彼女と……」 「可愛いよ、」 「え……、」 「アヤは、誰よりも可愛い」  いつもの、敬語とタメ口が混ざったようなだらしない口調とは違う。  真っ直ぐな瞳で見つめられ、はっきりとそう告げられ。  目頭が熱くなるのを感じる。 「……ンっ……、」 「……」  優しく唇が重なり、涙が一筋、頬を伝った。 「ああっ、あんッ、ンぅ……!」 「なんか今日めっちゃ感度良いっスね」 「う、るさ……ッ! ひ、ああぁン!」  最奥を突かれた拍子に、何度目かの射精感。竹内くんはまだ一回もイってないのに。  アヤばっかりこんなに必死なのが悔しくて、恥ずかしくて。  無意識に根元を掴んで射精を止めようと伸ばした手は、あっけなくシーツに押さえつけられ、白濁がばたばたとお腹の上に落ちる。 「そろそろしんどいっスか?」 「っ、何、言ってんの? はあっ、んッ……まだ、余裕……!」  荒い呼吸と一緒になんとか繋いだ言葉に竹内くんがクスクスと肩を揺らす。  悔しい、悔しい。  竹内くんとは今まで数え切れないくらい何回もえっちしてきた。いわゆるセフレ。  でもそれは溜まったモン吐き出すための娯楽みたいな行為で。  快楽に溺れたりなんかしない。何回もイって無駄に体力使うような馬鹿な事なんかしない。まるで全身が性感帯になったみたいに、触られる度にいちいち嬌声上げたりなんかしない。  こんな甘くてとろけそうなえっち、アヤは知らない。 「んっ、やあン……っ、まだ、動かないで……!」 「えー? いつもは動け動けって指図してくるくせに」 「うるさいってばぁ! とにかくちょっと休憩! アヤ病み上がりなんだからもっと……っ、あぁアっ!」  抜こうとして少し引いた腰を掴まれ、勢いよく打ち付けられる。  全身にぞくぞくと走る快感に、シーツをぎゅっと握りしめた。 「もっと、何スか?」 「ひあぁ……ッ、もっ、もっと、優しくして……っ、激しいの、嫌あぁ……ッ!」 「これが激しい? 俺らのセックスってこんな生ぬるいモンでしたっけ?」 「やああぁン……っ、あっ、ンんぅ……ッ、ああァっ!」  目の前がチカチカする。  自分の声がフィルターがかかったように、遠くの方で聞こえる。いつもの演技で固めた甘ったるい喘ぎ声とはかけ離れた、切羽詰まった可愛くない声。  何これ。アヤ死んじゃう。助けて。 「やだあぁ……ッ、また、イっちゃうっ、ひあぁンッ」 「……いいよ、イって、」 「ひッ……あぁン、イっ……あぁぁぁアっ、」 「っ、……!」  アヤがイくのとほぼ同時。中に勢いよく吐き出された熱を感じてもう一度だけ小さくイってから、とうとう意識を手放した。

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