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「アヤいつまで寝てんだ! 今日から仕事……あれ、竹くんおはよう」
「にゃッ!?」
「あ、佐伯さんおはようございます」
「竹内くん何呑気に挨拶してんの! てか佐伯さんもノックぐらいしてよ! ばか!」
撮影前にアヤの部屋を訪れれば、乱れたベッドの上。わたわたと慌ててシーツにくるまるアヤと、パンイチのままのんびり煙草を吸ってる竹くん。
「大丈夫。俺身内のセックスとか見ても気にしない派だから」
「あー、俺も気にしない派っす」
「そういう問題じゃないの! ばか!」
うわ、俺今日「馬鹿」しか言われてない死にたい。
布団の中でもぞもぞと下着を履くアヤの邪魔にならないように、ベッドの隅、竹くんの足元に腰を下ろす。
「佐伯さんからも叱っといてよ。竹内くん彼女が家で待ってるのにセフレとヤって帰らないとか、ヒドい男だよね」
「それお前が言う言葉じゃねぇだろ。彼女命の純粋ノンケだった竹くんを暗黒面に落としやがって」
「今は合意の上だから問題ないもんっ。それに昨日は竹内くんの方が盛ってきたんだしぃ」
「お前そういう問題じゃ……あ? 彼女?」
「……」
「アヤちょっとシャワー浴びてくるーっ」
下着を履き終え、パタパタとシャワールームに駆けていくアヤ。
その後ろ姿をなんとなく見送りながら、ポツリと呟く。
「あれ……? 竹くん彼女と別れたんじゃなかったっけ?」
「……」
長い交際歴。同棲中。結婚間近。どこを取っても幸せにしか見えないカップル。
それを一方的に捨ててきた、なんて言ってたからどんな理由があるのか不思議でたまらなかったけど……
「何でアヤに話してないの……え? ちょっと待って……」
「……」
「竹くんお前、もしかしてアヤのこと……」
「……うるさいっス……、」
おいおい、マジかよ……。
シーツを握りしめて俯いた竹くんに、そう小さく呟いた。
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