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「んっ、んむ……っ、」
「っ、アヤごめん、イきそう」
「ン……いいよ、出して?」
硬く脈打つそれに丁寧に舌を這わせていると、小さなうめき声とともに咥内に吐き出される熱。
いつも通り飲み込もうとしたが、いつもとは全く違うその味に、思わず口を離して思いっきり咳き込んだ。
「っ、げほっ、げほっ!」
「あー、すみません……」
「うぅー。濃いよぉー……っ」
口の中にまとわりつく不快感に眉根を寄せながら、ベッドサイドに置かれたミネラルウォーターをごぐごくと飲み干す。
「濃すぎなんだけど!何日溜めてんの」
「あー、2週間かな。乱交の撮影でアヤとヤったのが最後っスね」
「え……そんなに?」
「そん時もう彼女とは別れてたし、セフレもアヤしかいませんよ。自分で抜いたりしないし」
自分が唯一の性対象だった。そう知ると急に恥ずかしくなって顔に熱が集まるのを感じた。
アヤが竹内くんを好きになったことも、想いが通じ合ったことも、ついさっき恋人になったことも。全部全部、胸の奥がムズムズして恥ずかしい。
「アヤ?」
「っ、なんでもない。早くシよ」
真っ赤になった顔を覗き込まれそうになり、慌ててベッドにダイブする。もぞもぞと仰向けになって竹内くんに手を伸ばすが、そこでやっと正常位だと顔が隠せないと気付いた。自分の余裕の無さに呆れる。
「んっ、あンっ、んんぅ……」
たっぷりの唾液で濡らした指がゆっくり中に挿れられ、遠慮がちに動くそれがイイ所をかすめる度に身体がビクビクと跳ねる。
もう原因すら思い出す余裕がないくらい、何もかも恥ずかしいこと。顔が赤いこと。呼吸が荒いこと。気を抜いたらすぐ可愛くない声が出ちゃうこと。その全てを竹内くんに気付かれないように、必死で快感に身を任せる。
「挿れていい?」
「ンッ、来て……っ、」
熱くほぐれたそこをゆっくりと開いていくモノに、背中がぞくぞくする。
最後に竹内くんとヤったのは撮影の時って言ってたっけ?恥ずかしくて緊張してた記憶がある。今思えばあの時から、いやその前からずっと好きだったんだろうな。
なんか駄目だ。恥ずかしい。
「アヤ? どうしたんですか? 痛い?」
「っ、べ、別に平気」
「大丈夫? 動いていい?」
「うん、」
心配そうに首を傾げる竹内くんに、真っ赤になった顔を隠しながらそう答える。
ごちゃごちゃと頭を埋める色んな感情。色んな記憶。
振り払おうとする前に、イイ所を突かれて高い声を上げる。一瞬で頭が真っ白になる。
「ぁンンッ、ひっ、あぁア……っ!」
「っ、ごめん! 痛い?」
「へっ?」
アヤの声にピタリと動きを止める竹内くん。快楽の波が一瞬で引いて、思わず間抜けな声が溢れた。
「なっ、なんでさっきからいちいち聞くの! いつも適当にぶち込んで適当に腰振ってたじゃん!」
「あ、いや……だってなんか、痛かったらどうしよう的な……」
「痛い訳無いじゃん! アヤを誰だと思ってんの」
「あー……」
確かに竹内くんとヤるのは久々だけど、アヤはその間に撮影もあった。それにこの身体は痛いとかキツいとか、そんな可愛い物とはもう何年も無縁だ。
今だって十分すぎるくらい時間をかけて慣らして貰ったのに。そんなアヤの身体のことは竹内くんが一番よく知ってる筈なのに。
そう噛みついてみたが、何故かうなだれてしまう竹内くんに、逆にアヤの方が心配になってむくりと起き上がる。
「ど、どうしたの」
「いや、なんか駄目っスね。心配しすぎっていうか、アヤを大事にしたいって気持ち強すぎて空回りしてる……」
「……っ、」
「うあー……今の俺マジで重い……」
よく見れば下を向く顔は耳まで真っ赤に染まっていて。
心配も、気遣いも。今までそんな愛情をかけて大切にアヤを抱いた人なんかいなかった。
「……竹内くん、下の名前なんていうの」
「啓太ですけど、それ普通このタイミングで聞きます?こっち病みかけてんのに」
「啓太、好き、」
「っ、」
どうせ目の前の恋人だって真っ赤な顔してるんだから、アヤだって隠さないで、真っ赤な顔でそう見つめる。
伝わるように。同じように愛情をかけて、大切に思っていることが伝わるように。
でもすぐに恥ずかしさで頭が沸騰しそうになって、これまた熱でピンクに染まった両手で顔を隠した。それが今のアヤの精一杯。
「っ、見てないで早く動いてよ、」
「可愛い。大好きです」
「うるさいなあっ! 早くぐちゃぐちゃにして!」
「可愛いー」
人を好きになるって、こんなに恥ずかしいんだ。余裕がなくなって、身体中真っ赤になって、呼吸が浅くなって、こんなのアヤじゃない。こんなの知らない。
でもそんなアヤを見て啓太が楽しそうに肩を揺らすから、この恥ずかしくて死にそうな世界で頑張ってやっていこうかなって。そう決意しながら、今度は遠慮なく襲ってきた快楽に全身を委ねた。
fin
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