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第五章・初代四界の王VS当代四界の王(※家族五人)4
「あの方々は、いったい……」
私とハウストとイスラは驚きました。
向こうの二人も私たちを見て驚いた顔になっています。
でもその時でした。私の隣にいたゼロスが勢いよく飛び出したのです。
いいえ、ゼロスだけではありません。私の膝にいたクロードまで。
ゼロスは歩いてくる二人に向かって拳を振り上げて怒りだします。
「なにしにきたのっ、なんのごよう!? ここはぼくたちのおうちなの! あっちいけー!!」
「あうー! あーあー! あぶーっ!」
クロードもハイハイでゼロスの隣に行くと、なにやら猛烈な勢いで怒りだしました。
激しい剣幕のゼロスとクロードに困惑してしまいます。きっとゼロスとクロードは二人を知っているのですね。
そうしている間にも二人が洞窟にいる私たちの所へやって来ました。
「初めまして、レオノーラと申します」
レオノーラは名乗ると深々と一礼しました。
一緒にいた男は私たちを一瞥し、淡々とした様子で名乗ります。
「イスラだ」
「えっ、イスラ……。では、あなたがっ……」
その名前に息を飲む。
この時代に『イスラ』と名乗る男は一人しかいません。
私は二人に向かって深々とお辞儀します。
「幻想王オルクヘルム様からお二人のお話しを伺ったことがあります。初めまして、私はブレイラと申します」
私の挨拶にレオノーラが控えめに微笑んでくれました。
それにしても話しでは聞いていましたが驚くほど私とレオノーラは似ています。
そしてもう一人、初代勇者イスラ。当代勇者イスラと少し面影が重なります。勇者は一代なので祖先というわけではないはずですが、やはり同じ勇者の力を持っているからでしょうか。
「あなたが人間界の最初の勇者様ですね。お会いできて光栄です」
私は改めてお辞儀しました。
しかし初代イスラは私をちらりとも見ませんでした。
私を無視してハウストとイスラを見据えます。この場で重要なのはこの二人だと察しているのです。少し寂しいですが仕方ありません、それは間違っていませんから。
私は引き下がりましたが、不意にイスラが私の前に立ちました。そして初代イスラと対峙します。
「おい、挨拶くらい返したらどうだ」
「…………。お前、何者だ」
「俺もイスラだ」
「…………」
同名の名乗りに初代イスラが怪訝な顔をしました。
二人から立ち昇る闘気。一触即発の空気が流れて焦ってしまいます。
「イスラ、私は大丈夫ですから。ありがとうございます」
そう言ってイスラの腕にそっと触れました。
するとイスラは不満そうな顔をしながらも「……分かった」と闘気を収めてくれます。
しかし、ゼロスとクロードがいつになく警戒心を剥き出しにしていました。
「ここになにしにきたの!? クロード、あぶないからこっちおいで!」
「あいっ」
ゼロスがクロードを小脇に抱え、クロードもゼロスのシャツをぎゅっと掴む。
ゼロスとクロードの様子に私とハウストとイスラは顔を見合わせました。
「ゼロス、クロード、大丈夫ですから落ち着いてください」
「ダメっ、あいつらはダメなの! あいつら、ぼくとクロードにいじわるするの! だからダメ!!」
ゼロスが必死に訴えてきました。
小脇に抱えられたクロードも「あぶっ、あー! あー!」と一緒になって訴えてきます。
ゼロスは私の後ろに隠れると、初代イスラとレオノーラをちらちら見ながら考えます。
「あいつら、なにしにきたのかな、ぼくとクロードをつれてくのかな!? ……うぅっ、やっつけてやる!!」
ゼロスがカッとなって冥王の剣を出現させる。そのまま初代イスラとレオノーラに向かって行こうとして慌てて引き止めました。
「ああっ、ダメです! ゼロス、攻撃してはいけません!」
「でもでも、あいつらやっつけないと、ぼくとクロードははなればなれなの! 『さとおや』とか『ようし』っていってた!」
そう言って涙ぐんで怒っているゼロス。意味が分からないながらも、その言葉に不穏なものを覚えてしまっていたのでしょう。
しかし私はそれを聞いて粗方の事情を察します。
そう、私は孤児院出身。その意味を、その言葉が使われる状況をよく知っていました。
私は初代イスラとレオノーラに改めてお礼を伝えます。
「そういうことでしたか。ゼロスとクロードがお世話になりました。この世界で格別のお気遣いに感謝します」
「っ、どうして!? どうしてありがとうってするの!?」
ゼロスはショックを受けてしまったようでした。
私は地面に膝をつき、ゼロスと目線を合わせます。ゼロスに伝えなければならないことがあります。
「ゼロス、レオノーラ様を責めてはいけません」
「なんでっ! あいつ、ぼくとクロードにいじわるするのに!!」
「いじわるではありませんよ。レオノーラ様はあなたとクロードを守るために精一杯のことをしてくれました」
「ちがうっ、いじわるだった! ぼくとクロードはいやだったのに、はなればなれにするっていうの! ぼくとクロードにはブレイラがいるのにっ、ぼくのおうちじゃないのにっ……!」
「そうですね、あなたのおうちは私たち家族のところですよ」
そう言ってゼロスの手を取り、両手で優しく包みます。そうすると少し安心した顔になってくれました。ほっとするゼロスに優しく笑いかけます。
現実はゼロスとクロードをたくさん傷付けたけれど、レオノーラがしてくれたことは決して間違いではありません。むしろゼロスとクロードは幸運だったと、貧困層の孤児だった私は知っています。
私はゼロスを真っすぐに見つめました。
この子は四界の王の一人、冥王です。だからこそ知らなければならないことがある。
「あなたには父上や私や兄上や弟がいます。でもね、家族がいない子どももいるのですよ」
「っ!」
ゼロスがびっくりした顔をしました。
まだ三歳のゼロスは想像したこともなかったでしょう。当然です、この子は生まれた時から父上と私と兄上がいます。家族がいるのが当たり前でしたから。
でもね、そんなゼロスだから知らなければなりません。この世界には数えきれないほどの不幸や不運があるのだと。それは残酷なほど理不尽なものなのだと。
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