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第五章・初代四界の王VS当代四界の王(※家族五人)12

「ハウスト、あなたの言う通りでした。初代勇者と対峙しながらも、イスラは私を気にしてくれていました」 「気にしただけで結局イスラは自分の思い通りにするようだがな」 「あなたにそっくりですね」 「……そうか?」 「そうですよ」 「そうか……」  ハウストがさり気なく目を逸らしました。少しは自覚があるようです。  あなたもイスラも私に優しくしてくれるけれど、だからといって自分の意志までも譲ってくれることはありません。もちろんそれでいいのですけど時々いじわるしたい気持ちになる。それはあなたが私を大切にしてくれているからですね、だから甘えてじゃれたくなるのです。 「ふふふ、ごめんなさい。いじわる言いましたね。でも、あなたとイスラはそのままでいてください。私を気にして意志を曲げられては困ります。あなたもイスラも最善を間違えるような方ではありません。だから私はそれを支えたく思いますよ?」 「ブレイラ、ありがとう」 「私こそ、私を大切にしてくれてありがとうございます」  そう言って笑いかけると、ハウストが優しく目を細めました。  私たちの近くではゼロスがイスラに構ってほしくてじゃれついて、こんな時間だというのに騒がしくしてしまってます。でもここは私たち以外いないので多少うるさくしても大丈夫でしたね。  でもその時、――――ペタリ、ペタリ……。洞窟の中から不気味な音! しかもこちらに近づいてきます! 「ハ、ハウストっ……」  咄嗟にハウストの後ろに下がりました。無人の洞窟だと思っていたのにそうではなかったのでしょうか。  ハウストとイスラとゼロスが身構えて洞窟を見据えましたが。 「――――う~~っ……」 「こ、この可愛いうなり声は、もしかしてっ……」  私はハッとしました。  私たちが見守る中、洞窟から丸い小さな影が出てきます。そう、それはハイハイしてきたクロード。クロードの小さな手がペタ、ペタ、ペタと音を響かせていたのです……。  しかも。 「……こわい顔してます。クロード、赤ちゃんなのにこわい顔してますっ」 「う~」  クロードは寝起きの据わった目をしていました。  どうやら私たちは騒がしくし過ぎたようで、気持ちよくスヤスヤ眠っていたクロードを起こしてしまったのです。  洞窟からハイハイで出てきたクロードはちょこんと座る。そして。 「あぶっ、あーあー! ばぶっ、ばぶぶっ、あう~っ、あーあー! あぶーっ!」  猛烈におしゃべりを始めました。  短い腕を伸ばしたり縮めたり振り回したり、怒りが最高潮なのですね。かわいい赤ちゃんの仕種と声なのに、とてもプンプンです。 「どうしましょう、怒ってますね」 「これは完全に怒ってるな」とハウスト。 「……面倒な奴だ」とイスラ。 「クロードはおこりんぼうさんなんだから~」とゼロス。  私たち四人はプンプンするクロードを囲むようにしてしゃがみました。  あまりに見事な剣幕なので状況を忘れて感心です。赤ちゃんってこんなにプンプンするものなんですね。  しかもまだまだ続きます。 「あぶぶっ、あーあー! あう~っ、ばぶぶっ、あぶっ!」 「……もしかして、私たちお説教されてます?」 「もしかしなくても説教だろ」  赤ちゃんの剣幕にハウストが少し引きながら言いました。  クロードがプンプン怒りながら私たちにお説教です。しばらくそれを眺めてましたが。 「あ、クロードの様子が変わってきましたよ」 「あうー! あぶっ、あーあー……っ! ……ううっ、う……、あうー……」  口調がだんだん弱々しいものになってきました。小さな下唇を噛みしめて、ときおり「……うっ、うっ」と嗚咽を漏らし、よろよろとその場に崩れ落ちて……、パタリッ。下唇を噛みしめながら泣き崩れてしまいました。 「うっ、うっ……」  その場にさめざめと泣き崩れてぷるぷるしています。  大きな声で泣かないように下唇を噛んでいるのは、最後の意地のようなものでしょうか。 「……どうやら感情が昂りすぎたようですね」 「怒りを通りこすと泣くのか、こいつは」  ハウストが感心したようにクロードを見ています。赤ちゃんがぷるぷるしながらさめざめ泣いている様子が珍しいようです。赤ちゃんが泣くのは当然としても、数年前まで赤ちゃんだったゼロスは大きな声で叫ぶように泣いていましたから。 「あぶーっ、あー……、うぅっ……、あー、……うっうっ……」  威勢よくお説教をしようとするけれど、我慢できずにさめざめと泣いてしまっています。  もっと見ていたい気もしましたが、そろそろ謝った方がいいかもしれませんね。 「クロード、ごめんなさい。どうか元気をだしてください」  泣き崩れていたクロードを抱っこしてあげました。  クロードは小さな眉間に皺を刻んでいるけれど、小さな手で私の袖をぎゅっと握っています。  私はクロードに優しく笑いかけ、涙ぐんだ目元を指で拭ってあげました。 「もう怒らないでください。泣くのもおしまいです」 「あうー、あぶぶっ! ……うっ、うっ、グスンッ……」 「そうですね、眠っていたのに起こされていやでしたね」 「あいっ。あう、あーっ」 「うんうん、あなたの言う通りです。夜は静かにすべきでした」 「あぶー、あー。あぶぶっ、うぅっ、あうー……」 「ああ落ち込まないでください。あなたは赤ちゃんなんですから泣いてもいいんです。たくさんプンプンしたら泣いてしまいますよね」 「うぅっ。……あいっ」 「そうです、赤ちゃんは泣くものです。だから元気だしてくださいね」 「あいっ、あいっ……」  クロードがこくこく頷きました。  赤ちゃんなのでなにを話しているか分かりませんが、どうやら落ち着いたようなので良かったです。赤ちゃんは怒ったり泣いたり忙しいですね。  私がクロードを宥めるのを、ゼロスが感心した顔で見ていました。 「すごいっ、ブレイラはあかちゃんとおはなしできるんだっ……!」  ゼロスの瞳がキラキラ輝いてます。  ふふん、気分がいいです。幼い子どもの尊敬の眼差しとは良いものですね。なんて可愛い眼差しでしょうか。  でもそのゼロスの後ろでは……。 「違うな。ブレイラは赤ん坊と話すときいつもあんな感じだ」  そう言ったハウストにイスラがうんうんと頷いてました。  …………。  大人の眼差しはちっとも可愛くありませんね。  こうして私たちは騒がしい夜をすごしたのでした。

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