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第五章・初代四界の王VS当代四界の王(※家族五人)26

「ああ、あんたの言う通りだ。たしかに重い」 「大切なもんだってのに皮肉だよな、認めたくないだろうがそれは足枷だ。お前にとって不利になるぞ」  オルクヘルムは同情するように言った。  だがそれに対してイスラはニヤリと笑う。そして。 「不利? 誰に向かって言っている。歴代最強になる俺には丁度いい重さだ。むしろ心地いいくらいのな」  イスラが真っすぐに言い放った。  紫の瞳が強さを帯びて挑戦的に言葉を続ける。 「俺はこの時代の勢力図にも、初代勇者がなにを考えているかも興味はない。奴を倒して歴代最強の勇者になるだけだ」  その言葉にオルクヘルムは目を見開いたかと思うと、次には大きな声で笑いだした。 「ガハハハハハハッ! そうかそうか、そりゃ悪かったっ。余計なお世話だったみたいだな! ああまったく、やべぇな、未来の連中は愉快すぎるっ。ハハハハハハッ!」 「ちょっと~! あにうえとおじさん、なにしてんの!? はやくこなくちゃダメでしょ~!」  ゼロスから怒った声があがった。  先に仕留めた動物を取りに行ったものの、イスラとオルクヘルムが来ないので怒りだしたのだ。 「チビガキが怒りだしたな」  オルクヘルムが面倒くさそうに言った。  早く行かなければもっとうるさく怒りだすだろう。  二人は話しを切り上げて、ゼロスがいる方へ足を向けた。 「もうっ、ふたりともなにしてたの? ぼく、じょうずにえいってできたのに!」  ゼロスの前には大型肉食獣が横たわっていた。  それはオルクヘルムお薦めの脂したたる最高においしい肉。今夜の食材だ。 「一発で決めたか。チビガキのくせにやるじゃねぇか」 「まあね! これほんとにおいしいの?」 「めちゃくちゃうめぇぞ、楽しみにしてろ」 「やった~~!!」  ゼロスははしゃいでぴょんぴょん跳ねる。  でも空の太陽が傾きだしたことに気が付いて、ハッと表情を変えた。 「たいへん! はやくかえらないと、あぶなくなっちゃう!」 「おっ、そうだな。夜の森は危ねぇからな」 「あいっ」  イスラが抱っこしているクロードも真剣な顔で頷いた。  オルクヘルムはともかく、ゼロスとクロードは本気で夜の森は危ないと思っている。ブレイラの教育の賜物だ。  そんな三人にイスラは平らな目になるが、狩猟した大型肉食獣を洞窟に持って帰るのだった。 ◆◆◆◆◆◆  水車小屋のベッドで私とハウストは裸のまま抱きしめあっていました。  部屋は甘く気怠い空気に満ちて、私たちは情事後の他愛ない睦言を楽しんでいました。  でも、ずっと二人きりの甘い時間に浸っているわけにはいきません。 「ハウスト、そろそろ帰りましょうか」 「……もうそんな時間か」 「もうすぐ陽が傾きます。イスラ達も戻っているかもしれません」  ハウストが不満そうに眉間に皺を刻みました。  小さく笑ってモミモミしてあげると、私を抱きしめる彼の腕に力がこめられました。このまま抱きしめていてほしいけれど、でもいけません、彼の腕を少しずつ解いていきます。  私だって離れたくないけれど、いつまでもベッドでごろごろしているわけにはいきません。早く着替えて帰らなければ。  裸のままベッドを降りようとしましたが、突然ガシリッと腕を掴まれる。 「わああっ、ハウスト!」  強引にベッドに引き戻されました。  私は慌てて抵抗しますが、全身に素早くシーツを巻きつけられます。 「ハウスト、遊んでいる時間は」 「シッ、静かにしろ。誰か来る」 「ええっ!?」  私はハッとして両手で口を塞ぐ。  ハウストも腰にシーツを巻きつけてベッドから降ります。そして警戒を高めた次の瞬間、――――バタンッ! 「レオノーラ、戻ってきたのか!」 「デ、デルバート様!?」  現われたのは初代魔王デルバート。ひどく必死な様子で戸が開けられました。  想像もしていなかった人物の登場に驚愕しました。  それはデルバートも同じだったようで、目を見開いて小屋の中にいた私とハウストを見ます。 「貴様らは十万年後のっ……」 「どうしてデルバート様がここにっ」 「ブレイラ、顔を出すな」  驚いて体を起こすと、私の前に壁のように立っていたハウストがすかさず声をあげました。  ハッとして今の状況を思い出します。ハウストは腰にシーツを巻いただけですし、私も全裸にシーツを巻きつけただけの姿。…………これって、ひと目で何をしていたか分かる状態ですよね。 「貴様ら、ここで何をしていた」  デルバートが低い声で言いました。  鋭く睨み据えられて、私は羞恥を感じつつも恐怖で青褪めてしまう。だって、とても怒っているようなのです。  それなのにハウストときたら嘲るように挑発してしまう。 「無粋な男だな、見れば分かるだろ」 「恥知らずな奴だ」  デルバートがスッと目を据わらせました。  殺気を帯びたそれに、水車小屋が一触即発の緊張感で張り詰めます。  そんな二人に慌ててしまう。全裸にシーツを巻いた情けない姿ですが、このままではいけません。 「ハ、ハウスト! そんな言い方をしてはいけませんっ。デルバート様、こんな姿をお見せして申し訳ありません!」  私は焦りながらも謝ったのに、ハウストが面白くなさそうな顔をします。 「おい、顔を出すなって言っただろ」 「あなたがわざわざ怒らせるようなことを言ったからじゃないですかっ」  私は言い返すと改めてデルバートを見ました。  もう一度謝ろうとしましたが、…………あ、ダメかもしれません。とても怖い顔してます。 「あの、デルバートさま……」  おずおずと声を掛けました。  冷ややかな視線を向けられて怖気づきそうになるけれど、とりあえず今はお話しをしなければ。 「驚かせてしまってすみません。この水車小屋はもう誰も使っていないと教えていただいたので使わせてもらっていました。ですので、まさかデルバート様がいらっしゃるとは思わず……」 「誰も使っていないだと?」 「はい、レオノーラ様にそううかがいました」 「っ、レオノーラが……」  一瞬、デルバートがショックを受けたような顔をしました。  それは気のせいかと思うほど一瞬で、すぐに取り繕われる。でも動揺は隠せないまま私に聞いてきます。 「……レオノーラがお前たちに言ったのか? この水車小屋はもう使われていないと」 「はい、そうですが、……なにか問題でもありましたか?」  聞き返すとデルバートがなんとも複雑な顔で黙り込みました。それは怒りとも悲しみとも取れるものでしたが、ひどく傷ついているように見えるのは私の気のせいでしょうか。 「デルバート様、お気に障ったようなら申し訳ありません。私たちはもうここを利用しませんので」  私がそう言うと、「おいブレイラ、嘘だろっ」とハウストの方が反応しました。……どうやらまたここを利用するつもりだったようです。  私は呆れてハウストをじろりっと睨みましたが、ふとデルバートが口を開きます。 「…………いや、もういい。好きにしろ」  デルバートはそれだけを言うと踵を返す。  それ以上は何も言わずに水車小屋から立ち去っていきました。  私はそれを見送りましたが、……なんとも言えぬ違和感を覚えてしまいます。

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