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第六章・発動のトリガー6
「滅んだと思っても繋がっているのですね」
私は荒野に出現した召喚獣たちを見つめます。
その中心にいるゼロスは召喚獣たちに「きてくれてありがと~!」とご挨拶していました。
しかしオルクヘルムの方は魔界や人間界から召喚された召喚獣たちに文句があるようで、私に声を荒げました。
「おいブレイラ、なんで冥王が魔王と勇者から召喚獣借りてんだっ! お前のガキ、卑怯なことしてるぞ!!」
「卑怯ではありませんっ、ゼロスの力で召喚したんですから正当な力です! ゼロス、よく頑張りました! お友達が増えて良かったですね!!」
私はオルクヘルムに勝ち誇って言い返したあと、ゼロスを褒めてあげました。ほんとうによく頑張りましたよ。
「えへへ、ぼくはみんなとなかよしなの!」
「ゼロスは純粋ですから、たくさんの召喚獣がお友達になってくれたんですね。純粋な子を平気で攻撃するような男から守ろうとっ……」
「ぼく、じゅんすいさんだから~!」
「なんて嫌味な親子だっ……!」
オルクヘルムはイラッとしたようですが関係ありません、私はゼロスの味方です。
こうして荒野に召喚獣が勢揃いし、それをオルクヘルムは面白くなさそうに見回しました。
「たくっ、タチ悪いことしてくれるぜ。俺ほど生き物を愛してる男はいねぇってのに」
「ぼくもだいすき! かわいいよね!」
「かわいいよな。できれば傷付けたくない」
「わかる~!」
ゼロスがぴょんぴょんして答えました。
なぜか意気投合していますが二人は決闘中です。
召喚獣を従えたゼロスはキリッとした顔になると片手をあげる。そしてオルクヘルムに向かって勢いよく振り下ろしました。
「みんな、とつげき~~!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!
荒野中の召喚獣たちがオルクヘルムに向かって突撃しました。
ゼロスもクウヤにひらりと跨ると召喚獣たちの先頭を突き進みます。
「やっつけてやる!」
冥王の剣を出現させてオルクヘルムに向かっていく。
突撃してくる召喚獣とゼロスにオルクヘルムは身構えます。でもその時、頭上から召喚された魔鳥の大群が矢のように襲いかかり、それが過ぎ去ったと同時に――――ガキイイイィィンッ!!
剣と剣がぶつかって火花が散りました。
衝撃波が広がる中、ゼロスが何度も剣を振り下ろします。
その間も隙をついて召喚獣が攻撃を仕掛けてオルクヘルムに休む間を与えません。
「えいえいえいえいえいえいえいっ!!」
「オラオラオラオラオラオラオラッ!!」
ゼロスの連続攻撃をオルクヘルムは召喚獣の攻撃を回避しながら受けとめる。それはオルクヘルムを圧倒するもの。
しばらく目にも留まらぬ攻撃と防御の応酬が続きましたが、ふいにオルクヘルムの動きが変わりました。
「俺に召喚獣を向けるとは舐めた真似してくれるぜ。この世界のすべての生き物を愛している、この俺に!!!!」
「うわッ!!」
オルクヘルムが大剣をひと振りし、ゼロスを弾き飛ばしました。
クウヤに乗っていたゼロスは飛ばされるけれどエンキがすかさず背中で受け取ります。
でも体勢を立て直している間にオルクヘルムが素早く反撃を開始する。ゼロスを守ろうとする召喚獣をなぎ倒しだしたのです。
「世界ってのは弱肉強食だ。俺の前に立ち塞がるってことは獲物になるってことを、一体残らず教えてやる!!」
瞬く間に召喚獣たちが倒されて召還されていきます。
数えきれないほどいた召喚獣が一体、二体と減っていく中、ゼロスは攻撃態勢を取り直して魔力を発動しました。
しかしオルクヘルムの攻撃魔法に襲われる。防壁魔法を発動しようにも間に合いません。
ピイイイィィィィィィ!!
甲高い鳥の鳴き声がしたかと思うと、ドンッ!!!! 凄まじい衝突音がしました。
「あれはっ……」
私は目の前で繰り広げられた光景に息を飲みました。
そこには鳥の王!
魔界で最も巨大な魔鳥の鷹。鷹の巨体がオルクヘルムに体当たりして吹っ飛ばしたのです。
でもオルクヘルムはすぐに鷹に向かって魔力を発動しました。
「貴様あああああ!!!!」
「ダメえええええ!!!!」
オルクヘルムの攻撃魔法に襲われる寸前、ゼロスが召還魔法陣を発動させて鷹を還してしまう。
しかし咄嗟の召還魔法はゼロスに隙を作るもの。
「馬鹿か! 自分で呼び出した召喚獣を守って致命傷とは笑わせる!!」
「バカじゃないもん!! ぼく、おしろでおべんきょうもがんばってるもん!!」
ゼロスがそう言い返した時、キイイイイィィィィィィン!!!! 突然、強烈な超音波がオルクヘルムを襲いました。突如、巨大蝙蝠が飛んできて放ったのです。
「うわっ!」
一瞬オルクヘルムの動きが止まる。その隙にゼロスは攻撃に転じます。
ガキイイィィン!!!!
ゼロスの剣をオルクヘルムが大剣で受けとめました。隙を突かれた攻撃にオルクヘルムが舌打ちします。
「チビガキのくせに三段階で仕掛けやがったか」
「ほらね! おべんきょうしてるでしょ?」
「可愛げがねぇチビガキだなっ……!」
「ちがう! ブレイラはかわいいですねっていってる! えいえい!」
ゼロスはオルクヘルムの懐に潜り込み接近戦に持ち込みました。
私はその光景を見ながらハウストに聞きます。
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