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閑話・三兄弟と初代幻想王3

「ちっ、仕方ねぇな……。…………こうか?」  オルクヘルムの武骨な手がおそるおそるクロードに伸ばされ、慎重に汚れた衣服を脱がせていく。  緊張しながら赤ん坊と向き合っているオルクヘルムにイスラが指導する。 「こっちから脱がせた方がいい。その方がやりやすい」 「なるほど、こうか?」 「そうだ」  イスラの指示に従ってオルクヘルムがクロードに着替えをさせる。  オルクヘルムの大きな両手の中でクロードの小さな体がころんころんと転がされた。普段は剣を握る武骨な手だが、今は壊れものを扱うように慎重な手付きだ。  そしてクロードの方はされるがままにじっとしていたが、下唇を噛んでぷるぷるしていた。オルクヘルムが怖いのだ。兄上たちに両手を握られてなければ、泣きながらハイハイで逃亡を計っていただろう。  そんなオルクヘルムとクロードを見ていたゼロスもお手伝いする。 「ぼくもおしえてあげる。これでふいてあげるの、はいどうぞ」 「おう、こうだな。こうして、こうか」  受け取った布でクロードの体を拭いていく。  おねしょで濡れた体もこれできれいさっぱりだ。 「きれいになった~。よかったね、クロード」 「あぶぅ、あー」  さっぱりするとクロードの機嫌もよくなり、「あー、うー」とオルクヘルムにおしゃべりを始める。  なにを言っているか分からないが、気分がよくなってきたことを伝えているようだ。  こうしてオルクヘルムはイスラとゼロスに教えられながら赤ん坊の着替えを見事に完了させた。 「よしっ、これで終了だ。完璧だぜ」 「まあまあだな。悪くない手際だった」 「おじさん、じょうずじょうず。クロードもありがとうだって!」 「お~、お~」  クロードが感心した声をあげてパチパチしている。赤ん坊も納得のいく出来栄えだったのだ。  最初は怖がっていたクロードだが今やその様子はない。スッキリ満足させてもらい、このおじさんは怖い人じゃないと分かったのだ。  三兄弟に絶賛されたオルクヘルムも悪い気はしない。最初は抵抗があったが、いざ終わってみると謎の誇らしさすら覚えた。 「まあな、今どきおむつも変えられない王なんてダセェからな」 「だせえだせえ♪」 「あぶ~あぶ~」  胸を張るオルクヘルムを三歳児と赤ちゃんが盛り上げる。 「やっぱ今どきの王は赤ん坊の世話の一つや二つできなきゃやべぇよ」 「やべえやべえ♪」 「あぶ~あぶ~」  アハハと笑っているゼロスと、パチパチするクロード。  オルクヘルムもすっかり気分が良くなっている。 「おじさん、もっと! もっとおしえてあげる!」  楽しくなったゼロスはリュックサックを持ってくると、哺乳瓶やおもちゃなどクロードのお世話セットを並べだした。  まだ幼いゼロスはお世話の仕方などブレイラや兄上に教えてもらうことが多いので、自分が教えることができて嬉しいのだ。 「これでミルクつくるの。あついとやけどしちゃうからきをつけて。クロードはこれくらいのむ」  ゼロスは「これくらい」と哺乳瓶を指差しながら教えた。  クロードも一緒になって指差している。他にも「あい、あい」とおもちゃや絵本を指差して、まるで自分の好きなものを教えているようだ。  オルクヘルムも物珍しさに最初はふんふんと頷いていたが……。  …………。  ………………。 「…………いつまでだ。これはいつまで続くんだ」とうんざりしてきたオルクヘルム。 「ブレイラまだ!? ちちうえとブレイラ、まだかえってこないの!? ぼく、かっこいいことしてるのに~っ」とプンプンしだすゼロス。  ゼロスはかっこよく教えている姿をブレイラに見てほしいのだ。  こうしてブレイラが戻ってくるまで、状況はとても面倒くさい方向へ陥っていく。  だが、なんだかんだありながらも三兄弟とオルクヘルムの絆が深まったのだった。

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