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第九章・歴代最強の勇者6

「ちちうえ~、クロードのミルクおわった! おなかいっぱいだって!」 「そうか、よく飲ませてくれた。お前もちゃんと休憩しておけよ?」 「わかった! ねえ、おやつとってきてもいい? あそこのあかいのたべられるんじゃないかなあ」  そう言ってゼロスが頭上の木枝を指差した。  そこには赤い果実が実っている。  見ていたリースベットが嬉しそうに頷いた。 「あの果実は美味じゃぞ。日持ちがするから保存食にもなるのじゃ」 「ほんと!? ちちうえ、やっぱりおいしいんだって!」 「取ってきていいぞ。保存食分も取っとけ」 「やった~! ぼく、いってくる! みんなのぶんも、たくさんとってくるね!」  ゼロスは張り切って答えると、さっそく木に登りだした。  するするとあっという間に木に登っていく。  途中でゼロスが「おーい!」と手を振って、とても楽しそうにはしゃいでいた。  地上ではクロードがゼロスを見上げている。相変わらず無愛想だが、「おー、おー」と声を出しているので応えているつもりなのだろう。  ゼロスはそんなクロードにも手を振り返すと、赤い果実を見つけるとリュックサックに入れていく。リンゴに似た果実は甘ずっぱい香りがしてとても美味しそうだ。 「これはぼくのぶん。こっちはクロードの、これはちちうえのぶん。このおいしそうなのは、ブレイラとあにうえ! これをみたら、ブレイラよろこぶだろうなあ~」  喜んでいるブレイラを思い浮かべてゼロスも嬉しくなった。  きっとブレイラはびっくりしながらも赤い果実を大事そうに受け取ってくれるはずだ。優しく目を細めて綺麗に微笑んでくれる。 『こんなにたくさん取ってくれてありがとうございます』 『ブレイラ、よろこぶとおもって』 『私のために? なんて嬉しいことを。ありがとうございます、ステキな冥王さま』 『えへへ、えへへ。ぼくとけっこんしたくなっちゃった?』 『はい、ぜひ結婚しましょう。おいしそうな果実を取れる方と結婚したいと思ってたんです』 『もうブレイラは~、ぼくがだいすきなんだから~』  きっとこうなるに違いない!  想像してゼロスは俄然張り切り、おいしそうな赤い果実をたくさんリュックサックに詰め込んだ。  家族五人分の他にも、オルクヘルムとリースベットとジェノキスのも忘れない。 「みんなのぶん、たくさんとっちゃお~!」  ゼロスは上機嫌で果実を取っていたが。 「……あいつ、なにニヤニヤしてるんだ……?」  地上から見ていたハウストが表情を引きつらせた。なぜかゼロスが急にニヤニヤし始めたのだ。  こうしてゼロスは果実を取っていたが、その時。  ――――ドオオオオオオオオン!!!!  遠くで爆発音があがった。 「わあっ! なになに!?」  ゼロスはびっくりして枝から足を滑らせそうになる。  でも驚愕に目を見開く。だって爆発の中心地に炎の巨人が見えたのだ。 「ち、ちちうえ~! いた! おっきいのいた!!」  ゼロスは地上のハウストに報せながら目を凝らして巨人を見つめる。  なにやら戦うような動作をしているのだ。巨人はなにかと戦っていた。 「んん? なんかいる……。ああっ! あにうえだー!!」  そう、兄上だった。  巨人と戦っていたのはイスラとデルバートだったのだ。  よく見なければ分からないほど小さいが、ゼロスがイスラを見間違うはずがない。  そしてイスラがいるということは、そこにブレイラもいるということである。  ゼロスが木から飛び降りた。 「たいへんたいへん! ちちうえ、あにうえいた! あっちでおっきいのとたたかってる!」  ゼロスは危うげなく着地を決めて炎の巨人がいた方角を指差す。  爆発音を聞いていたハウストとリースベットも表情を変える。  そして斥候中だったオルクヘルムとジェノキスも急いで戻ってきた。 「巨人が出現したぞ! ようやく出てきやがった!」 「ぼくもみた! あっちっ、あっちにいた! はやくいこうよ! あにうえがえいってしてる!!」  はやくはやくとゼロスが急かす。  今にも一人で駆け出してしまいそうだ。  もちろんハウストに行かないなどの選択はない。 「どうして巨人が出現しているのか不明じゃが、出てきたからには対処せねばな。それにそこにブレイラたちもいるようじゃ」 「ああ、すぐに行くぞ。クロード、来い」 「あいっ」  ハウストはクロードを片腕で抱っこし、ゼロスも慌ててリュックサックを背負う。  全員あっという間に準備を整えて巨人がいる方へ走りだした。  突風のような速さで森を駆け抜ける。 「ちちうえ、ブレイラだいじょうぶだよね。あにうえがいるもんね」  走りながらゼロスが自分に言い聞かせるようにハウストに聞いた。  抱っこしているクロードも「あう~……」と不安そうにハウストを見ている。 「ああ、イスラが一緒なら大丈夫だ」  ハウストは宥めるように力強く答えた。  二人の幼い子どもはブレイラと離ればなれになってからずっと寂しさを耐えているのだ。必ず会わせてやりたい。 「…………。……ちちうえ、わかってるよね?」  ふとゼロスが聞いてきた。  じとっと確認するような視線を向けられて、「……なんだ急に」とハウストも訝しむ。  そんなハウストにゼロスが走りながらも文句を言う。 「ゼロスががんばってたぞって、ブレイラにおしらせするやくそくだったでしょ! どうしてわすれちゃうの!」 「それか……」  やっぱり本気だったのか……、とハウストは思い出してげんなりした。  だが、こんな時はこれくらい前向きでいてくれた方がいい。 「分かっている。しっかりブレイラに伝えてやるから心配するな。それより気を抜くなよ? あの巨人は厄介だ」 「うん、わかったっ……」  ゼロスが少し緊張した面持ちで頷いた。  まだまだ未熟なゼロスだが、あの巨人が今まで戦ってきた怪物とは格が違うことに気付いている。  こうして一同は森を駆け、茂みを抜けたその先。 「いたぞ! 炎の巨人だ!」  先頭を走っていたオルクヘルムが声をあげた。  炎の巨人の前に出ると、そこにいたのはデルバートのみ。イスラの姿はなくデルバートが一人で戦っていたのだ。

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