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番外編②・魔王一家視察旅行【西都編】2

「魔王様、王妃様、勇者様、冥王様、クロード様、ようこそ西都へお越しくださいました」 「お待ちしておりましたわ」  そう言ってランディとメルディナが深々とお辞儀しました。  そんな二人にハウストは親しげな様子になります。メルディナは妹ですし、メルディナと結婚したランディは義理の弟ですからね。 「出迎えご苦労だった。元気そうだな」 「勿体ない御言葉です。魔王様方、初代時代へ時空転移した話しは聞いております。無事に戻られたこと心よりお喜び申し上げます」 「心配していましたが、お兄様なら大丈夫だと信じていましたわ」 「ああ、そのことについても詳しく話そう。四界にまつわることだ、四大公爵には俺からも話すつもりだった」 「ありがとうございます」 「はい、よろしくお願いします」  ランディとメルディナはまた深々とお辞儀すると今度は私を見ます。 「王妃様も御無事のお戻りでなによりです」 「心配をかけました。私一人なら危なかったですが、ハウストも一緒でしたから」 「当然よ。お兄様がいるのに何かあるわけないじゃない」 「…………相変わらずですね、あなたは」  思わず目を据わらせてしまいます。  久しぶりにメルディナに会えて嬉しいですが、それでも生意気は生意気です。いつものメルディナです。 「ほんとに可愛げがないですね」 「あなたに可愛いなんて思ってもらいたくありませんわ」 「また生意気なことを。いくらハウストの妹でも、私は甘やかすつもりはありませんよ。義理の妹でも厳しくいきます」 「なにが厳しくよ。あなたこそ王妃の自覚が足りないとフェリクトールに説教されてるんじゃなくて?」 「ぐっ……」  悔しいけれど言い返せません。  フェリクトールには出発前に散々釘を刺されたのは事実……。  そんな私にメルディナがフフンと勝ち誇ります。その生意気な反応に私はまたカチンときたわけですが。 「ブレイラ、そろそろいいか?」  イスラが遠慮しながらも割って入ってきました。  そう、私とメルディナはいつもどおりバチバチやりあってみたわけですが、誰も止めてくれる者はいません。……どうやらいつものことと思われているようですね。  イスラも幼い頃はメルディナを警戒していましたが、メルディナが私を王妃として認めてからはそういった様子はなくなりました。今ではバチバチしても見守られてしまいます。  メルディナがイスラとゼロスに恭しくお辞儀しました。 「勇者様、冥王様、お久しぶりですわ」 「ああ、久しぶりだな」 「…………なにが久しぶりだな、ですわよ。つい最近、西都に勇者が来ていたと噂されていましたわ。まったく、勇者が魔界をうろうろしてるなんて前代未聞ですわよ?」 「西都の研究室に呼ばれたんだ」 「だからって勇者が自由すぎなのよ。ここ魔界ですわよ?」 「分かった。今度西都に来た時はここにも顔をだす」 「そういうことじゃありませんわ。わたくしをからかってますわね?」  メルディナが呆れた顔で言いました。  そんなメルディナに今度はゼロスが挨拶します。 「こんにちは、メルディナ。げんきだった?」 「ご機嫌よう、冥王様。……あなた、前に会った時より力をつけたようね」 「わかっちゃった?」 「分かるわ。子どもでも四界の王ってことね」 「まあね!」  ゼロスがえっへんと胸を張りました。  賑やかなやり取りをするメルディナとイスラとゼロスに目を細めます。イスラやゼロスにとってメルディナは叔母ということになるので良好な関係を築いていることは嬉しいことです。  そしてもう一人、クロードもいますね。  私は抱っこしていたクロードをメルディナの前にだします。  気付いたメルディナはクロードに向かって恭しくお辞儀しました。 「クロード様もお元気そうでなによりです」 「あい、あー」  クロードも返事をするようにおしゃべりしましたが、――――スッ。メルディナがまたハウストに向き直りました。  …………。  ………………メルディナがさり気なくクロードを無視したように見えたのは気のせいでしょうか。  メルディナはランディと並び、改めて私たちに挨拶してくれます。 「魔王様、王妃様、勇者様、冥王様、クロード様、心から歓迎いたします。西都ではごゆるりとお過ごしくださいませ」 「お世話になります。よろしくお願いします」  こうして視察旅行が始まりました。  ゼロスは完全に家族旅行気分ではしゃいでいます。 「あにうえ~、おっきなたきがあるんだって! いっしょにみにいこうね、たのしみだね~!」 「ああ、大瀑布か。西都の有名な観光地だ。初めて見た時は俺も驚いた」 「あにうえ、いったことあるの!?」 「お前が生まれる前にな。今回みたいにハウストの視察にブレイラとついてきたんだ」 「ええっ! それじゃあぼくとクロードだけしらないってゆうこと!?」 「そうだ」 「ぼくもいっしょじゃなきゃダメでしょ!」 「……まだ生まれてなかっただろ」  イスラが呆れた顔で言いました。  私は聞こえてきたイスラとゼロスの会話に懐かしい気持ちになります。  まだハウストと結婚する前に西都に連れてきてもらったことがあるのです。その時のことはよく覚えていました。今回の予定にも大瀑布の見学が入っているのでとても楽しみです。 「クロードも楽しみですね」 「あいっ」  クロードも少し興奮した様子でお返事してくれました。小さな鼻がぴくぴくしているので、これは楽しみにしている興奮ですね。  時おりゼロスとイスラを指差して「あうー、あー」となにやらおしゃべり。自分も兄上たちと一緒になって会話している気分のようです。  いつもの三兄弟の様子に私は目を細めましたが、なんとなく気になってメルディナに視線を向けました。  気のせいだと思おうとしましたが、どうしても先ほどのメルディナが気になったのです……。

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