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第7話◇

 座ってメニューを見て、樹はケーキにくぎ付けになる。 「ケーキ、うまそー……」 「すぐ飲み会だけどな」  樹の言葉に、苦笑いしてそう突っ込んだ。 「でもこのチョコケーキ、すごいうまそーなんだけど」 「樹、ほんと、チョコ好きだな」 「うん」  嬉しそうに笑って、頷いてる。 「でもいいや、我慢する。あんまゆっくり食べてる時間もないし。蓮、また今度来よ?」 「いーよ」  結局、樹はカフェオレ、オレはブラックを頼んで。  しばらく触れていなかったスマホを見ると、未読のメッセージが数件。 「……山田から、来れるなら来いって連絡来てる」 「あ、カラオケ?」 「ああ」  樹は、水をこくん、と飲んで、苦笑い。 「時間ないから無理だね」 「…また今度って入れとく」 「蓮、カラオケ好き?」 「――――…中高ん時は良く行ったかな」 「そーなんだ。蓮、ほんとうまそう」 「採点機とは相性いいけどな」 「……それってうまいってことだよね?」  クスクス笑う樹。 「なんか蓮ってほんと何でもできる気がする」 「……そおか?」  何でもってことはないけど。  まあ広く浅く、要領は良いのかもしれない。 「掃除とか洗濯もさ、最初苦手とかやりたくないとか言ってたけどさ」 「ん?」 「手際が悪い訳でもないし、全然できてるしさ」 「――――…」 「オレが料理できないっていうのとは、レベルが違った」 「なことねえよ、やっぱり得意ではないと思ってるし」 「でも一人暮らしでも平気そう」 「――――……」  ……同居の意味がなかった、とか、そういう意味か?  それはちょっと、なんと答えたらいいのやら……。  そこに注文したものが届く。  カフェオレを一口飲んで。これ美味しい、と微笑む樹。  蓮は、さっきの樹の言葉が気になって、何となく何も言わず、コーヒーを飲んでいた。  すると、カフェオレの表面をじっと見ながら。 「……オレはラッキーだったけど」  と、樹が言った。 「――――ん…?」  ラッキー?  樹の次の言葉を待っていると、ふ、と笑って、オレを見上げる。 「蓮はきっと一人暮らしできたと思うけど……オレは、蓮が一緒に住んでくれて、ラッキーだったなーと思って」 「――――……」 「あ、ラッキーって言い方悪い?」  樹は、ちょっとバツが悪そうに笑って。 「――――……料理が美味しいのもだけど……なんか色んな意味でさ」  ふ、と微笑む樹を見ていたら。 「……オレもそう思ってるって言ってるだろ」  かろうじて、そう答えはしたけれど。  なんだか、衝動的に。  どうしても――――……。  その唇に触れたくなってしまって。  外でそんな事できる訳も無く。  ……本当は、キス自体、樹にして良い物なのかも、分からないのに。  でも触れたくて。  心底、困ってしまった。

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