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第8話「悪夢の罰ゲーム」*樹

 悪夢だ。  もう、こんなの。悪夢だとしか、言いようがない。 ◇ ◇ ◇ ◇  大学のクラスメート達はノリのいい奴が多くて、集まりが好きな奴が多いクラスだった。  結構ちょくちょく誘われて、何回か断ってたので、今日は参加する事にしたら、蓮も参加になった。  浪人して20才を超えてる奴もいるし、酒は各自、自己判断。  蓮とオレは、ノンアルコールで過ごしていた。  盛り上がった連中が始めた「王様ゲーム」。  クジで、王様とそれ以外の番号を決める。王様になった奴が、番号を適当に言って、何をしろという命令を出す。  普段なら絶対に参加しない、このくだらないゲームに、何故だかすっかり勝手に参加させられる事になっていて。  抗議したら、1回だけ、なんてそんな言葉に乗せられた。    1回だけなら、まあ、その番号に当たらなければいい訳で。  じゃあ、1回だけ、なんて言って、オレも蓮も、そのゲームに参加した。  挙げ句。王様になった奴は。 「3番が5番にディープキス」  なんて、ふざけた命令を出した。  3番が蓮で、5番がオレ。  つまり、 蓮がオレに、ディープキス。  誰が王様になるかが、重要な所……。   むちゃくちゃを言うやつが王様になってしまった場合、今回のように最悪な事態が起こる。  こんなに人数が居るのに、何で、こんなのに、蓮と一緒に当たるんだろ。  変な運命に、めまいがする。  ……そして。  やっぱりゲームだから。  嫌だとか言ってると興ざめしてしまう事は、否めない。  でも。興ざめされようが、なんだろうが。 「ぜったい嫌だ。命令変えろよ」  オレはそう言って、王様になったクラスメートを険しい顔で見つめた。 ◇ ◇ ◇ ◇  ある日、突然、蓮にキスされて。すごく驚きはしたけれど。  何も言わない蓮に、オレも、何も言わなかった。  それからずっと。ふとした拍子にキスされる。  例えば好きだからとか、そんな言葉も全く無くて。  ただ、繰り返されるキス。  何で、キスなんかしたいんだろう。  何で、オレに、キスするんだろう。  何でオレは、黙ってキスされてるんだろう。  ……たくさん疑問はあるのだけれど、それを話した事はない。  別に嫌じゃない。  すごくしたいとも思わないけど、しばらくキスされないと、あれ?と思う。  もうやめたのかな?なんて思って。でもやっぱり聞かずに時を過ごして。  またキスされると、ああ、まだ続くんだ、とか思って。  何となくホッとしたような気持ちになったり。  意味とか理屈とか、そういうの、全然訳が分からない行為で。 「――――…」  キス、といっても。  最初はほんとに触れあうだけだった。  そして、そのキスが触れている時間が、本当に少しだけ長くなった位で。  触れてるだけの、優しいキス。  こんなのおかしいのかなと思いながらも、核心に触れる事もなく。  キスを続けてきた。  だから。  王様ゲームなんかで、人前で、  それ以上のキスをさせられる事なんて、絶対嫌だった。  こんなの、蓮以外と当たったなら、まだマシだったのに。  蓮とだけは、やだ。

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