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第23話「愛しい」*蓮
「なんか、2人が仲良しなのが不思議。ぱっと見、全然タイプ違うから」
続けて、南にもそう言われて、苦笑い。
そんなに全然違う――――…… まあ、違うといえば、違うか。
「それ言ったら、女子3人も、タイプ違くないか?」
「あー……うちらは、確かにタイプ違うけど…… それがいいのかも」
「気を使わなくてもいいんだよね、なんか皆それぞれ違って」
南と松本が言って、坂井がそれにうんうん頷いてる。
「おんなじ感じだよ。タイプは違うけど、楽」
樹のことを思い出しながら、ふ、と笑って、そう言うと。
ちら、と山田がオレを見て、クスクス笑いだした。
「横澤の話になると、なんか、笑うよなー、お前」
「――――……」
「ほんと、仲いいんだろうなーて感じ」
「……まあ、仲良くなきゃ一緒に暮らしてないし」
「あ、そうそう、2人で暮らしてるって聞いたー何でー?」
さらに南が突っ込んでくる。
「何でって……んー…… オレは料理出来るけど洗濯とかあんまりやってこなくて、樹が逆だったから…… 暮らしてみようかって話になったて感じ」
「え~? それだけで、同居決める??」
「……決めたんだよな……」
そう。
……それと。
樹と一緒にいる時の空気が、好きだったから。
同居のあれやこれや色々聞かれながら、適当に答えながら。
パーキングで車を停めると、少し離れた所に、佐藤も車を停めた。
皆が降りて、佐藤の車の方に歩いていく。
車の鍵を閉めて、オレもそちらへ向かう。
「佐藤、運転お疲れ。全然大丈夫だったね」
「あとは顔と肩の力を抜くだけだな。力み過ぎだっつーの」
佐藤に言ってる樹の声が聞こえる。それにつけくわえて、森田がおかしそうに笑ってるのが聞こえて、山田や女子達も楽しそうに笑ってる。
オレが近づくと、ふっとこっちを見た樹が、ぱ、と笑顔になった。
「蓮、お疲れ」
「……ん」
……何なの。その笑顔。
オレを見て、ふわふわ笑うとか。
――――……何で樹って、こんなに可愛いのかな。
「蓮は緊張した?」
樹の隣に並ぶと、そんな風に聞いてくる。してないよ、と笑うと、そっか、良かった、とまた笑顔。
「とりあえず、店行こうぜ」
皆に声をかけて、歩き出す。
「うん。コーヒー飲みたいな」
樹も言って、オレの隣に並んで歩き出した。
当然みたいに隣に並んでくれるだけで、なんでか嬉しくて。
「カフェオレ飲む?」
「うん」
なんとなく2人で先に進もうとしたのだけれど。
急に、樹の肩に、腕が回ってきた。
「樹、オレもコーヒー飲みに行く」
森田が、そんな風に言う。うん、なんて樹が笑う。
「でも重いから腕やめて」
「なんだよいいじゃんか」
「やだ、重い」
そんなやりとりの末、森田がやっと樹から腕を外す。
……もやもやする心が、落ち着かない。
つか、森田って、樹って呼んでたっけ。
なに、この数十分でそんな仲良くなった訳。
「そっちの車は盛り上がってたか?」
何も気づかない森田は、そんな風にオレに聞いてくる。
「楽しかった?」
「……まあ、な」
「そっか。こっちも結構楽しかった。樹、結構しゃべんのな。おとなしい奴なのかと思ってた。なんか変な突っ込み入れてくるし。面白え」
クスクス笑って、森田が言う。
「変な突っ込みなんて入れてないし」
森田を見て、樹がそんな風に言って、笑ってる。
――――……樹が皆と仲良くなるのは、すごくいいと思うんだけど……
それとは反対に、オレとだけ仲いいんでも、いいんだけどな。とか。
思ってしまう自分が、なんだかなあと、ちょっと沈む。
「コーヒー飲みに行く奴いるー?」
森田が後ろのやつらにも声を掛けにいって、樹と二人になった。
すぐに、樹が下からオレを見上げてくる。
「蓮、疲れてる?」
「ん?」
「運転、ほんとは疲れちゃった?」
じ、と見上げてくる樹を見てると、なんだか急に和む。
「疲れてないよ。何か食べる? オレ腹減った」
「うん」
ふわ、と笑む樹。
ちょっとの時間離れただけなのに。
……なんか、大事なものと離れてて、やっと再会できた気分。
オレ、どんだけなのかな……。
苦笑いが浮かぶ。
「蓮、お店あっちだね、いこ」
くい、と引かれて。一緒に歩き出した。
樹は――――……そんな風には、思わないのかな。
なんて。少し聞いてみたくなるけれど。
面倒くさいと思われたら嫌だなと思って、聞くのをやめた瞬間。
「なんか、蓮が久しぶりな気がする……って、大げさか。可笑しいよね」
なんて言って、クスクス笑う樹の事が。
すごく愛しくなったって、もうこれは、どうしようもない気がした。
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