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第30話「さみしい」*樹
……なんかオレ。
蓮の事、怒らせたのかな。
一緒の部屋じゃなくていいって言っちゃったし。
野菜途中で、やめたし。押し付けて、外で楽しんでた……みたいな?
そこらへん、かな。
……怒ってるて程じゃない、とは思うけど……。
きっと、蓮も、少し、気にしてる。
でも。
ログハウス出たのも、南に言われたからだし。
戻ろうとしたけど、山田に、今2人きりならちょっとこのままにしてあげよう、て言われたからだし。
……オレ、本当は、戻りたかったけど。
皆と話してるのは、楽しくない訳じゃないけど、
蓮と、少し、モヤモヤしてるのが、ずっと気になってて、
全然、心から、楽しめない。
ていうか――――……。
オレは、蓮が楽しそうにしてるのを、見たいから、ここに来たのに。
何、してるんだろう。
「樹、野菜あげる」
言いながら森田がぽいぽいとオレの皿にのせていく。
「……は? 嘘でしょ、信じられない。 森田、ちゃんと食べろって……」
やまもりになった野菜を、森田の皿に戻そうとすると、森田は、無理と言いながら、皿を遠ざけてる。
「加瀬と一緒に野菜やまもりにした責任とれよー」
クスクス笑ってオレにそう言ってる森田の皿に、その脇で、南と松本が野菜を山盛りにしている。
「あっ何してんだ、お前ら、ふざけんな」
「食べなよ、こどもじゃないんだからー」
戦いだした森田と女子達に笑いながら、オレは、蓮の背中に目を移す。
2メートルくらい離れた所にあるコンロの所で、さっきから、蓮と坂井が色々焼いてくれてる。
坂井は自分からは行かないけど、女子や山田が、蓮の近くに行くように促してる。蓮の方は特別気にする事もなくて、ただ隣に居るから、普通に話してる、だけ、な気もするけど……。
まあ、話せば楽しそうだし。蓮は優しく笑うし。坂井は、すごく嬉しそうだし。――――……なんか、すごく似合ってるようにも、思う。
坂井と、付き合ったり、することも、あるのかな。
……絶対無い訳じゃないだろうし。
……うん。
別にオレが協力なんかしなくても。
――――……そうなる時はなるんだろうし。
相手が、坂井じゃなくたって、蓮の事を好きな子は、いっぱい居るだろうし。まあ。――――……モテるのも、すごく分かるし。
「樹、これ食べて」
「森田、少し位野菜、食べろよー」
「パプリカとかありえない。いらねー」
「じゃ玉ねぎとエリンギ食べて」
「何で」
「オレが頑張って切ったから」
そう言うと、隣で佐藤が笑った。
「じゃー食べなきゃなー、森田」
「……まあ、エリンギならいーよ、あ、箸向こうだ。食わせて」
「……オレの箸でいいの?」
「全然いい」
ぱく。森田の口に、エリンギを突っ込む。
「おお、野菜、一口め?」
佐藤と南が面白そうに森田を見てる。
「ていうか、森田の食生活、どーなってんの」
「んー? 彼女が作ってくれんなら、野菜も食うから。一応食ってるよ」
「なんだそれ。急にのろけ?」
オレは思わず苦笑い。
「食べれるんだったら今も食べろよ」
「今日はいいや。明日食う」
なんだそれ。
笑いながら、森田を見てると。
急にコンロの方で、ぱん、と音がして、キャーと、悲鳴。
……に続いて、笑い声。
「加瀬、どーしたー?」
「ウインナーが弾けた」
佐藤の声に、おかしそうに笑いながら、蓮が答える。
「ウインナー食う、ちょーだい」
山田が蓮にくっついて、そんな風に言ってる。
「そんなくっつくなよ」
言いながらも、楽しそうで。
――――……その笑顔に、嬉しくもなるのだけれど。
……さっきから、全然、話せていないし。
……気になってしまう。
高校時代、蓮のまわりは派手な子が多かった。廊下で見かけてた時もそうだった。一緒に暮らしてから、高校の卒業式で蓮が仲の良い子達と撮った写真を見たけど、ぱっと見から目立つ子達ばかり。男子も女子も、そんな感じだった。
多分、蓮て、オレみたいな奴と居るの、初めてなんじゃないかな。
と。密かにずっと、思ってた。
オレと居て、楽しいのかなあって思う時もあるけど。
オレと居る、蓮が、いっつもまっすぐにオレだけ見るから……。
なんか……楽しいと、思ってくれて、るのかなとも思ったけど。
……知り合ってすぐ同居しちゃって。
……オレは、居心地がよすぎて――――……。
――――……でも、よく考えたら、入試が2月だから……。
蓮とオレって。
知り合って――――……まだ、半年も経ってないんだ。
なんか、ずっと前から、蓮が隣に居たような気がしてたけど。
――――……半年、か。
少し離れると――――……。
蓮が、知らない人みたいで、 寂しいなんて。
やっぱり、おかしい、のかな……。
楽しそうな周りに、適当に合わせながら。
なんとなく――――……そんな風に、思った。
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