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第43話◇

「ていうかさ、オレも、蓮が作ってくれるなら、何でも喜ぶよ?」 「――――……」 「だからオレにも全然聞かなくていいんだけどなと思って」  クスクス笑ってしまう。  すると、蓮は、しばし、なぜか、無言。 「……蓮?」 「――……オレさあ、樹」 「ん?」 「――――……今みたいなの、ほんとまずいんだよね」 「……ん??」  まずい? 「――――……オレが作ってくれれば何でも、とか。何か、蓮すごい、蓮すごい、て、いつも言うとこも。凄いやる気んなるから良いんだけど……」 「……??……うん??」 「――――……手つないだ時、ちょっとだけ握り返してくるとか」 「……」 「オレ、樹のそういうの全部可愛くてさ。すごい好きなんだよ」 「……」 「キスしたくなるから、ほんと、まずいの」  顔が熱くなる。  なんでそんな事、さらっと、まっすぐ、言うんだろう。  ほんとに。  蓮はいつも、そう。  さらっと嬉しいこと、言ってくれる気がする。  ……ちょっと返答に困るけど。 「……蓮?」 「ん?」 「オレは……そういうの、好きって言ってくれる、蓮が……好きだよ」  最後の方はかなり恥ずかしくなって。もごもごと、こもり気味に。  一応、頑張って、返してみた。  そしたら。 「ん――――……どうしようかなあ」 「……どうしようって?」 「……すげーキスしたいけど、した瞬間に、誰かあの出口から出てくるかもしんないし」  いやいや、ここ、出口の真ん前です……。  さすがに、無理。 「……もーほんとに。 なんなの樹……」 「……」  蓮が、はー、とうなだれて。  自分の太ももに両肘をついて、そこに両頬を乗せてる。 「……可愛すぎて、困るし」  少しして、体を起こした蓮の片手がオレの頭に伸びてきて、ぽん、と頭に手を置かれて。  至近距離で、見つめられながら、ナデナデされてると。 「……っ」  キスされるより、なんか、よっぽど、恥ずかしいんだけど……。  せっかく引いた熱がまた顔に戻って、焦る。  それをじっと見てた蓮が、ぷに、と頬を摘まんできた。 「――――……うー。 後で、どっかこもるから」 「え?」 「絶対どっかにこもってキスするから」 「……っ」 「いい?」 「――――……」  どーしてこんなにカッコいいのかなあ。  瞳?? 眉毛?? 鼻? 口? 輪郭?? 髪? 耳??  何なんだ、蓮の、この、どーにも勝てない、この感じ。  どこなんだろう、カッコいいの。  思わず、間近で観察してると、――――……蓮が急にぷ、と吹き出した。  オレの頬から手を離して、自分の口元を押さえてる。 「なんで、そんな、あちこち見てンの? 面白いんだけど……」  笑いすぎてるからなのか、蓮はオレとは反対の方を向いて、クックッと背中を揺らしてる。 「……キスしていいか、聞いてんのに。なんでそんな面白い反応になっちゃうンだよ?」  言いながら、くる、と振り返って視線を流してくる。  あまりにカッコよすぎるから、  ―――……どこが一番カッコイイのか、観察してた、なんて。  ……言えない。  ――――……あーでも……オレ。  笑ってる、蓮の、優しい瞳が、一番好きかも。  笑ってる蓮を見ていたら、そんな風に思って。  ついつい、嬉しくて微笑む。  瞳があったその瞬間。 「――――……樹」  ――――……引き寄せられてぎゅ、と抱き締められる。  それは一瞬で、すぐ、ぱっと離された。 「……これ位ならまあ、もし見られても、友達でもあり……だよな?」  クスクス笑いながら蓮が言う。 「――――……ほんとは、すっごくキスしたいの我慢してんだけど。 偉くない? オレ」 「――――……うん。偉い……」  ……の、かな?  なんて、少し可笑しく思いながら。    一瞬、抱き締められた感覚が幸せで。  蓮が、大好きすぎて、ほんと、どうしよう、なんて思った。  

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