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第56話◇

 食事を全部片づけてから、皆でお風呂にやってきた。  蓮は、一応側には居るんだけど……こっちは、見ない。  なんか、そうされると、余計、意識されてるって言われるみたいで。  ――――……なんだか。こっちまで、緊張してしまうけど。  とりあえずお風呂時間だけ、我慢我慢……。 「昨日も思ったけど、樹、細すぎねえ?」 「そんなこと言われても……食べても太らないし。ね、蓮、オレ食べてるよね?」  森田に返しながら、つい蓮に助けを求めたら。 「食べてるよ。ていうか甘い物とか樹の方が好きだし。体質なんじゃない?」  助けてはくれるけど。  蓮はずっとまっすぐ、森田だけを見てる。  オレはもう、さっさと体を洗い終えてしまおうと思って、手早く洗い出す。    そんなに細いかな、オレ。  ふと思って。隣に居た佐藤に視線を向ける。 「なー、オレ、そんな細い?」 「んー? ああ。うーん。まあ……ムキムキしてないって感じじゃない?」 「ふーん……」 「あと、なんか、ウエストが細いかなー。綺麗かも」 「……綺麗は、やめてよ」 「なんか女の子みたいだよね、細くて」  佐藤はまったく悪気も無さそうだし、おかしな意味とか無さそうだし、バカにしてるとかでもないのだけど。  なんか、逆隣で、オレから視線を背けている蓮が、ぴしっと数秒、固まったような気がする。  ええ……と。 「――――……オレ、サウナ行ってくる」 「え、もう洗ったのか?」 「うん。いってきまーす」  オレはすたすたと足を速めて、サウナに逃げ込んだ。  誰も居ない。良かった。  端っこに座って、はあ、と息を吐く。  ――――……男風呂で。  ……こんな緊張したり。誰かに見られるの困ったりする日が来るとは、思わなかった。  その時扉が開いて、誰かと思ったら、蓮だった。 「――――……蓮?」 「1人で行くなよ」 「……だって、オレの事見ないって言うから……」 「だめ。 あんま見ないようにはするけど。 サウナで変なおっさんとかと2人きりとかなってないか、心配しただろ」  むー、と言いながら、オレの少し離れた隣に座る蓮に、ぷ、と笑ってしまう。 「変な心配」 「ダメ。樹、すげー綺麗だし。そういうつもり全くない奴でも、見せたくない」 「……普通だけど、オレ」 「――――……普通じゃないし。可愛いし。綺麗だし」  誰も居ない個室だと思って。  蓮は、あれこれいっぱい並べてくる。 「それに、樹、オレのだから。……他の男と2人きりとか無い」 「んー……2人きりじゃなくて、ここにおじさんの大群が居たら?」 「もっとだめだろ。そんな事になったら出て来いよ」 「――――……2人きりでなくてもダメなんだね?」 「……ダメ」  むー、と蓮がふくれてる。  ふ、と笑ってしまうと。ちら、とオレを見て。 「――――……ラッシュガード着せたい」 「……っていうか……もう。蓮ってば」  おかしくて、クスクス笑ってしまう。 「本気で言ってる?」 「……結構本気」 「そうなの?」    聞き返しながらも、可笑しくて。   「オレ温泉でそれ着てる人見た事ないけどね……?」 「オレも無い」 「だよね」  ふふ、と笑ってしまう、結局蓮も笑い出す。

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