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「お揃いの模様」*樹
そんな話をしていたところで、森田と山田が戻ってきた。皆で丸くなって、二人の説明を聞く。
「何が作りたいかによってプランが違うんだって。作りたい物えらんでーだってさ。これがメニューね。それぞれで受付するから、作りたいプランで各自申し込むって」
二人が見せてくれたメニューを見て、皆それぞれやりたいものを決めた。
オレと蓮は、丼を作って、余ったら湯呑もつくることにした。
受付から奥の、体験コースと書かれた部屋に入ると、電動でうごくロクロがいくつも置いてある。少し離れて二席、三席ずつ置いてあるのは、多分教えてくれる先生が間を通れるようにかなあ。そう思いながら、自然と蓮と二人で座った。皆も適当にばらけて座る。
静かな音楽が掛かっていて、部屋は明るくていい雰囲気。
先生が挨拶をしてから、陶芸の体験コースの工程とか、あとは、置いてある道具の使い方を説明してくれた。
まず土から空気を抜く作業。この部屋はオレ達のグループだけなので、なんだかんだ話しかけあいながら、楽しい。十分にこねた後は、先生の真似をして、土をロクロに乗せる。
水をつけて、土に触れる。柔らかい感覚に、わ、と驚く。そーっと触れてると、蓮が隣で、「おもしろいな」と微笑む。
「ね、不思議な感覚だね」
「ほんとに。これでどんぶり作れるかな」
うねうね変わっていく姿にクスクス笑いながら。
でもなんとか先生のアドバイスを聞きながら、だんだんと、どんぶりに近づいていく。
ふと気付くと、蓮、めちゃくちゃ真剣。
――真剣な顔してる蓮、いいなぁ……。なんて思ってると、前で森田達が、失敗したらしく、ケタケタ笑ってる。
「加瀬、なんかうまいな」
皆が振り返って蓮に言うと、蓮は一度ロクロを止めて、「そう?」とオレを見る。
「そうですね、筋がいいですねぇ」
通りかかった先生が、蓮の手元を見てそう言った。
「ありがとうございます」
蓮がお礼を言ってから、オレと目を合わせて、なんかちょっと照れたみたいに肩を竦めてる。
「樹も、もう少し整えたら良いんじゃない? その真ん中にゆっくり、穴開けて……」
「んん……こう?」
「そうそう」
「――わぁ! 出来てきた」
「うまいうまい」
「って何でオレ、蓮に教えてもらってるの」
クスクス笑ってしまう。
「見てみてー、加瀬ー!」
山田が蓮に見せると。「……失敗作?」とか言ってニヤッと笑うと、山田は、「味があるって言えよー」と笑いながら、今度はオレに向かって、「なあ?」と言ってくる。
「そうだねー」
「棒読みやめろ。樹」
「ちょっと真剣にやった方がいいよ」
クスクス笑って言うと、山田は「マグカップが本命だから、ここから頑張る」とか言ってる。
女の子たちはきゃっきゃっ楽しそうにやってるけど、佐藤は無言だなあと思ったら、めちゃくちゃ真剣でわき目もふらず。
先生が前に立って、話し始めた。
「本当でしたら、ここで乾かして、それから模様をつけたりするんですが、体験なので、もうこの時点で、模様をつけてもらいますね。まず、形が出来たら、表面を滑らかにしてから、尖った先で、模様を描いていきます」
先生が言うと、蓮は、オレをちらっと見る。
「なんか、お揃いで模様つけよ」
こそっと言ってくる。こそっとってことは、蓮とオレの二人でお揃いかぁ。と悟って、うんうん頷く。
なんだろう、お揃いの模様って、とかなり真剣に考える。
……ハートとか……?
いやいや。恥ずかしいし、皆に見られる。と打ち消して、一人照れる……。
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