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第5話◇プール
プール開き。
1組男子がプールサイドで並んでいた。
前の授業が移動教室だったらしい、雅己の居る2組は相当遅れていて、それを待たされていた。
「啓介泳げる?」
「当たり前。え。何や泳げないん?」
隣に居たクラスメートに聞かれて、オレが、驚いて聞き返すと。
ものすごく嫌な顔をされた。
「……何で? 今まで泳ぐ機会なかったん?」
「習いにいかないと、小学校はおよげない奴は低いとこで遊んでりゃ良かったし。中学はプールがない公立多いんだよ。てことでオレは習いに行ってないから泳げない」
「クロ―ルも?」
「なんとなくできるけど、息継ぎがむり」
「え、皆そうなん?」
周りの奴らに尋ねると、数人泳げない奴が居て、驚く。
まあ世の中およげない奴もいるやろうけど、結構な割合やな……。
そんな話をしていたら、不意にうるさくなって、2組の男子が現れた。
なんとなく雅己を目で探すと。
後ろの方に笑顔を発見。
全員そろって、準備運動をしてから、シャワーに向かって並んで歩き、シャワー前に適当に列を作る。
「あ、啓介」
雅己の声。振り返ってそちらに目を向ける。
「――――……」
……――――……っと。
「おはよー。 なあ啓介っておよげんの?」
「――――……」
「啓介???」
――――……つーか。……肌綺麗やなー。
細すぎず、太くもなく。
――――……なんか、腰まわりは細くて、エロいし。
直視できない。やばい。
……いや違う。ヤバいのは雅己やない。
男の水着姿を、エロいとか言って、直視できない自分がヤバい。
「なあってば、啓介聞いてんの? つか、こっち向けよ」
ほんま、今ほっといて。
「啓介ってば」
ぐい、と腕を掴まれて、振り返らされる。
少し下から見上げられる。
どき。
――――……マジで。やばい。 落ち着け。
「あ。分かった、泳げないんだな、お前」
ぷぷぷぷぷ。
楽しそうに笑ってるアホ雅己。
ちょっとムカついて、少し落ち着いた。
「つか、泳げるわ。 お前こそ泳げないんちゃうの。ここら辺の奴、泳がなくてもここまで来れるらしいやんか」
「オレはプール通ったから完璧ー。人魚並みに泳げるぞ」
嬉しそうに、そう言ってくる。
「人魚は女だろーが」
隣に居る雅己の友達たちが突っ込んでる。
「えーじゃあオレ、何?」
「人魚じゃなくて……男で泳ぎ……」
「んーー……! あ!」
一人がいいこと思いついた顔をしてる。
「河童!」
「……ええー、なんか河童は嫌だ」
「いいじゃん。 河童、最強」
「いやだっつてんの!」
あははと笑いながら、雅己たちがシャワーの下に吸い込まれていく。
……人魚でも、ええなあ。
顔、可愛えし。 体、綺麗やし。
――――……は。
……やっぱオレ、めっちゃヤバいな。
冷たすぎるシャワーで頭を冷やすけれど。
……ヤバさは嫌と言うほど、認識。
プールサイドに並んで座りながら、泳ぐ順番を待っていると。
たまたま雅己が隣の列に並んだ。
「なー、啓介さ、なんでそんなに筋肉きれい?」
「筋トレしとるし」
「部活のとは別に?」
「別」
すごいなーそうなんだー、と納得して。
「肌焼いてる?」
「どこで焼くんや。……色はもともと」
「良い体してるよなー、いいなー」
「――――……」
じー、と見つめてくる視線。
「……つか、雅己」
「ん?」
「……ウエスト細すぎやない? もっと食えや」
「っ――――……るさいなー、食っても太らないんだよ。父さんも細いからなあ…… 母さんに似たらもうちょっと太るんだけど…… とか言ったら、殺されるけど……」
あはは、と笑いながら。順番が来て、雅己が立ち上がる。
腕を上げて、ゴーグルをつけて、前に立つ。
後ろ姿、嫌でも見てしまう。
――――……なんで、そんな綺麗かな。
男なのは分かってるのに。
――――……なんでこんなに、綺麗なのか……。
はー。ほんま、ヤバい。
絶対ヤバい。
――――…… マジで、すぐ、彼女作ろ。
プール開きの日は。
そんな、覚悟の日になった。
月日が流れて?
+++++
目の前にある、細い腰。
快感を煽ると、無意識に捩って、逃れようとする。
……ほんま、めっちゃエロい。
初めてまともに裸見た時からめっちゃエろいと思ってたなんて。
言ったら。
照れまくって、蹴り入れてきそうやなぁ……。
「……ひゃっ……」
わき腹から腰に、手を滑らせると、雅己が変な声を上げて震えて。
それから、かあああっと赤くなって、その手を外させようと掴んでくる。
「そこくすぐったいから、いつもさわんなって……!!」
手は掴まれてしまったので、面白くなくて。
「――――……」
手を握り返して逆に抵抗を防いでおいて。
べろ、と脇に舌を這わせた。
びくびくん!!と、全身が震えた。
「――――……はは。 めっちゃ可愛ぇ」
「おま――――……次それやったら、ぶんなぐ……っ」
ウエストから舌を這わせて、真ん中の臍部分を舌でくすぐってみると。
ぎゅぅ、と手を握られる。
「やだやだ、それマジでやめ――――……」
涙声になった雅己に、ふと顔を上げる。
ああなんか。 ほんま可愛ぇな。
「……泣かんで」
くす、と笑って。
「……啓介、まじで、嫌い」
……マジで、泣いてる……。
「――――……なんでお前そないに可愛ぇかな……」
よしよし、と撫でて、頬に口づける。
涙を指で拭いとってやると、じろ、と睨んでくる。けれど。
……可愛い以外の、なにものでもない。
ずっと触れたかったのを思い出しつつ。
めちゃくちゃキスした。
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