8 / 16

第8話◇イヤホン

 昼休み。  クラスメートの鈴木が、スマホにイヤホンを繋げて、何かを聞き始めた。 「何聞いとるん?」 「オレの好きなバンドの曲。聞く?」 「ん」  片耳を差し出してきたので、借りて、耳にはめ込む。 「――――……ふうん……ええな」 「だろ?」  空いてた隣の席に座って、一緒にしばらく聴いていると。 「啓介ー!」  雅己の声がした。ふ、廊下側に目を向けると、何してんの?という顔をしながら近づいてくる。 「オレ今日、委員会で部活遅れるから伝えといて」 「ああ、わーた」 「何聞いてんの?」  雅己の言葉に、鈴木が、自分のイヤホンを外した。 「お前も聞く?」 「いいの?」 「うん。聞いてみて」 「ありがと」  雅己が、鈴木からイヤホンを受け取って。  それから、空いてた椅子をオレの隣にもってきて座ってから、イヤホンを耳にはめた。  ――――……ん?  なんや、雅己、近――――……。  雅己の顔がめっちゃ至近距離。  なんでさっきまで鈴木としてた時は、離れてたのに。  なんで、こんな近いん……?  なんかもう、ドキドキしてる心臓の音しか聞こえてこなくて、音楽どころじゃない。 「……なあなあ、北条ー?」  鈴木がクスクス笑って、雅己に向けて話しだした。 「反対側につけたら? お前が外側につけるから、杉森との距離がすげー近いんじゃん」 「え?」  咄嗟に、雅己が、オレの方に目を向けた。  くっついてしまいそうな位の至近距離。 「……ほんとだ」  ぷ、と雅己が笑う。  すぽ、と外して、オレ側の耳にイヤホンをはめる。  それでも、なんか近い。 「――――……良い曲! なんてバンド?」  聞き終わった雅己が、すぽ、とイヤホンを外して、鈴木と話し始めてる。  何も意識してないから、こんな近いんやろうけど――――……。  ほんまにもー、雅己……。  ――――…… 音楽、全然聞けへんかった。  まだなんや、ドクドクしとるし。  ――――……あー。……オレ、ほんま。ヤバいな。 「じゃあ啓介、先輩に言っといてな、よろしくー!」  言いながら、雅己は、教室を出て行った。 「杉森はどーだった?」  鈴木が聞いてくる。 「ああ。 ……めっちゃ良かったで」 「そうだろ~ 動画で他の曲も見れるから、後でURL送っといてやるよ」  鈴木が嬉しそう。  でも、つい、ため息をついてしまった。 「ん?どした?」 「――――……なんや……めっちゃ彼女欲しくなってしもた」 「何で? ああ、恋愛の曲だったから?」 「……まあ……そう……かな」  はー。 「お前ならその気になればすぐできるだろ」 「……そう簡単にはいかへんなー……」  ほんまに欲しいのは、彼女やないから。  すぐなんて……絶対無理や。 「はは。珍し、お前がぐったりしてんの」  鈴木の笑い声に、言い返す気もせず。  机に突っ伏した。  

ともだちにシェアしよう!