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第15話◇ずっと

 今日は、隣町にある高校との練習試合。  朝早くから集合して、ウォーミングアップ。  2コート取れる大きな体育館なので、先輩達の試合と、1年の試合が同時で行える。てことは、1年もフルで試合に出れるって事で、朝から雅己は、超ご機嫌だった。  まあ、雅己程傍から見てもご機嫌って感じではないけど、オレも朝から何だか浮かれていた。  やっぱり、試合は楽しい。  実力が拮抗してる学校で、いつもギリギリ。  負けるにしても勝つにしても、あまり差はつかない。  だからこそ、最大限でもって皆取り組んでいた。  第2クオーターが終了、ハーフタイムで作戦タイムが終わり、残り5分は休憩となった時、息が弾んでる雅己の隣に座った。 「雅己、大丈夫か?」  言うと、ふ、とオレを見て。   「ん、平気」  少しきつそうだけど、強気な笑顔。  ――――……まあそう言うとは思うたけど。 「少し力抜き? お前ずっと全力疾走しとるやろ」 「――――……抜かない」  べ、と舌を見せて、雅己が笑う。  ふ、と苦笑い。  こいつに力抜けとか、無理か。  じゃあ少し、力抜けるように、オレが動くか。 「お前は3ポイント狙えるとこに居って?」  雅己はオレを見て、しばし黙って。 「……ん、分かった」  ふ、と笑う。 「啓介」 「ん?」 「……試合、楽しーな?」 「――――……そうやな」 「早く2年になりたいなー。いっぱい試合、したい」  何だか――――……ほんと、可愛いなと。  思ってしまった。  いつでも全力で、一生懸命で。  手が、勝手に伸びて。雅己の頭をクシャクシャ、撫でていた。 「……何?」  ふ、と雅己が、笑う。 「いや。……後半、頑張ろな」 「うん。当たり前」  クスクス笑いながら、雅己が言って。  少し休んで、試合再開。  再開後、数分経った時だった。  言った通り、3ポイントを狙える所に居た雅己にパスを通して。  振り向きざま、シュートを打とうとした時。  近くで守っていた奴が、咄嗟に止めようとして、体勢を崩して、雅己にぶつかった。重なり合うみたいにして、雅己が、床にたたきつけられる。 「な――――……雅己!」  一番に駆け寄って、雅己の上に乗ってる奴を退けて、倒れてる雅己の肩に触れる。  返事がない。  意識がない。  さあっと、体中の血が引いた。  指先が、一気に冷たくなる。 「雅己!」 「啓介ちょっと下がって」  先輩達も試合を止めて、こっちに来て。  オレは、肩を抱かれて少し離された。 「大丈夫、ちょっと頭打ったんだよ」 「――――……っ」 「今動かしちゃダメだから、ちょっとじっとしてろ」  そう言われて――――……意味は分かるんだけれど。   「雅己……!」  肩を抱いてた手から離れて、雅己の横に膝をついて、呼んだ瞬間。 「――――……っ……ん」  はあ、と息を吐いて。  皆が、シンと静まり返って見守る中、雅己が、目を、ゆっくりと開けた。 「――――…………」  ホッとしすぎて。  ぺたん、と床に座り込んだオレを見て。 「けいすけ――――……うるさ……」  くす、と笑って、雅己が言う。 「アホか……もう――――……ほんま……」  びっくりした。  まわりも一気にホッとした空気で和らいだ。 「とりあえず雅己、保健室借りようか」  先輩が言う。相手のマネージャーが、案内すると言ってくれたので。 「オレ、連れて行きます」  すぐに言って、ゆっくりゆっくり動かされて先輩達に支えられた雅己を、背負う。 「オレら抜けても負けんなや」  オレが仲間にそう言って、任せろ、と言われた所で。 「負けたら、ゆるさねえからな……」  ぼんやりした声で。でも、そんな事を言ってる雅己に、皆苦笑い。  体育館を出て、案内された保健室のベッドに雅己を寝かせた。 「しばらくこのまま見てるので、戻っててもらって大丈夫です」  そう言って、相手チームのマネージャーを戻して、雅己の隣に座った。  雅己は、目を閉じていた。 「……起きとる?」 「ん。起きてる……」 「……気持ち悪いとかは、ない?」 「うん。平気そう……ぼんやり、してるだけ」 「……頭うった?」 「うん。多分、ここ、たんこぶ……」 「どこ?」 「ここ」  雅己が触ってる所に、そっと触れると。 「ああ、確かに……冷やすのあるんかな」  保健室にある小さな冷蔵庫を試しに開けると、冷却ゼリーが入っていたので、とりあえずひとつ借りた。雅己に渡すと、それを受け取って、頭にあてる。 「勝手に借りていいの……」 「洗って戻しとくし。あとで向こうのマネージャーに言うとく」  言いながら、また雅己のベッドの隣の椅子に座る。 「頭打ったんやから、ちょっとでも体調おかしかったら病院やからな……気持ち悪いとかあったら、即、やで。一緒に行くからすぐ連絡しろや」 「……ん。分かった」 「ほんまにもう……」  ため息を付きながら、なんとなく、その頭、雅己が冷やしてない部分を、よしよし、撫でると。 「……なに、撫でてんの……」  クスッと笑う雅己。 「……さっき。呼んでも目ぇ開かなかった時。死ぬかと思った」 「オレが?」 「いや、オレが」 「――――……何で啓介が死ぬの」  クスクス笑って、雅己が、瞳を開ける。 「オレ死んでも、死ぬなよなー……」  多分雅己は、冗談で言ってる。クスクス笑いながら。 「……それは分からん」  オレのこれは、少し本気。  さっき――――……ものすごい、怖かった。 「何だそれ……」  やっぱり冗談として受け取ってる。  雅己はクスクス笑いながら、オレを見つめる。 「――――……は、良かった。目、開いて」  よしよし、と撫でると。雅己は、もう何も言わず。ただ、微笑んでる。  帰り道。 「啓介、必死過ぎ」 「雅己死んだら、お前も死ぬだろ」 「雅己より青ざめてたよなー」  必死過ぎたオレを皆がめちゃくちゃからかうし。 「ていうか、なんかオレが恥ずいから、そろそろやめて」  それを聞いて、何故か雅己が照れてるし。  早く家帰りたい。  なんて思ってた。 月日が流れて♡ +++++ 「そういえばオレ、一回倒れたよな、試合中」 「ん?……ああ。何、突然」 「何か急に思い出した」 「何で?」 「お前がさっきからずーっと頭撫でてるから」 「……ああ。あの時も撫でたっけ」  今は。  コトが済んで、腕の中の雅己をずっと撫でてた所。 「オレ、啓介がオレを呼ぶ声で目が覚めたんだよ。うるさかった……」 「何やそれ。人に死ぬほど心配かけといて」 「あだだ……」  ほっぺをぶに、とつぶすと、雅己が笑う。 「だってあの後だって、お前ずーっとからかわれてたじゃん」 「何が?」 「お前の方が死にそうだったって」 「……ああ」  そういえば。あれからしばらく経っても、  延々からかわれたような……。 「お前、オレ死んだら死んじゃうの?」  雅己が、腕の中からオレを見上げて、まっすぐ見つめてくる。 「……後を追うとかはせえへんよ」 「うん」 「……怒るやろ?」 「当たり前」 「せえへんけど……ずっと居ってな?」 「はいはい。……出来るだけ居るから、お前も居ろよなー?」  ぷ、と笑いながら、雅己の手が、オレの首に掛かってくる。  その背をぎゅっと抱き締めながら。 「雅己」 「……んー?」 「……めっちゃ好き」 「……はは。知ってる」  笑う雅己に、見つめられて。  ちゅ、とキスされる。 「お前ほんとずっと、オレの事好きなの?」 「――――……」  頷いて抱き締めると。  クスクス笑われて。ぽんぽん、と背中を撫でるように叩かれた。  (2020/1/12) 後書き ◇ ◇ ◇ ◇ ちょっとお久しぶりの更新♡ 「試合で頭を打って気を失った雅己をめちゃくちゃ心配する啓介と、後でそれをいじられて恥ずかしがる雅巳」がみたいです。とのリクエストを受けたら書きたくなって♡ 楽しんで頂けてたら嬉しいです♡   これからも不定期ですが更新しますね♡ by悠里

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