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第391話

「藍くん!」 「チッ、くそっ、なんだよこれ。ガッチガチに縛りやがって」 両手を背中に、両足は一纏めに、胴体までぐるぐるに縄で縛られた豊峰が、芋虫みたいにモゾモゾともがいていた。 「くそ、頭も痛てぇし。何嗅がせやがった…」 「藍くん…」 豊峰が、ぎゅっ、と顔をしかめて、本城を睨む。 「しかも今の話」 「………」 「アンタ、完全に逆恨みじゃねぇか。火宮会長サンはなんにも悪くねぇじゃんかよっ」 ガゥッ、と怒鳴って跳ね起きた豊峰に、本城が不気味なほど鮮やかな笑みを浮かべた。 「何も悪くない?」 「そうだろ?潜入捜査なんて、初めから危険は覚悟の上だろうし、そもそも会長サンに初見でアッサリ正体を見破られちまうようなアンタの親友とやらがヘボだっただけじゃねぇか」 ヘッ、と小馬鹿にしたように笑う豊峰に、本城の周りの空気がブワッと苛立ちに揺れた。 「貴様…」 「だってそうだろう?それともなにか。火宮会長サンが気付いちまったこと自体が悪いとでも言いたいのかよ」 馬鹿じゃねぇの、と吐き捨てる豊峰に、本城の笑みが凍る。 「そんな経緯で、火宮会長サンに復讐?冗談キツイだろ、それ」 ふざけんな、と吐き捨てながら、豊峰が、モゾモゾと縄を解こうと手を動かした。 「ッ貴様に…貴様に何が分かる!火宮刃がっ!火宮刃さえあいつの身分に気づかなければ…。火宮刃が正体をばらすような真似をしなければっ、あいつは」 「だからそれが逆恨みだっつーの」 「うるさい、黙れっ!それでも原因を作った火宮刃を、俺は許さないっ。だから火宮刃から1番大切なものを奪ってやる。俺があいつを失ったように」 ギラリと激情を映した本城の目には、歪んだ憎悪が揺れていた。 それは狂気にも似ていて。 「まずは火宮翼、おまえの身体を穢してやる。陵辱モノのゲイビに主演だ。嬉しいだろう?」 「なっ…」 「カメラの前で、滅茶苦茶に犯して、ぐちゃぐちゃに汚してやる。あぁそのビデオを、火宮刃にもプレゼントしてやろう」 ニタァッ、と本城が浮かべた笑みは、下卑ていて醜く、昏い本気が滲んでいた。 「手配はもうしてあるからな。おまえを犯してくれる男たちが、もうすぐ来るんじゃないか?」 「っ…」 「あいつがされた、同じ目だ。その後はリンチ。もちろん薬物中毒にするのも忘れないぜ。たっぷりとクスリの味を覚えさせて、クスリなしではいられない身体にしてやる」 ほら、と見せられたのは、小さな袋に入った白い粉末で。 「っ…」 「ちゃんとレイプする前にもキメさせてやるよ。フツウにヤる何倍も悦くなれるらしいぜ」 ニタニタと笑う本城が、クスリとやらの袋を軽く振って見せ、それを使用するらしい準備を始めた。

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