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第412話※

「ククッ、辛そうだな、翼」 「っ…」 当たり前だ!バカ火宮っ…。 くぅっ、と背中を丸めて絶頂をやり過ごし、必死で快感をはぐらかす。 「クッ、許して欲しいか」 「っ…」 それはもちろん。 「ん?翼?」 コクコクと頷きながら、そろりと後ろを振り返った俺は。 「っーー!」 そうか。そういう魂胆か。 許して欲しければ媚びて強請って火宮を納得させろ、って。 言われはしなくても、その悪い顔と意地悪な目が語っていた。 「んっ、ふ…」 あー、いいですよ。やってやりますよ。 ツンと開き直った俺は、目の前のベッドに手を突っ張り、ソロソロと上半身を起こす。 「っ…」 火宮も特に押さえつけてくる様子はなく、俺はそのままするんと床に降りた。 「んっ、俺が、好きなのも」 そっと火宮の足の間に座り込み、ズボンの前に手を伸ばす。 「っ、俺が、こんなことをするのも」 カチャカチャとベルトを外し、ジーッと下ろしたチャックの中から、下着をずらして火宮の性器を取り出す。 「ん…あなただけです、火宮刃」 ズシリと手の中にある、萎えていても大きな性器にそっと唇を寄せる。 「クッ」 「あれは、藍くんを助けるために仕方なく」 「………」 「だから…。特別なのは、あなただけ」 恐る恐る開いた口で、ぱくんと火宮の性器を咥える。 「んっ、ふっ、ぁ…。らから」 「ッ…」 「ほへはい(お願い)」 ペロペロと、火宮の性器を舐めながら、チラリと火宮を見上げて。 「はいへふらはい(抱いて下さい)」 ググッと口の中で角度をつけた火宮自身に嬉しくなりながら、必死で奉仕する。 「んっ、ハッ、お願い。刃。バイブはいや…。これで、シて?」 ツゥーッと付け根から先端までをいやらしく舐め上げ、チロチロと先っぽで舌を動かせば、「ふっ」と笑った火宮が、ギラリと欲情を露わに俺を見下ろした。 「あ、んッ…お願い、刃。これ、ちょーだい」 チュッ、と性器に口付け、にこぉっと、精一杯の媚びた笑顔を向けて、甘い甘い声を出す。 「じんー」 疼く後ろにモジモジとお尻を振ってしまったら、火宮からぶわっとむせ返るような妖しい色香が立ち上った。 「クッ、おまえは…」 「っ?刃?」 「演技もいいが、無意識の痴態がよっぽどそそる」 「え…」 「ククッ、俺にだけだな?」 ニヤリ、と浮かぶ、満足そうな笑みがゾクゾクする。 「おまえが本気で誘うのも、こんないやらしい姿を見せるのも」 「当たり前です」 本城にしたのは演技。みんなの前でやらなかったのは、あなた以外に見せたくないから。 「だって、あなたにだけは、本気だから」 その姿は、火宮だけが見ればいい。 「ククッ、おまえは本当に。上出来だ、許してやる」 「っ!」 「止めていいぞ」 「え?」 「自分で抜け」 「は?」 こ、こ、この人はぁぁっ! 最後の最後まで意地悪し抜くその性根に乾杯だ。 「そうしたら俺の上に跨がれ。思う存分抱いてやる」 このどS! 「ふ、んっ、だ」 あぁやりますよ。 やってやりますとも。 だってその顔。 愉しくて楽しくて仕方がないと語る目の奥に。 愛おしくて愛おしくてたまらないって、しっかり書いてありますから。 「ンッ…」 そっと後ろに伸ばした手で、カチッとバイブのスイッチを止め、ぐっと持ち手部分を握り締める。 「っ、あ、ぁぁ…」 ズルッとバイブを引き抜きながら、ニィ、ッ、と火宮に挑戦的な笑みを向けてやったら…。 ぶわぁっ、と、妖しい色香を増した火宮が、ギラリと欲情に濡れた瞳を向け返してきた。

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