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第420話

あぁ、あぁそうか。 豊峰たちは。 家族を愛して、家族から愛されて。 それができないから、こんなにも苦しんでいるんだ。 豊峰も、豊峰のお父さんも、ただ根本的に、それが解決したならば。 「っ、これは…」 互いを愛したらいい、と言っても、それができていたらこんなにこじれなかったわけで。 「翼?」 「っーー!藍くんっ」 「な、なんだよ、急に」 思わず大きな声を出してしまった俺に、豊峰がビクッとしている。 「藍くん!藍くんには、俺がついてるから」 「は?」 「うん。そう。俺の強力なバックもさ、ついてるし」 俺の望みとあらば、迷わず味方してくれる頼もしい後ろ盾様たちがいる。 「だから、ね?俺は、藍くんの、親友だから」 何があっても味方だよ。 どんなことになっても見捨てないから。 いくらだって力になる。 『親友』という2文字に、ありったけの想いを込めた俺に、豊峰が、キョトンとした後、ようやくいつもみたいに、にぱっと笑った。 「いきなりわけが分かんねぇけど、なんかさんきゅ。ちょっと元気出た」 「うん」 「俺はまだ、どうやってあの家と親父に立ち向かっていけばいいか、はっきりとは分からねぇけど…」 「うん」 「おまえとか、おまえの味方のあの方たちとかが後押ししてくれるなら、頑張れる気がする」 「ん。俺に出来ることがあれば、なんだってする」 だから頼って、と、強く豊峰の手を握り締めたら、豊峰がへへっ、と照れくさそうに笑った。 「そっか。見た目可愛こちゃんなのに、おまえは本当に強いよな。やっぱ会長サンの見る目はあるわけかー」 「はぁっ?」 「怒んなよ。褒めてんだぜ。頼りにしてるよ」 「う、まぁ頼ってもらえるのは嬉しいけど」 その前の発言たちはどうかと思う。 「んじゃぁ、俺はそろそろ。会長サンちにいつまでも長居しているのもあれだし。下に帰るわ」 「あ、うん」 じゃぁな、明日学校で、なんて颯爽と去って行く豊峰が、ふと玄関のドアの前で振り返った。 「翼っ」 「ん?」 「俺もおまえを、親友だと思ってる」 早口で言われた言葉に、はっ?となった俺を残して、豊峰がパッと素早く玄関扉の向こう側に消えていく。 「っ!それって」 扉の隙間から最後に見えた豊峰の耳が、少しだけ赤くなっていた。

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