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第422話※

「さてと」 カタン、とテーブルに置かれた箸に、ビクッと肩が震えてしまう。 「可愛いおねだりどころか、盛大な暴言ときたか」 さすが翼だな、と笑いながら、火宮がゆっくりと立ち上がる。 「っ、ちょっと待って下さいっ…」 ヒシヒシと感じる嫌な予感に、俺はダイニングの椅子ごと上半身を仰け反らせて身を引いた。 「待ったなしだ」 「嫌っ、無理っ。昨日の今日で、何する気…」 散々抱き潰され、今日1日、まったく使い物にならなかった身体はまだ記憶に新しい。 まさか今日も、と思うと、逃げ腰になるのは当たり前だ。 「ふっ、安心しろ。明日登校できる程度には、加減はしてやる」 「っーー!」 だからっ、そこでっ、やらないという選択肢はないものか。 その発言に安心の要素は1つもない。 「待って!考え直してっ、火宮さんっ」 「ククッ、食後のデザートといくか」 「あ、あ、あ、あのっ、片付け!そう、ほら、夕食の片付けがまだっ…」 どうにか火宮の魔の手から逃れようと、必死で頭をフル回転する俺に、火宮の顔がニヤリと意地悪く笑み崩れた。 「片付けね」 「そうですっ、ほら、食べっぱなしですしっ、洗わないと!」 ワタワタと示した、目の前の空になった食器類に、火宮の視線がチラリと向く。 「そうだな。分かった」 「えっ?」 ニヤリとしながら言われる了承の言葉は、絶対にそのままの意味なんかじゃなくて。 「だが…」 「っ!」 ほら来たー。 「洗うのはいいが、ちょっと待ってろ」 「っ…」 待ったなし、って言ったのは火宮のくせに。 俺を待たせて消えていく先が寝室のドアっていうのが怪しすぎる。 「あー、もう、やっぱり意地悪。どS火宮」 一度狙った獲物を、どうあっても逃す火宮じゃないんだよね。 俺は嫌というほど知っている。 知っているけど…。 「大人しく待つわけがないっ」 悪足掻きだろうが何だろうが、サクッと逃亡を決めてやる。 とりあえずは内側から鍵のかかるトイレにでも籠城か。 2日連続でお仕置きを食らってたまるか。 ガタッと椅子を引き、素早く立ち上がった俺は、リビングを横切り、トイレのドアに向かって一目散に走る……予定が。 「っーー!っあ、わぁぁっ、だぁっ」 ビタン、と派手な音を立てて、全力の平手打ち…ではなく、すっ転んだせいでそうなった両手が叩いたのはリビングの床で。 「痛ったぁ…。一体何…」 違和感のある足首を、恐る恐る覗いてみたら、クルクルと器用に巻きついた鞭の先が目に映った。 「っ!」 アクション映画とかアニメの戦闘シーンとかでは見るけどさ。 現実に本当に器用にこんなことってできるわけ? 巻きついた場所から、ビンッと張っている鞭を視線で辿っていったら、案の定、ニヤリと壮絶に笑った火宮が、鞭の柄を様になった手つきで持っていた。 「逃亡の罪も追加だな」 ニヤリと唇の端を吊り上げた火宮が、クイッと鞭を引いて、それはそれは艶やかに笑う。 「ひっ…」 さらにその手が持っているのは、卵型のピンク色をしたアレで。 「まずは暴言の仕置きだ。これを入れろ」 「っ…」 パタ、パタ、とわざとスリッパの足音を立ててゆっくりと目の前まで歩いて来た火宮が、床にうつ伏せで倒れている俺に、プランとコード付きのローターを突きつけて見せた。 「振動は弱にしてやるが、いいトコロには当てろ。そのまま皿洗いだ」 「っーー!」 本当っ、どSっ! よくもそう、意地の悪いお仕置き方法を考えつくものだ。 全力で拒否したい。 けれど足首を捕らえられている今、逃げるのが不可能なことは明白で。もしもここで拒否したところで、結局は無理矢理されるのがオチだろう。ついでに罰が増えるのも確実だ。 「っ…わ、かり、ました」 嫌だけど。 本当に本当に嫌だけど。 俺は渋々上半身を起こし、渋々ズボンのウエストを緩め、渋々膝辺りまでズボンと下着を下ろし、渋々四つん這いになった。 「ククッ、嫌そうだな」 「っ!当たり前ですっ」 バカ火宮。 あなたは随分と愉しそうですねっ! 内心の全力の悪態は、顔や目から察されないように、目一杯俯いて隠す。 「ひゃぁっ!」 「ただのローションだ」 「っ…び、媚薬効果とか…」 タラリと蕾に落ちた冷たい液体に身体を跳ねさせ、ビクビクと伺った俺に、火宮はゆるりと目を細めて苦笑した。 「含んでない」 「あ、はぁ、よかった」 『おまえにはこの先絶対に、どんなに弱い媚薬だろうが、薬は使わない』 クチュッ、と、形だけでも解してくれるつもりなのか、蕾に火宮の指が挿れられたのを感じる。 「えっ?今何か言っ…ひゃぁっ!」 っ、何か火宮が呟いたのが聞こえたような気がしたけれど、いきなり前立腺を探り当てられて、俺の疑問は嬌声に変わった。 「ククッ、ここだな」 「あっ、あっ、やぁ…」 グリグリと、意地悪くソコばかりを押されて、前がムクリと起き上がる。 「ふっ、そのまま力を抜いていろよ」 「っ?あっ!あ、アッー」 ズルッと指か抜けていったのも束の間、すぐに蕾に押し当てられた冷たい無機物が、ツプンとナカに入ってきた。 「ふっ、あぁっ…」 あー、嫌だ。 これから辛いお仕置きの始まりなのか。 容赦なく前立腺に当てられて止まったローターに、すでに泣きたくなってくる。 「よし、いいぞ。服を戻して、夕食の片付けだったな」 クックッと愉悦に喉を鳴らした火宮が、ペチンと1つお尻を叩いて、シュルッと足首の鞭を回収していく。 「っ…」 すでに小さな身動ぎでさえ、ゾクゾクとたまらない快感に震える身体をどうにか起こし、身支度を整えた俺は、後ろの玩具を気にしつつ、渋々ダイニングまで戻った。 「ふっ、あっ、んンッ…」 空の土鍋を運ぶ手が、ぶるぶると震えて、擦れた食器同士がカチャカチャと音を立てた。

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