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第433話
その翌日から始まった期末テストで、俺はかなりの手応えを感じていた。
「これなら1位、取れそうだな」
最後の1教科が終わった後、筆記用具を片付けながら、軽くガッツポーズをする。
「ふふ、火宮くん、自信たっぷりだね」
「紫藤くん…。そっちは?」
「んー?まぁ、取れていると思うよ、満点」
にっこりと笑うその顔が、自信満々でげっ、となる。
「おまえら…サラッと頭オカシイ会話してんじゃねぇよ…」
引くわ!と、実際ドン引きした顔をしながら、またもペタンコに戻った鞄を肩に担ぐように持った豊峰が、テクテクと近づいてきた。
「あ、藍くん。そっちはどうだった?」
「ふふ、30位以内、取れそうかい?」
この中の内誰かが罰ゲーム、もしくは全員。今日終了した期末テストの結果で、俺たち3人の明暗は分かれる。
「あー?どうだろ。分かんねぇ。でも今までに比べたら、ずっと出来た」
「そう。じゃぁ意外と藍は、クリアしちゃうかもね」
やる気の問題で、元々馬鹿じゃないし、と笑う紫藤の目が俺に向く。
「後は僕と火宮くんか。どちらかが1位、もしくは共に満点1位…そして最悪は共に2位以下」
どうかなー?と目を細めた紫藤は、最後の選択肢だけはないと思っているのが見え見えだ。
「結果が楽しみだね」
「そうだね」
譲らないから。
思わずバチバチと火花を飛ばし合った俺たちに気づいたのか、豊峰が横で、「ついてけねぇ」と呟きながら引いているのが見えた。
*
そうしていよいよ、試験休みを挟んで、明けてからの授業では、怒濤のテスト返却が始まった。
「よしっ、満点」
まず1発目、無事に数学のテストは満点の文字を見た。
隣の席の紫藤をチラリと見たら、にこりと微笑んで、ペラペラと満点のテストをこちらに向けていた。
「ま、まぁそうだよね」
「うん。クスクス、これはどちらかが1点でも落とした時点で終わりかもね」
その余裕の笑顔。俺は内心、心臓がバクバクで、実は生きた心地がしていないというのに。
「そ、そうかもね。それが紫藤くんじゃないことを祈っているよ」
「僕も。火宮くんが転げ落ちないことを祈ってる」
この笑顔。本当、Sっ気たっぷりで、腹黒さ満点に見えてしょうがない。
「負けないから」
「次は国語だね」
予定黒板を眺めて余裕そうに頬杖をついた紫藤からふいっと視線を逸らして、たまたま豊峰の方を見たら、ニカッと笑ってVサインをした豊峰が、7割がた丸のついたテストをこちらに向けていた。
それから国語のテストは、俺も紫藤も難なく満点。理科、古典、世界史ともに満点。
いい加減、クラスの半数以上が、俺たちの、いちいち公表される満点のオンパレードにドン引きし始めたところで、俺の最弱点、英語の時間がやってきた。
「っ…」
「火宮」と呼ばれて、前に取りに行った英語の答案。
震える手でそれを受け取った俺は、恐る恐るその得点欄を覗き込む。
「っ!あぁぁ…」
期待の3桁……ではなく、そこに書かれていたのは、「98」という、ついに連続満点記録が途切れた、悲しい悲しい数字だった。
「っ、紫藤くんは…?」
呆然となりながら、フラフラと戻った席の前で、隣に座っている紫藤を見つめたら。
「ふふ、ごめんね?」
にこりと笑った紫藤が、ペラッと見せてくれたのは、満点が眩しい答案だった。
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