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第469話

ビシィッ! 「っ、あぁぁぁぁっ!」 突然、お尻に強烈な横一文字の激痛が走った。 「っ、な、に…」 あまりの痛みに驚き仰け反り、ハクハクと喘いだ口が必死に空気を求める。 「気に食わない。どうしてこんなに甘ちゃんのくせに、わけのわからない自信がたっぷりで、火宮会長の隣に自分がいてもいいなんて、平気な顔をして思っているの」 けっ、と吐き捨てるような声と共に、ヒュッ、と再び背後で空気が揺れた。 「っ、ひあぁぁぁっ!」 ビシッ、という打擲音と共に、またもお尻に走った痛烈な衝撃が、鞭で打たれているものなんだということが、ようやく分かった。 「面白くない。もっと泣けよ。みっともなく叫べ」 「っ、ったい、痛い…」 ガシャガシャと、ベッドヘッドに繋がれた手錠の鎖が鳴った。 これ、お尻が切れてるんじゃ…? それほどまでの鋭い痛みが、剥き出しの双丘にピリピリと走っている。 ナカに玩具も突っ込まれたままで、つい締め付ける内壁も苦しかった。 「言えよっ。火宮会長と別れるって。火宮会長を捨てておれのものになるって…」 「っあぁっ!…言、わ、ないっ。あなたが何をしても、どんな脅しをかけてきても、絶対に」 「お尻、壊れるよ?もっともっと痛めつけて、死ぬほどの苦痛にのたうち回ることになるけど、それでも?」 「それでもっ!」 ぎゅっ、と握り締めた拳の指に、キラリと存在を主張するプラチナの光が見えた。 「どうしてみんな、火宮なんだっ!」 ビシィッ、とまた1つ、お尻に苦痛が追加される。 「ひぃぁぁぁっ!痛いぃっ。ったい、痛い…」 息が止まるかと思うほどの衝撃に、背中が仰け反った。 「火宮っ。火宮、火宮、火宮ぁっ!」 ビシリと打たれた衝撃で、ゆるゆると抜け出てきていたバイブが、ポトンと、ベッドの上に落っこちた。 「っはぁっ、はぁっ、はぁっ…」 痛みのあまり、意識が朦朧としてきた。 ジンジン、ピリピリと、空気が触れても痛いお尻に、上がった息が苦しい。 「こんな目に遭っても、火宮か…」 「んっ、はっ、どんな目に遭っても、火宮さんだけが、俺のパートナーです」 痛みや脅し、苦しみで人の心を動かそうとする霧生には、絶対に敵わない。 だからなにもかもが火宮に勝てずに、2番止まりのあなたなんだ。 強気な言葉はそのまま口に乗り、ギリッと睨み据えた背後の霧生から、視線は絶対に逸らさない。 「どうして火宮は、この子なんだっ…」 突然、パタリと鞭を下ろした霧生が、フラリと1歩、足を引いた。 「え…?」 「は、ははは、ふハハハハッ」 「な…」 いきなりどうしたんだ。 膝を笑わせ、上半身を仰け反らせて、霧生が突然大笑いを始めた。 「ふはははははッ、ははっ、ハッ…」 息が苦しそうに、それでもひたすら霧生は笑い声を立てる。 まるで無理やりにでも笑っているかのように。 その表情は、なんだか泣いているようにも見えた。 「なんできみなんかを、火宮は…」 はっ、と笑いながら、霧生がゆっくりと深く息を吸い、目を閉じながら天井を振り仰いだ。 『勝てないのか…』 ポツリ、となにかを霧生が小さく呟いた瞬間。 ふと空気がざわめく気配がして、人の入り乱れる足音と怒声、揉み合うような物音が、徐々に大きく、近づいてきた。

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