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第476話※

「っ…」 まぁ、それはそうだよね…。 真鍋が用意したラグジュアリーホテルの一室。その寝室に連れ込まれた俺は、目の前にドーンと鎮座する大きなダブルベットを見て、納得半分、諦め半分で溜息をついた。 「ククッ、なんだ。久々の仕置きに、期待しているのか?」 「はぁっ?」 どこをどうしたらそうなる! どう見たって、これから起こるであろうアレコレに、げんなりしている以外のなにものでもないでしょうに。 「クッ、まぁいい。とりあえず、上がれ」 命令し慣れた声が放たれ、俺は、ノロノロとベッドまで足を運び、キシッとスプリングを軋ませて、その上に乗り上げた。 「下だけ脱いで、四つん這いだ」 「っ…」 嫌だ、という言葉は受け付けてもらえず、チラリと窺った火宮は、スゥッと妖しく目を眇めてこちらを見ている。 「や、れば、いいんでしょっ、やれば」 意地悪く口角を上げた火宮に勝てる気がしなくて、俺は仕方なく、ソロソロとズボンに手を掛けた。 「っぅ…」 ズボンと下着を思い切って引き下ろし、足から抜き取ったそれをパサリと落とす。 「っく…」 四つん這い…。 目眩がするほど恥ずかしいその姿勢に、全力で抵抗する心を押し込めながら、俺はノロノロと体勢を導いていった。 「っ…」 キシッと両手をベッドについたら、ハラリと上着の裾が垂れて、剥き出しのお尻が露わになる。 「ふぅん。ここを、辱しめられたんだな」 「っ…」 スルッと双丘に触れた火宮の手に、ビクッと身体が跳ねた。 「痛々しい鞭跡をつけられて…。それと、ここもだったな」 ぐい、と双丘を割られ、ツンと火宮の指先が触れたのは、霧生にバイブで犯された蕾だ。 「っや…」 「傷はないようだが…」 クチュッと指を差し込まれ、ぎゅっと噛み締めた唇が震えた。 「っ…」 「触らせたのか?」 「っ、ん…」 フルフルと首を振っただけの俺を咎めるように、火宮の指が、ぐぐっと奥に進んだ。 「ひぁっ…さ、わられて、ない、です」 「解されも?」 「してないっ…。ローション、垂らしただけで、いきなり…」 「なるほどな」 ぐるりとナカで指を回され、ゾクゾクと腰が痺れた。 「あっ、あっ、やだ…」 「ふん。霧生にも聞かせたのか?」 「ひぁぁ、あんっ、聞かせて、ない…。気持ち、悪っ、て…悔しくて、苦しくて…」 それだけだった。 辛くて辛くて、泣きじゃくった。 「ふぅん。これだけ感じやすい身体をしておいて?」 「っ、あぁっ!」 ビクビクと身体が仰け反り、前がむくりと勃ち上がってしまったことを指摘された。 「あっ、だって、火宮さんだからぁっ…」 「ほぉ?」 「ゆ、びっ…わざと、ソコっ…」 グリグリと指先が押すのは、何度も何度も教え込まれた俺のいいトコロで。 「ふっ、あっ、あぁんっ、もっ、や…」 ゆらゆらと自然に腰が揺れて、内腿がビクビクと震えた。 「もっ、あっ、イ、くぅっ…」 きゅぅ、と火宮の指を締め付け、目の前に絶頂が見えた、その瞬間。 「ふぁぁっ?な、んでっ。イけた、のにっ…」 不意にスッと指が引き抜かれ、はぐらかされた快感が体内で荒れ狂った。 「あっ、あっ、火宮さっ…」 「ククッ、仕置きだと言っただろう?簡単にイかせるか」 「あぁっ、そんな…」 絶頂寸前まで高めておいてこの仕打ち。 ガクガクと足が震えて、涙がじわりと盛り上がる。 「クッ、その顔」 「な、に…?」 「欲情にまみれ、縋り付くように媚びているくせに、その目だけが文句を言いたそうに強気に俺を睨んでいる」 「そんなこと…」 ない、とは言えないかも…。 「ククッ、さすが翼だ。折れないその強気を、どう手折ってやろう?」 「っな…」 このどSッ! 「クッ、その目。その強気が霧生の加虐心も煽ったな」 「そ、れは…」 「ふっ、翼。両手を出せ」 「え…」 「まずはこれだ」と、カシャンと持ち出されたのは、イミテーションだろうけれど、手錠で。 「っ…」 まさか。 今日のお仕置きって…。 「ククッ、ほら早く」 ニヤリ、と唇の端を吊り上げた火宮の企み顔に、俺は嫌な予想が的中していることを悟った。

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